無職おじさん、地獄の英才教育を受ける
戦国転生くのいちの冒険はっじまっるよ~!!カクヨムでも掲載中です
死んだと思ったら、赤ん坊になっていた。
意識がはっきりしたのは、生後数ヶ月。泥壁の家、囲炉裏の匂い、そして自分を「もず」と呼ぶ忍びの女の腕の中。
股間にあったはずの「自信」が消え去り、代わりに三十路の記憶だけが鮮明に残っている。絶望するには十分な状況だった。
(……いや、待てよ。これ、もしかして流行りの転生か?)
前世の私は、実家でネットの海を漂う無職。唯一の武器は、膨大な「雑学」と「ゲーム知識」だけ。だが、この里の現実はネット小説よりも遥かに泥臭かった。
「もず、立て。三歳になったのなら、もう『隠密』の端くれだ」
父であり里の長でもある男は、私に情け容赦のない訓練を課した。
朝から晩まで、崖登り、息止め、そして毒草の判別。
普通の子なら泣き叫んで逃げ出すところだが、私の中身は「人生を詰んだおじさん」だ。
(……前世で何もしなかった俺が、せめてここでは『最強』を目指さないでどうする!)
三十路の精神力で、幼子の脳をフル活用した。
現代の効率的なトレーニング理論(インターバル走や体幹トレーニング)をこっそり修行に取り入れ、忍びの技に物理学の知識を掛け合わせた。
「なぜこの角度でクナイを投げれば殺傷能力が上がるのか」を論理的に理解している子供など、この時代
にはいない。
十歳になる頃には、里の屈指の使い手となっていた。
さらに私は、修行の合間に自作の装備を開発した。それが、現代のタクティカルベストの概念を応用した多機能装束――『不思議ポケット』だ。
隠しポケットに、自作の煙幕、消毒薬、そして「こんにゃくの切れ端」……は流石にまだ先だが、あらゆる「チートの種」を詰め込んだ。
そして私の相棒、柴犬の雷蔵。
こいつは里の裏山で死にかけていたのを私が拾い、現代のドッグトレーニングで徹底的に鍛え上げた。「待て」も「殺せ」も、そして「あっちの部屋の機密文書を盗んでこい」も完璧にこなす、戦国最強のインテリ犬だ。
十二歳。卒業試験。
里の精鋭三人を、目隠しした状態で無力化した私に、長は苦々しく言った。
「もず。お前はもう、この里にいてはいかん。強すぎる上に、その『不思議ポケット』とやらの中身が不
気味すぎる」
「……クビってことですか? 酷いなぁ。せっかく里の福利厚生を整えようと思ってたのに」
「嫁にでも行け。さもなくば、その知恵で乱世をかき回してこい。お前の眼は、この時代の誰よりも遠くを見ている」
こうして私は、里を追放された。
背中には小太刀、不思議ポケットには現代知識の結晶、そして隣には精悍な顔つきの雷蔵。
「さあ、行くぞ雷蔵。まずは……そうだな。美味い飯でも探しに行こうか」
「ワン!」
雷蔵の力強い返事と共に、私は里の境界である崖から、乱世の霧の中へと飛び降りた。
中身はおじさん、外見は十二歳の美少女くのいち。
最強の「無職」による、戦国サバイバルが今、幕を開ける。
【第2話予告】
街道に出た百舌鳥と雷蔵。
最初に出会ったのは、小汚い山賊崩れの三人衆。
「おい、不思議ポケットから面白いもん出してみなよ」
「いいよ。……ただし、これを見た奴はタダじゃ済まないけどね」
伝説の武器、コルトマムシの原型が火を噴く……!?




