比叡山のM&A 〜おじさん、宗教法人の監査に入る〜
「……おい、聞いてくれパパ。俺は別に信仰心を否定するわけじゃないんだ。だがな、宗教法人の皮を被って、高利貸し(サラ金)を営み、僧兵という名の暴力団を囲い、挙句の果てに脱税を繰り返す。これは現代社会なら、即座にガサ入れが入るレベルの特級ブラック案件なんだよ」
京の都を見下ろす比叡山の麓。俺、百舌鳥は、バナナの着ぐるみをパタパタと扇ぎながら、イチゴ姿の信長にタブレットの画面を突きつけた。
画面には、派遣団の隠密部隊が収集した比叡山延暦寺の収支報告書(おじさんの推定)が表示されている。 CEOが残した「不透明な資金洗浄ルート」が、この聖なる山を拠点に全国へ張り巡らされていたのだ。
「百舌鳥よ、比叡山は『王城の鎮護』。そこを攻めるは、神仏を敵に回すに等しいと光秀が泣いて止めておるぞ」
「神仏が泣いてるのは、ここの坊主たちが酒を飲み、肉を食い、女を囲ってる現状の方ですよ。パパ、ここは『焼き討ち』なんて野蛮なことはしません。……『特別会計監査』と『強制捜査』で行きましょう」
俺は不思議ポケットから、現代の『税務署員用・腕章』、差し押さえ用の『赤い封印シール』、そして『高感度・金属探知機』を取り出した。
「これより、比叡山延暦寺に対する『経営監査』を開始する! 抵抗する者は公務執行妨害とみなし、ホワイト人材派遣団の法務班が厳正に対処する!」
俺の号令とともに、つなぎ姿の技術者集団が、キウイ率いる武装護衛部隊(キウイ騎士団)を伴って比叡山の石段を駆け上がった。
かつては数多の武将を震え上がらせた僧兵たちも、最新鋭の「防弾シールド」と「催涙スプレー」を装備した着ぐるみ集団の前には、文字通り目も開けられない。
「な、何だ貴様らは! ここを神聖なる山と知っての狼藉か!」
「神聖なのは山だけだ! あんたたちの帳簿はドブ川より汚ねぇんだよ!」
俺は根本中堂の真っ只中に踏み込み、不思議ポケットから『サーモグラフィ・カメラ』を取り出した。
「キウイ! 床下の温度を確認しろ。隠し金庫があるはずだ!」
「了解だ、バナナ。熱源感知……。……発見した。地下3メートルに大規模な空洞を確認。これは仏像ではなく、金銀の延べ棒の熱伝導率だ」
「よし、差し押さえろ!」
俺たちは、僧侶たちが隠し持っていた膨大な金銀財宝、そしてCEOが流していた
「現代の禁制品(粗悪な覚醒剤や武器)」を次々と摘発していった。
比叡山の権威は、俺たちが持ち込んだ「科学的捜査」と「会計の透明化」によって、みるみるうちに剥ぎ取られていく。
比叡山のトップ、天台座主は、俺が突きつけた『経営改善命令書』と、隠し持っていた「女子供との密会証拠写真」を見て、泡を吹いて倒れた。
「座主殿。貴殿には『名誉職としての隠居』を勧告する。美濃の龍興や長島の証意と同じだ。この山を降りて、伊豆の『リハビリテーション・センター』で、一人の人間として一から修行し直しなさい」
「……あ、悪魔だ。お主は仏敵か、それとも……」
「ただの元無職おじさんですよ。……さて、これより比叡山延暦寺は、織田グループ傘下の『比叡山・平和文化観光パーク』として再編する! 僧兵は解散! 武器は全てスクラップにし、義肢の材料にする!」
俺はタブレットを操作し、比叡山の「資産没収」を完了させた。
史実のような凄惨な火の手は上がらない。代わりに上がったのは、現代の『除菌スプレー』の霧と、技術者集団による『石垣の補修工事』の音だった。
その日の夕暮れ。
整理整頓された比叡山からの帰り道。俺は小次郎が持ってきた『現代のスポーツドリンク』を飲みながら、独白した。
「……終わった。パパ、これで京の北側の懸念は消えた。……でもな、やりすぎたかもしれない」
「百舌鳥、何を弱気な。あの光秀ですら、整理された比叡山の帳簿を見て『これぞ真の仏の道……(効率的すぎる)』と拝んでおったぞ」
信長が笑うが、俺の胃はキリキリと痛む。
比叡山という権威を「経営不振」で解体したことは、全国の宗教勢力、特に石山本願寺への強い宣戦布告になる。
「(……次は石山か。あそこは比叡山よりはるかに巨大な『メガ・コーポレーション』だ。おじさんの監査だけで、どうにかなる相手じゃない)」
俺は不思議ポケットをまさぐった。
そこには、次の戦いに備えた『現代のプロパガンダ(広報活動)セット』と、茶々丸のために用意した『お子様ランチの型』が入っていた。
「パパ! お山、ピカピカになったね! これで茶々丸も、あそこで遊べる?」
「ああ。あそこはもう戦の場所じゃない。茶々丸がピクニックを楽しめる『公園』にしたからな」
娘の笑顔を守るため、おじさんは今日も戦国の闇をホワイトに塗り潰していく。
だが、その背後では、CEOが海外の拠点から、織田の「急速な近代化」を阻止すべく、さらなる刺客を送り込もうとしていた。
「……次は、越前の朝倉。あの『優雅なニート』を、どうやって現実に引き戻してやるか…」




