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戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜  作者: 井上幸将
天下統一怒涛編

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浅井長政のイクメン宣言 〜姉川の戦いを『家族会議』で終わらせる〜

「……いいか、パパ。浅井長政って男はな、この戦国時代には珍しく『誠実すぎる』んだ。義理を重んじ、家族を愛し、家臣を大切にする。そんな男に、現代兵器でリボルバーをぶっ放して首を獲ってみろ。残されたお市様(信長の妹)や、まだ幼い娘たちの心に、一生消えない傷が残る。それは俺が目指すホワイトな日ノ本じゃねえんだよ」


越前を制圧し、南下を続ける織田軍の軍議。俺、百舌鳥もずは、バナナの着ぐるみのハッチを全開にし、不思議ポケットから出した『ノンアルコールビール』を煽りながら、タブレットに映し出された浅井家の家系図を指し示した。

近江・小谷城。そこには、信長の妹・お市が嫁ぎ、政略結婚を超えた深い絆で結ばれた浅井長政がいる。史実では、朝倉との義理を優先した長政が信長を裏切り、凄惨な「姉川の戦い」を経て自害に追い込まれるが、朝倉義景がすでに「天体望遠鏡ニート」として隠居した今、その大義名分は崩壊している。


「百舌鳥よ、だが長政は頑固だぞ。朝倉が降ったと聞いても、『義に背くことはできぬ』と城に籠もっておる。光秀などは『ならば力で分からせるしかあるまい』と、鼻息を荒くして火縄銃の点検をしておるが」

「パパ。あの『真面目系武将』に一番効くのは、武力じゃない。……『自分がいかに家庭を蔑ろにしているか』という、現代的な突き付けですよ」


俺は不思議ポケットから、現代の『ホームビデオカメラ(ソーラー充電式)』、特大の『プロジェクター』、そして『現代の育児グッズセット』を取り出した。

小谷城。難攻不落を誇るその城の麓に、織田軍は布陣した。だが、放たれたのは矢でも弾丸でもない。

深夜の静寂の中、小谷城の真っ白な城壁に、突如として「巨大な映像」が投影された。


「な……何だ!? 城壁に幽霊が映っておるぞ!」

「……いや、あれは……お市様ではないか!?」


城内の将兵が騒然となる。映し出されていたのは、おじさんが事前に隠密部隊に撮らせていた、お市と三人の娘たち(茶々、初、江)の日常風景だった。

不思議ポケットの『高性能マイク』が拾った、お市の溜息と、娘たちの「パパ、いつ帰ってくるの?」という無邪気な声が、現代の『音響スピーカー』を通じて小谷城全域に響き渡る。


「……長政様。貴方が『義』だの『家名』だのと、城に籠もって難しい顔をしている間、お市様はこんなに寂しそうな顔をしています。娘さんたちは、貴方の首級しるしではなく、貴方の抱っこを待っているんですよ」


俺の声が、メガホンを通じて城内に響く。

これこそ、現代の「ドキュメンタリー番組」の手法を用いた心理攻撃――通称『ホームビデオ・トラップ』だ。

「長政殿。朝倉義景公は、今や宇宙の神秘に目覚め、伊豆の温泉で望遠鏡を覗きながら『戦は虚しい』と笑っています。貴方が守ろうとしている『義』は、もうどこにも存在しない。あるのは、貴方の頑固さのせいで、家族が路頭に迷う未来だけだ」

翌朝。

小谷城の門が、重々しく開いた。

そこから出てきたのは、具足を脱ぎ捨て、普段着の小袖を纏った浅井長政だった。その瞳は赤く腫れており、一晩中あの映像を見ていたことが伺える。


「……織田殿。いや、義兄あに上。……私は、間違っていた。家臣を守り、義を貫くことが男の道と信じていたが……私は一番身近な家族を、不幸にしようとしていた」


長政が、信長(イチゴ姿)の前で膝をつく。


「長政よ。気づくのが遅いわ。……百舌鳥、こやつをどうする?」

「決まっています。長政殿。貴殿には本日をもって『浅井家当主』を早期退職していただきます。……その代わり、織田グループの『子育て支援・教育局長』として、再雇用します。……あ、これが退職金代わりの『現代製・抱っこ紐』と『最高級紙オムツ』です」


俺はポケットから、使い心地抜群のエルゴベビー(風の抱っこ紐)と、メリーズ(風のオムツ)を差し出した。


「これより貴殿の任務は、戦場に出ることではない。お市様と共に、未来の宝である子供たちを育てる『イクメン』としての道を究めることです。……近江の領地は、私たちが派遣する『ホワイト人材派遣団』が、責任を持って近代化(M&A)しておきますから」


長政は、手渡された抱っこ紐を不思議そうに眺め、やがて優しく微笑んだ。


「……戦わずに済む。家族と一緒にいられる。……それが、これほどまでに心が軽いものだったとは」


こうして、戦国史上屈指の激戦となるはずだった「姉川の戦い」は、おじさんによる「大規模な家族会議」と「福利厚生の提示」によって、消滅した。

その日の夕方。

小谷城の庭で、長政が娘たちを背負って走り回り、お市がそれを微笑んで見つめる光景があった。


「……パパ。これでいいんだよな。誰の首も飛ばず、誰も泣かない。……これが、おじさんのやりたかった天下統一だ」


俺は、小次郎が淹れてくれた現代の『インスタントコーヒー』を啜りながら、独白した。


「百舌鳥様。また一つ、巨大な勢力が『円満隠居』しましたね。……でも、石山本願寺や武田、上杉といった連中が、こんな『情』で動くとは思えませんが」


小次郎の指摘は正しい。

浅井や朝倉のような「話せばわかる」連中ばかりではない。次なる相手は、独自の狂信的な思想を持つメガ・コーポレーション「石山本願寺」と、最強の軍事力を誇る「武田信玄」というブラック企業の雄だ。


「……わかってるよ。だからこそ、次はもっと『エグい』現代知識を使わなきゃならない。……キウイ、準備しろ。次は『経済封鎖』と『プロパガンダ』、そして『現代式・兵糧攻め(カレーの匂い攻撃)』だ」

「了解だ、バナナ。戦略的飢餓状態の創出……いや、もとい、『ダイエット・プロジェクト』を開始する」


キウイが着ぐるみの奥で、冷徹に目を光らせる。

おじさんの天下M&Aは、ついに宗教と軍事の巨大な壁へと突き当たろうとしていた。


「茶々丸。叔父さんが優しくなってよかったな」

「うん! パパ、抱っこ紐かっこいい! 茶々丸も、雷蔵に付けてあげる!」


スイカを被った雷蔵が、子供用の抱っこ紐で無理やり何かを背負わされようとして、困った顔で「ワン(勘弁してくれ)」と鳴いていた。

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