束の間の休息、清洲城プール開き! ~不思議ポケットの現代水着コレクション~
「……いや、パパ。いくらなんでも暑すぎでしょ。尾張の夏、湿度120%くらいないか?」
俺は清洲城の縁側で、美少女の姿のまま、だらしなく大の字になっていた。
せっかくインドから帰国して内政を整え、さあ隣領攻略だ!と意気込んだものの、この殺人的な猛暑である。着ぐるみを着て進軍などしたら、フルーツ騎士団は戦う前に「ドライフルーツ騎士団」になって全滅する。
「百舌鳥、泣き言を言うな。この暑さもまた、幸若舞の趣というもの……っ、アツッ!? 廊下が熱すぎて足の裏が焼けるわ!」
イチゴの着ぐるみを半脱ぎにした信長が、情けなく跳ね回っている。
「もういい、こうなったらアレだ。小次郎、キウイ、雷蔵! 城の中庭に『池』を掘れ! 現代の技術で最高にクールな『レジャープール』を作るぞ!」
(おじさんの脳内スイッチが切り替わった。こういう時の無職おじさんの行動力は異常である)
数時間後。不思議ポケットから取り出した『高性能小型ショベルカー』と、キウイの工兵技術によって、清洲城の中庭には巨大な特設プールが完成した。
循環濾過装置(ソーラーパネル駆動)により、水は常にクリスタルブルーに輝いている。
「さて、次は装備だ。茶々丸、こっちにおいで。パパが最高の『戦闘服』を選んでやったぞ」
パパはポケットから、フリル付きのキッズ水着と、アヒル型の浮き輪を取り出した。
「わぁ! パパ、これかわいい! スイカみたい!」
「それは雷蔵の分だ(スイカ柄の犬用ライフジャケットを装着させながら)」
茶々丸がキャッキャと水に飛び込む。それを見ていた信長や光秀、そして帰蝶が興味津々で近づいてきた。
「百舌鳥……その、茶々丸が着ている『布の面積が極端に少ない装束』は、一体なんだ?」
「パパ、これは『水着』です。水の抵抗を減らし、かつ機能美を両立させた現代の英知ですよ。ほら、皆さんにも配りますから、さっさと着替えてきてください」
パパは皆にそれぞれ似合いそうな水着を手渡した。
「百舌鳥殿……この装束は……」
着替え終わって現れた光秀は、慣れない水着に少し戸惑っている様子だった。
「気にするな十兵衛! 見ろ、俺のこの無駄のないフォルムを!」
信長は、水を得た魚のように早速プールの中へ。泳ぐ気満々だ。
そして――。
「百舌鳥……お待たせ。……どうかしら?」
現れた帰蝶は、普段とは違う姿で魅力的だった。
「……最高です、帰蝶さん。もう天下統一とかどうでもよくなってきた……」
「あら、嬉しいわ。じゃあ、貴方も見せてちょうだい? 貴方の『水着』」
「え? パパ? パパは適当なトランクスで――」
「ダメよ。百舌鳥は私の『くのいち』なんだから。はい、これに着替えてきなさい」
帰蝶から渡されたのは、茶々丸とお揃いの水着だった。
「……え、これ着るの? パパ、おじさんだよ? 社会的死じゃない?」
「いいから、早く」
帰蝶のドSな瞳に抗えず、パパは泣きながら着替えた。
鏡に映った自分の姿は、茶々丸と並んでも違和感のない「美少女(お揃い水着Ver.)」だった。
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
パパがプールサイドに現れた瞬間、清洲城の全将兵から地鳴りのような歓声が上がった。
「百舌鳥殿! 眩しすぎます! 拙者、もう目が潰れても構いませぬ!」(小次郎)
「ワン!(いいぞ、百舌鳥様!)」(雷蔵)
「うるせえ! 全員スクワット1000回だ!」
プールの中では、信長がクロールで爆走し、茶々丸が雷蔵(スイカ浮き輪)に乗って波を作り、帰蝶がパパの太ももにサンオイルを塗りたくるという、地獄のような桃源郷が展開されていた。
(……ああ。隣領の攻略とか、武将の隠居スキームとか、今はもうどうでもいい。冷えたコーラが美味い。パパ、もうこのまま一生『夏休み』してたいよ……)
現代の不摂生おじさんの魂は、南国のビーチのような清洲城の熱気に、心地よく溶けていくのだった。
しかし、この「水着パラダイス」の様子は、忍びのネットワークを通じて全国の武将たちに拡散されていた。
「……何!? 信長が清洲で『珍妙な布』を纏った美少女と水遊びだと!? 許せん、羨ましすぎる……いや、風紀の乱れだ! 成敗してくれる!」
この「目の毒」すぎる噂が、次なる戦い(と隠居者)を呼び寄せることになるとは、この時のパパはまだ知る由もなかった。




