薩摩の猛者と、空飛ぶバナナ
「……暑い。バナナの皮の中がサウナ状態だよ。一佐殿、もといキウイ。これ本当に飛ばなきゃダメ?」
巨大な魔改造船「クイーン・モズ号」の甲板で、私は泣き言を垂れていた。目の前に広がるのは、九州最南端・薩摩の青い海。だが、穏やかなのは景色だけだ。水平線の向こうには、パイナップル(CEO)が近代的な「外輪船」へと改造した島津水軍の小早船が、不気味な黒煙を上げて陣を敷いている。
「百舌鳥殿、これは現代のパラグライダーと忍びの『大凧』を融合させた、わが軍最強の空挺浸透作戦だ。キウイとなった私を信じろ。」
茶褐色の毛羽立ったキウイの着ぐるみに身を包んだキウイ(元一等陸佐)は、至って真面目な顔で、巨大なバナナ型の凧と私をワイヤーで連結していた。その背後では、レモン姿のフロイスが「空からビタミンが降ってくる……まさに奇跡です!」と、レモンのヘルメットを揺らしながら祈りを捧げている。
「おねえちゃん、風は最高だよ! カモメさんたちが『上空の気流は安定してる』って言ってる!」
リンゴの被り物をした茶々丸が、鳥たちと交信しながら親指を立てる。私は覚悟を決め、黄色いバナナの着ぐるみの裾をぎゅっと絞った。不思議ポケットからコルトマムシを引き抜き、シリンダーを回転させる。
「よっしゃあ! 野郎ども、離脱用意! 薩摩のチェスト野郎どもに、おじさんの空中殺法を見せてやるよ!」
信長様がイチゴの着ぐるみのまま「いざ、飛べ! 黄金のバナナよ!」と軍配を振るう。瞬間、蒸気機関で巻き上げられたカタパルトが弾け、私はキウイと共に大空へと射出された。
「あばばばばば! 高い! 死ぬ! おじさん高所恐怖症だったの忘れてたぁぁ!」
絶叫する私の横で、キウイは空中姿勢を完璧に保ち、手元の操縦索を鮮やかに操る。私たちは、島津水軍の旗艦を目指して滑空を開始した。眼下では、島津義弘ら四兄弟が「なんじゃあの巨大な果物は!?」と、自作の「ハリガタ」を杖代わりに呆然と空を見上げている。
「全艦、撃てぇー! あの不気味なバナナとキウイを落とせぇー!」
義弘の号令と共に、島津軍がパイナップルから供与された「連射式弓矢」を放つ。だが、空中を舞うバナナ(私)は、不思議ポケットから取り出した「強力ローション弾」を空中で散布。
「これでお肌も床もトゥルットゥルだよ! おじさんのスカイ・ローション・爆撃だ!」
散布された液体が島津の船の甲板を濡らし、薩摩の猛者たちが次々とバランスを崩して「チェストォー(滑落音)!」と海へ消えていく。その隙を突き、私たちは旗艦のど真ん中に着地した。
「……お邪魔するよ。パイナップルさんの居場所、教えてもらおうか?」
着地の衝撃でバナナの被り物が少しズレたが、私はリボルバーの銃口を義弘の鼻先に突きつけた。キウイもまた、着ぐるみの隙間からタクティカルな動きで周囲を制圧している。
「……なっ。なんという卑怯な術……。だが、あのパイナップル殿はすでに海を渡った。大陸へ向かい、『効率的な大帝国』を作ると言い残してな。」
「……逃げ足だけは一等賞だね、あのCEO。」
私は溜息をつき、不思議ポケットから「マヨネーズ入りの親子丼」を取り出し、腰を抜かした義弘の前に置いた。
「まあ、チェストとか言う前にこれでも食べなよ。お腹が空いてると、変な転生者の口車に乗せられちゃうからさ。」
薩摩の猛者たちが、初めてのマヨネーズの味に
「……う、旨い。チェスト……旨い……」
と涙を流す中、私の視線はさらに西、大海原の先へと向かっていた。
戦国フルーツ騎士団、最初の寄港地・九州を制圧。
次は、海の向こうでパイナップルが待ち構える、未知の大陸へ。
おじさんの、そして果物たちの世界一周の旅は、ここからが本番だった。




