フルーツの皮を被った悪魔 〜着ぐるみが最強である「3つの理由」〜
「……なあ、キウイ。正直に言っていいか? 俺、このバナナの着ぐるみを着て戦場に出るたびに、心が死んでいくんだよ。敵兵が『バ、バナナが来たぁぁ!』って叫びながら逃げていく姿、現代人のおじさんとしては申し訳なくて見ていられないんだ」
美濃へと続く街道。行軍の合間の小休止中、俺(百舌鳥)は、キウイの着ぐるみを脱いで頭部を脇に抱え、遠い目をしながら呟いた。
「バナナ、貴様は本質を理解していない。この着ぐるみは、CEOが残した負の遺産を、私が現代軍事工学に基づき『究極の非対称戦闘用外骨格』へと改造したものだ」
キウイは真顔で、自分のキウイ型のヘルメット(着ぐるみの頭部)を叩いた。
「いいか、今のうちに全兵士に徹底しておけ。なぜ我々が最強なのか。理由は3つある。小次郎、メモを取れ」
「ハッ! よろしくお願いします、教官!」
弟子の小次郎が、必死にメモ帳(不思議ポケット製の防水タクティカルノート)を広
げる。
1. 圧倒的な防御力:現代製「高分子ポリエチレン」の衝撃
「まず一つ。この着ぐるみの素材は、現代の防弾チョッキに使用される高分子ポリエチレンとアラミド繊維の複合材だ。表面に貼られたボア(毛)は、ただの飾りではない」
キウイが傍らにあった落ち武者の刀を拾い、自分のキウイの腹部を全力で斬りつけた。
キィィィィィィン! という金属音が響き、刀のほうが真っ二つに折れた。着ぐるみには傷一つついていない。
「……まじかよ。それ、ただのぬいぐるみじゃなかったのか」
「表面の毛が衝撃を分散し、内層の防弾プレートが刃を通さない。戦国時代の火縄銃ですら、至近距離でなければ弾き返す。兵士にとって『絶対に死なない』という確信は、何よりも強力なバフ(士気向上)となる」
2. 非人道的な「環境維持システム」
「二つ目だ。この着ぐるみ内部には、不思議ポケットから供給される液体窒素と小型ファンによる『完全空調システム』が完備されている」
キウイが着ぐるみの首元にあるスイッチを押すと、シュゴォォという排気音がした。
「戦国時代の鎧は重く、夏は蒸れ、冬は凍える。だが我々は常に室温24度、湿度50%の最適環境で戦える。敵が暑さでバテている最中、我々はマラソンランナー並みの持久力で追い込みをかける。これはもはや虐殺だ」
「(……なるほど、だからこいつ、夏場でも平気な顔して蛇とか食ってたのか)」
3. 心理的攪乱:認知不全による「SAN値」の削り
「そして三つ目。これが最も重要だ。……『認知の歪み』だ」
キウイの声が低くなる。
「人間は、理解できないものに対して恐怖を抱く。殺意を剥き出しにした武者が来るなら対処できる。だが、笑顔を浮かべた巨大なイチゴやバナナが、リボルバーをぶっ放しながら時速30キロで突撃してくる光景はどうだ? 敵の脳は『これは現実ではない』と処理を拒否し、判断力が著しく低下する。……我々は戦う前に、敵の精神を破壊しているのだ」
「……あー、それ、俺が一番『申し訳ない』と思ってたやつだわ」
俺は自分のバナナの着ぐるみを見つめた。
見た目はマヌケ。だが中身は、現代の防弾技術、空調技術、そして極限の心理戦を組み合わせた「歩く人型兵器」。
「上様(信長)のイチゴの着ぐるみに至っては、不思議ポケット製の『指向性スピーカー』が内蔵されており、常に幸若舞のBGMを爆音で流しながら戦場を蹂躙する。あれはもはや、音響兵器だ」
「……キウイ、もういい。分かった。俺たちの強さは、美少女の可愛さでもおじさんの知識でもなく、この『ガチすぎる着ぐるみ』にあるんだな」
俺は溜息をつき、再びバナナの頭部を被った。
視界の端に表示される「HUD」には、美濃・稲葉山城までの距離と、敵兵の熱源反応がクッキリと映し出されている。
「パパ! バナナ、かっこいいよ!」
茶々丸がアヒル型の浮き輪を肩にかけ(※水着回の名残)、無邪気に笑っている。
「……ああ、茶々丸。パパはね、このバナナの皮を被って、今日もおじさんの心を殺しながら天下を獲りにいくよ」
最強のフルーツ騎士団。
その着ぐるみの下には、冷徹な軍人と、疲れ切ったおじさんの魂が、それぞれの正義を抱えて隠されていた。
「全軍、進め! 次は美濃の当主、斎藤龍興だ! 奴に『現代の労働基準法』と『高級羽毛布団』の素晴らしさを叩き込んでやれ!」
「チェストォォォォォォ(※島津流)!!」
清洲城から発した変な着ぐるみの軍勢は、最新鋭の科学を「着ぐるみの皮」で包み隠し、戦慄する美濃の地へと踏み込んだ。




