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戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜  作者: 井上幸将
天下統一怒涛編

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美濃の蝮と、後継者争いの火種

「……さて。ようやく着いたか、美濃。ここを獲れば、俺たちの『ホワイト企業・日ノ本』への道が大きく開ける。だが、やり方を間違えれば、ただの侵略者だ」


俺、百舌鳥もずは、バナナの着ぐるみのハッチを少しだけ開け、外の空気を吸った。目の前にそびえ立つのは、難攻不落の名城・稲葉山城。かつて「美濃のマムシ」と呼ばれた斎藤道三が築き上げた、権謀術数の結晶だ。

現在の主は、道三の孫にあたる斎藤龍興。CEOパイナップルの甘言に乗せられ、領内に過酷な「成果主義」と「24時間365日労働(不眠不休の兵役)」を強いた結果、家臣たちの心は離れ、領民は餓死寸前という、典型的な「倒産間近のブラック企業」状態にある。


「パパ。ここの攻略に、着ぐるみの暴力は必要ありません。……もっとこう、内側から『円満な事業承継』を促してやりましょう」

「ほう、百舌鳥よ。またあの『島流し』の準備か?」


イチゴの着ぐるみの首元から、信長が楽しそうに顔を出す。


「いえ、今回は『クーデター』です。……ただし、血の流れない、極めて事務的なやつですよ」


俺は不思議ポケットから、現代の『ボイスレコーダー』と、偽造した『斎藤家内部告発状』、そして現代の『経営コンサルタント用・経営診断書(赤字決算Ver.)』を取り出した。

ターゲットは、龍興を支える有力家臣たち。中でも「西美濃三人衆」と呼ばれる、稲葉良通、安藤守就、氏家直元だ。彼らは龍興の無能さとCEOの搾取に、とっくに愛想を尽かしている。

俺は小次郎を連れ、夜陰に乗じて安藤守就の屋敷へと潜入した。


「……何奴!? 忍びか!」

「しっ。声が大きいですよ、安藤殿。……私は織田家の『経営コンサルタント』、百舌鳥です」


俺は美少女の姿で、中身はおじさんの胡散臭い笑みを浮かべ、テーブルに一本の『現代製・超高級大吟醸』を置いた。


「安藤殿。単刀直入に言います。斎藤龍興というリーダーに、もう未来はない。彼はCEOに魂を売り、美濃の財産を海外に流している。このままじゃ、あんたたち家臣も道連れに『倒産(滅亡)』だ」

「……滅多なことを。龍興様は道三様の血を継ぐお方だ」

「血だけで経営ができるなら苦労しませんよ。いいか、安藤殿。俺たちは龍興を殺しに来たんじゃない。……『早期退職』を勧めにきたんだ」


俺はポケットから、龍興が裏でCEOと交わした(と、俺が捏造した)「美濃の民を奴隷として売却する契約書」を見せた。もちろん、内容は現代の画像編集技術でそれっぽく仕上げたものだ。


「これを見てください。彼は美濃を売って、自分だけ南蛮の島で隠居しようとしてる。……そんな主君に尽くす価値、ありますか? 逆に、俺たちの傘下に入れば、この『現代式・農業改革プラン』を提供し、西美濃の収穫量を三倍にしてみせる。……家名も、所領も、命も保証する。条件は一つ。……龍興に『引退届』を書かせる手伝いをすることだ」


安藤の目が、大吟醸の瓶と、提示された「農業改革プラン」の間で揺れる。


「……龍興様を、どうするつもりだ」

「殺しませんよ。命は助ける。……ただ、少し遠い島で、一生遊んで暮らせるだけの『退職金』を渡して、そこで隠居してもらうだけだ。二度と政治に関われないよう、現代の『娯楽(トランプと酒と漫画)』を山ほど持たせてな」


翌日。稲葉山城内は騒然となった。

突如として、西美濃三人衆をはじめとする主要家臣たちが、「龍興の経営責任を問う」として総辞職を宣言。同時に、城の周囲をフルーツ騎士団が完全包囲した。


「な、なんだこれは!? 謀反か! 稲葉、安藤! 何をしている!」


龍興が叫ぶが、誰も答えない。

そこに、バナナの着ぐるみを着た俺と、キウイの着ぐるみを着たキウイが、堂々と正面から入城した。


「斎藤龍興殿。貴殿の経営能力不足により、美濃は破綻しました。……よって、これより『民事再生手続』を開始します。……これが貴殿の『退職勧告書』です」


俺はポケットから出した金箔入りの賞状(のような退職願)を突きつけた。


「ふ、ふざけるな! 私は蝮の孫だぞ!」

「孫でも何でも、赤字を出したら解任です。……大丈夫、命までは取りません。伊豆の島に、貴殿専用の『釣り堀』と『高級ソファー』を用意しました。そこで余生を楽しみなさい。……後任のCEOは、道三様の娘であり、信長様の正室である帰蝶様が務めます。……これ以上、円満な承継はないでしょう?」


龍興は、家臣たちの冷ややかな目と、俺たちが背負った「火縄銃より強力なリボルバー」の銃口を見て、ついに膝をついた。


「……わ、わかった。……美濃は、くれてやる……。その代わり、本当に……本当に酒はあるんだろうな?」

「ええ、一級品のウィスキーを一生分。……ただし、二度と美濃の土は踏まないでくださいね」


こうして、美濃・稲葉山城は、一滴の血も流れることなく、斎藤家から織田家へと「譲渡」された。

その夜。

稲葉山城の天守閣から美濃の夜景を眺めながら、俺は深い溜息をついた。


「……終わった。また一人の人生を、社会的に抹殺してしまった。……おじさん、心が痛いよ」

「あら、百舌鳥。随分と甘いことを言うのね。……あんな無能な甥っ子が、これほど贅沢な隠居生活を送れるなんて、むしろ貴方は救世主よ」


背後から、帰蝶が忍び寄る。

彼女は今日から「美濃の臨時経営責任者」だ。その瞳には、父・道三にも似た、冷徹で美しい野心が宿っている。


「……まあ、これで美濃の民は助かる。……次は、京への道だな。……足利義昭とかいう、一番面倒臭そうな『名誉会長』が待ってるわけだ」

「ふふ、楽しみね。……でもその前に、今日は美濃を手に入れた『祝杯』を挙げましょう? ……貴方のポケットにある、あの『刺激的な夜の道具』も使って……」

「……。……帰蝶さん、天下統一の前に、俺の理性が『倒産』しそうなんですけど」


美濃の版図を手にし、織田家の勢力は一気に拡大した。

だが、おじさんの苦悩は、領地が広がるたびに深まっていく。

CEOの影はまだ遠く、歴史の強制力(本能寺)は、着実にその足音を近づけていた。

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