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戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜  作者: 井上幸将
天下統一怒涛編

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CEOのブラック城 vs おじさんのホワイト化(物理) 〜1582年のコンプライアンス〜

「……おい、パパ。見てくれよあの悪趣味な城。あれこそが、この国に蔓延した『ブラック労働』の総本山だ。CEOパイナップルの野郎、海外の資本と技術を勝手に持ち込んで、安土城の隣に『24時間眠らない鋼鉄のオフィスビル』を建てやがったぞ」


1582年、初夏。俺、百舌鳥もずは、バナナの着ぐるみのモニター越しに、対岸にそびえ立つ異様な建造物を睨んでいた。

それは、石垣の上に近代的なガラス張りの高層ビルが接合されたような、狂気と効率の融合体――『ブラック城・パイン・タワー』。そこからは、現代の『サーチライト』が夜空を切り裂き、常に「働け、働け」というサブリミナルな重低音が響いている。


「百舌鳥よ、あの中に光秀が捕らえられているのだな。……十兵衛の奴、真面目すぎるからCEOの『成果主義』という毒に一番当てられやすい」


信長がイチゴの被り物を震わせる。

そう、今回の最大の危惧は「本能寺の変」だ。CEOは、過労とストレスで限界寸前の明智光秀を誘拐。タワーの最上階で「貴様が信長を消せば、この国はもっと効率的になる」と、現代の『マインドコントロール術』で洗脳を試みている。


「パパ。……本能寺を燃やさせるなんて、古い脚本(史実)は俺が書き換えてやる。……キウイ、小次郎、準備しろ。……今回は合戦じゃない。……『不当労働行為に対する強制捜査(ガサ入れ)』だ!」

「これより、ブラック城・パイン・タワーに対し、織田グループ・法務部によるガサ入れを執行する! 警備のサイボーグ武者どもは、現代の『電磁パルス(EMP)弾』で一掃しろ!」


俺の号令とともに、バナナ、イチゴ、キウイの着ぐるみ師団が突撃を開始した。

タワーの入り口をガードするのは、CEOが量産した「感情を消去された社畜ドロイド」。だが、彼らのOSは現代の最新ウイルス、おじさんの不思議ポケットから放たれた『現代製・トロイの木馬(休暇申請プログラム)』の前には無力だった。


「ぬ……!? 身体が勝手に……『有給休暇』を選択してしまう……!」

「生産性が……生産性がゼロになる! 助けてくれ、CEO様ぁ!」


次々とシステムダウンし、現場放棄するドロイドたち。俺たちはその隙を突き、タワーの内部へと突入した。

内部は、現代のブラック企業そのものだった。

窓のない部屋で、数百人の僧兵や浪人が、不思議ポケットから盗まれた『Excel(風の帳簿)』を深夜まで手書きさせられている。


「……ひどいな。キウイ、ここの連中をすぐに解放しろ。……出口には『現代の特製牛丼つゆだく』と『あったかい味噌汁』を用意しておけ。……飢えた心に一番効くのは、まずは食事だ」

「了解だ、バナナ。……しかし、上階のセキュリティが強固だ。……光秀の脳波に、CEOが直接干渉している」


タワー最上階、全面ガラス張りのCEO室。

そこには、無数のケーブルに繋がれ、焦点の定まらない目で「敵は本能寺にあり……」と呟き続ける明智光秀と、その背後でパイナップルのマスクを被った男――CEOがいた。


「ハハハ! 遅かったな、おじさん! 史実の強制力は絶対だ。光秀の脳内ストレス値は1000%を超えた。彼は今、信長を殺すことだけが『自分を救う唯一のタスク』だと信じ切っている!」

「CEO……あんた、まだそんな旧時代のマネジメントやってんのか。……ストレスで人を動かすなんて、現代じゃ三流のやることだぞ」


俺はバナナの頭部を脱ぎ、美少女の姿でCEOの前に立った。

俺の背後には、信長イチゴと、茶々丸、そして雷蔵が控えている。


「光秀! 目を覚ませ! 貴方がやるべきなのは謀反じゃない! ……『長期休暇の申請』だ!」


俺は不思議ポケットから、最終兵器を取り出した。

それは現代の『最高級・耳栓』と、『極上のアロマディフューザー(ラベンダーの香り)』、そして『現代製・最強の安眠導入剤(ハーブティー仕立て)』。


「光秀さん。貴方は頑張りすぎた。……信長様の無茶振りに、俺の無茶苦茶な内政に……。……でも、もういい。……貴方の代わりは、俺の作った『技術開発局(組織)』がやってくれる。……貴方は、ただの『十兵衛』に戻って、ゆっくり眠ればいいんだ」


俺は洗脳プログラムを上書きするように、現代の『癒やし系ASMR(小川のせせらぎ音)』を、タワーの全スピーカーから爆音で流した。


「……あ……。……水が……。……せせらぎが、聞こえる……。……上様……。……私……寝ても、よろしいのですか……?」


光秀の目から、黒い涙(CEOのナノマシン)が流れ落ちる。

彼は信長を見て、力なく微笑み、そのまま俺がポケットから出した『低反発マットレス(エアウィーヴ風)』の上に、崩れるように眠りに落ちた。


「……チッ。光秀という『バグ』を修正されたか。……だがおじさん、これで終わりだと思うなよ! このタワーには自爆装置が――」

「CEO。……あんたのパスワード、俺のタブレットでさっき『退職』に書き換えておいたぞ」


俺はソーラーパネル付きタブレットを指先で弾いた。

タワーの電力が一斉に落ち、CEOのパイン・マスクのライトが消える。


「……何だと!? 私のメインフレームが、美少女のタブレットごときに!?」

「あんたのOSは『恐怖』で動いてる。……でも俺のOSは、茶々丸の『笑顔』と、仲間たちの『適当さ』で動いてるんだ。……現代のセキュリティじゃ、この『不規則性』は防げないぜ」


俺は、呆然とするCEOの前に、一通の『解雇通知書』と、一箱の『現代の苦いコーヒー』を置いた。


「CEO。……あんたも、おじさんなんだろ? ……いい加減、この『戦国ごっこ』はやめて、俺と一緒に『隠居』しないか。……あんたの能力は、この国の物流をもっとホワイトにするために使えるはずだ」


CEOは、窓の外に広がる、カレーの香りが漂うホワイトな安土の街並みを眺め、肩の力を抜いた。


「……フン。……おじさんか。……確かに、私は疲れ果てていたのかもしれないな」


パイナップルのマスクが外され、そこから現れたのは、俺と同じくらい「疲れ切った、どこにでもいるおじさん」の顔だった。

1582年。本能寺は燃えなかった。

代わりに燃えカスとなって消えたのは、この国を支配しようとした「ブラックな概念」そのものだった。


「……パパ。終わったな」

俺は眠る光秀と、降参したCEOを見届け、バナナの皮(外装)を脱いで大きく伸びをした。


「百舌鳥、貴様……。……本気で、この魔王を隠居させるつもりか?」


信長が、少し寂しそうに笑う。


「パパ。……これからは、戦の時代じゃない。……茶々丸たちが、美味しいカレーを食べて、平和に笑える『ホワイトな日本』を作る時代です。……名誉会長の仕事は、山ほどありますよ」

「……そうか。ならば、俺もたまには『有給休暇』とやらを取ってみるか」


信長の宣言と共に、戦国時代という名のブラック企業は、ついに「完全解体」と「平和への事業承継」を完了した。

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