小さな守護者と、逆鱗の炎
信長様との夜を終えて数日。尾張の「養鶏場兼・特務忍び養成所」には、かつてない不穏な空気が漂っていた。雷蔵が一日中鼻を鳴らし、茶々丸の周りに集まるカラスたちも落ち着きなく空を旋回している。
「おねえちゃん、風の中に『鉄の臭い』が混じってるよ」
茶々丸が私の手を握りしめて言った。その直後、養鶏場の生垣を突き破って、漆黒の装束に身を包んだ集団が音もなく躍り出た。CEOが直属として鍛え上げた「効率化暗殺部隊」だ。
「目標を確認。百舌鳥の弱点である子供たちを確保し、本能寺への交渉材料とする」
リーダー格の男が、無機質な声で命じた。
「おじさん、子供を狙う奴だけはガチで許さないって決めてるんだよね」
私は同時に指笛を鳴らした。だが、私が動くより速く、次世代の芽が動いた。
「行け、みんな!」
茶々丸の声に応じ、物陰から数十匹の猟犬と、空からは猛禽類が刺客たちに襲いかかった。動物たちの予測不能な動きに、効率を重視しすぎた刺客たちは混乱する。
「計算にない……! 犬の動きに規則性がないぞ!」
そこへ、弟子の太郎丸が屋根裏から飛び出した。
「これでおしまいだ!」
太郎丸が叫ぶと、動物たちと連携し、刺客たちを圧倒した。爆発音のような轟きと共に刺客たちが倒れる。私はその隙を見逃さず、一気に距離を詰め、リーダーを拘束した。
「あんたたちのボスのCEOに伝えておきな。効率だのシステムだの言う前に、自分のケツの穴でも洗って待ってろってね」
刺客たちは散り散りに逃げ去っていった。茶々丸が雷蔵を抱きしめ、太郎丸は自分の手の震えを隠すように拳を握りしめている。
「二人とも、よくやった。……怖かったでしょ」
私が二人の頭を撫でると、茶々丸は小さく笑った。
「ううん。パパとおねえちゃんを守るって決めたから。それに、犬さんたちが守ってくれたよ」
子供たちの成長は、私の想像を超えていた。CEOが歴史のレールを敷こうとしても、この子たちがそれを踏み外して、新しい道を作ってくれる。私は「予備のおやつ」を二人に手渡し、逃げていく刺客たちの背中を、おじさんの冷徹な瞳で見送った。本能寺まで、あとわずか。CEO、あんたの「最効率な死」を私がプロデュースしてあげるよ。




