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戦国漫遊・子連れ忍法帖 〜中身はおじさんだけど信長に嫁いで内政チートしています〜  作者: 井上幸将
天下布武とフルーツ騎士団編

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百舌鳥の私兵 ―― 泥に咲く弟子たち

「殿、私は自分の身は自分で守ります。ついでに、殿の『影』となる最強の私兵集団も作らせてもらいますよ。もちろん、予算は殿の財布から出してもらいますけどね」


私がそう宣言してから、半年が経過した。尾張の辺境にある広大な養鶏場は、今や「特務忍び養成所」兼「現代知識実験場」という、戦国時代にあるまじき異様な区画へと変貌を遂げていた。私は不思議ポケットから取り出した現代の「特殊部隊教育カリキュラム」を片手に、各地の戦災から拾い上げてきた身寄りのない孤児たち……総勢五十名ほどの子供たちを眺めていた。


「いいか、お前たち。よく聞け。お前たちは今日から、ただの忍びじゃない。私の知恵と一佐殿の技術を詰め込んだ『多機能特殊工作員』だ。戦わずして勝ち、生きて、温かい飯を食い、ふかふかの布団で寝る。それがおじさん……じゃなくて、私の流儀だ。死ぬのが仕事なんていう古い忍びの考えは、この場で捨てろ。死んだらマヨネーズも食えないんだぞ!」


私の言葉に、子供たちは一瞬呆然としたが、その目に宿る光は真剣そのものだった。その最前列に、ひときわ鋭い眼差しを持つ少年がいた。名は小次郎こじろう。CEOが「効率化」の名の下に強行した略奪により、村を焼かれ、親を亡くした少年だ。彼は、かつての私のように、何かに縋らなければ生きていけない絶望の中にいた。


「お師匠様……いや、百舌鳥様。俺に、俺に力をくれ。あのCEOという男の喉を、この手で掻き切るための術を!」


小次郎は泥に膝をつき、額を地面に擦り付けた。復讐の炎がその小さな体を焦がしているのがわかる。だが、私はその額を、不思議ポケットから出した適当な扇子でパチンと弾いた。


「復讐なんて、カロリーの無駄遣いだよ、小次郎。あんたにはもっと大事な仕事がある。……茶々丸、こいつに『動物との対話』の基礎を教えてやりな。あと、鶏の餌やりを一週間、完璧にこなすこと。それが最初の修行だ」

「えぇ……殺し方じゃなくて、鳥の世話なの?」


と小次郎は不満げに顔を上げたが、茶々丸が


「おいで、小次郎くん。鶏さんは嘘をつかないから、心を整えるのに一番いいんだよ」


と、雷蔵らいぞうを連れて彼の腕を引いていった。

小次郎だけではない。他にも個性豊かな面々が集まった。一見すると弱々しいが、指先の器用さで不思議ポケットの予備パーツを正確に作り上げる少女、おおりん。彼女には現代の「精密機械」の基礎概念を、図解で教え込んだ。また、牛のように大柄で心優しい少年、五助ごすけ。彼には一等陸佐から伝授された「近代格闘術」を叩き込み、盾としての役割を与えた。


「おねえちゃん、お昼休みだよ! 今日のメニューは、卵たっぷりの『特製タルタルチキン』だって!」


茶々丸の明るい声が響くと、過酷な訓練に励んでいた子供たちの顔が一気に和らぐ。私は彼らに、ただ戦うだけでなく、衛生観念や栄養学、さらには現代の「民主的な組織運営」を教えていた。CEOが「使い捨ての駒」として兵を使い潰すのに対し、私は一人一人が自分の意思で考え、動き、生き残るための「スペシャリスト集団」を作り上げようとしていたのだ。


「……一佐殿。あの子たちの動き、どう思います?」


傍らで腕を組んで見守っていた一等陸佐が、深く頷いた。


「……信じられんな。わずか半年で、現代のレンジャー部隊に近い連携を見せ始めている。特に、あの小次郎の『情報の取捨選択』の速さは異常だ。君の教える『おじさん流のずる賢さ』が、良い方向に作用しているらしい」

「褒め言葉として受け取っておくよ。……さて、そろそろ実践を兼ねた『課外授業』が必要かな」


私は不思議ポケットの奥底にある、まだ誰にも見せていない「新型コルトマムシの図面」を指でなぞった。CEOが歴史のレールを無理やり敷こうとするなら、私はこの子たちと一緒に、そのレールを爆破して新しい荒野を突き進む。本能寺という暗雲が近づく中で、私の「小さな軍隊」は、確実にその牙を研ぎ始めていた。

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