SF作家のアキバ事件簿242 ミユリのブログ ご主人様、強奪
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第242話「ミユリのブログ ヒロイン強奪」。さて、今回もアキバが未だ秋葉原だった頃のボーイミーツガールの物語です。
秋葉原の地下で"覚醒"した腐女子を狩る謎組織"南秋葉原条約機構(通称SATO)"の手に落ちたスーパーヒロイン。彼女を待つ過酷な運命とは。
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 失われた科学
薄明の万世橋。
「ミユリ姉様、何処へ行くの?」
「黙ってないでちゃんと説明してょ姉様」
「…コレを見て」
中央通りからルネサンス調の古い石段を降りると、神田リバーに面した船着場の跡と黒い鉄扉がアル。
「エアリ、マリレ。見てて」
ミユリさんが手をかざす。すると…黒鉄扉の表面に手のひらの形が白く浮き出る。まるで手形みたい。
「鉄扉が姉様に反応してる?」
「姉様…どーして?」
「私にもワカラナイわ」
ミユリさんが手形に手を合わせる。すると…重々しい音を立て"開かズの鉄扉"が左右に開いて逝く。
「中は真っ暗ょ。万世橋の地下へと続く階段がアルわ。その先には地下室がアルみたい」
「入ってみましょう。誰かライトを」
「…コ、コレは、ピラミッド?」
正確にはジグラートだ。古代メソポタミアの聖塔で天と地を結ぶ象徴として都市の中央に建てられる。
「ココは…地下神殿なの?」
「日本人とメソポタミア人は同じ祖先を持つという日メ同祖説ってアリだったのね」
「違うわ。ココは、超古代人類の"科学センター"ょ。中には放置された時空トンネルがアル。古の昔"リアルの裂け目"と呼ばれる時空航行プロジェクトの研究拠点だった。でも、時空航行の転送先の年代や回収の制御が困難で、実用化のメドが立たないママ放棄されてしまったの」
スラスラ解説するのは爆乳はぐれメイドのティス。
「まさか!ウソょこんなの…ミユリ姉様、私は信じないから!」
「待って、エアリ!」
「…マリレ。貴女は追いかけないの?」
飛び出したエアリを追うミユリさん。残されたマリレの耳元でささやくティス。因みに全員メイド服。
「マリレ。貴女は知りたいのでしょ?良いわ。私達の秘密を全部教えてあげる。だから、あの2人を説得して。私は味方だって」
ティスはスチームパンクなタブレットを差し出す。
「コレは何?」
「あら。貴女達、ミユリ姉様からは、何も聞いてないのね。このタブレットをミユリに見せて。そうすれば、彼女は全てを諦めるハズ」
「姉様が諦める?何を?」
ティスは答えズ、暗闇に目を凝らす。何処までも続く螺旋。アレが"時空トンネル"なのだろうか。マリレは、タブレットを手に外へと駆け出して逝く。
その瞬間…
「なぜメイド達をココに連れて来たの?」
空間がゆらめき、ナセラがテレポートしてくる。
「南秋葉原条約機構の"チーム6"が直ぐソコまで来てる。"ニュートリノ走査機"をハンバーガー屋に仕掛けたのは誰だと思う?私達の天敵レイカなのょ?」
「邪魔なら殺せば?どーせ今までだって大勢殺して来たのでしょ?」
「テリィたんがそう言ったの?私よりテリィたんの言うコトを信じるのね?私達は長い間、秋葉原の地下で生きて来た。家族も同然なのに」
ナセラは、ティスの顎に指を当て顔を上げさせる。
「アンタなんか私の家族じゃないわ!私の家族は、テリィたん達よっ」
「…そう。アンタの本心は、わかったわ。せいぜい仲良くすれば良いわ」
「そうスルけど」
プイとナセラに背中を向けるティス。その背中を指差して大声で怒鳴るナセラ。意外にヒステリー女w
「今後も私は必要なら人を殺す。何人でも殺すわ。レイカは恐ろしい女ょ。私がいないと、SATOの手から逃げるコトなど出来ないから」
振り向くティス。
「レイカって…そんなに怖い女なの?」
「冷酷で汚い女ょ。ミッションのためなら、どんな手段でも使うわ」
「そんな…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
記録画像が流れる小部屋。
「…マリレ、私達の記憶の底に情報が隠されているというのね」
「YES。ソレとテリィたんを経由して第三者からのメッセージを受信してるカモょ姉様」
「ナセラとか?」
ココで画像を止める。巻き戻す。
「…ナセラとか?」
画像を消す女。その横に"時空ビーコン"がある。
第2章 時空ビーコンのもつれ
昭和通りでキューベルワーゲンを路肩停車。後席のマリレがスチームパンクなタブレットを取り出す。
「姉様。このタブレットのコトを知ってたの?」
「ティスが"死ね死ねプラザ"の図書室で取り出すトコロを見たの。だけど…なぜ貴女がコレを?」
「ソンなコトはどーでも良いわ。なんで私達に秘密にしてたの?私達は…あっ」
突然タブレットが作動し画像が流れ出す。
「見たこともない文字だわ…ウソでしょ!これ私だわ。いいえ、ティスも含めた私達4人?」
「どうして私達の顔がわかってるの?」
「…私達は作られた?私達は"覚醒"したんじゃなくて、誰かに予め設計され、作られたってコト?」
ミユリさんの断言にエアリとマリレは息を飲む。
「姉様、マジで言ってるの?私達スーパーヒロインは、工業製品みたいに"生産"されてるとでも?」
「私は信じるわ。画像を見て。私とマリレは"百合"になるように作られてる。確かに、私達の未来は誰かに"設計"されてるわ」
「でも、私にはテリィ様が…」
狼狽えるミユリさん。今度はマリレが断言。
「姉様。このタブレットには、そうは描かれてはいない。コレがティスの言っていた"世界線"って奴ね。嫌だわ。私ったら、この世界線だと妊娠スルし」
「ティスが言ってた世界線とかシグナルとかって、全部このタブレットの画像のコトだったの?」
「きっと夢の中で現れた赤ちゃんのコトも…そうょ全ては"世界線"に描かれていたコトなのね」
ヤタラ赤ちゃん方面に話を振って自分の妊娠の正当化を図るマリレ。さすがにミユリさんが突っ込む。
「マリレ、何?貴女、妊娠したの?」
「待って、姉様。マリレは私達の子供を妊娠しているようなの」
「エアリ?…貴女達、いつからそんな仲に?」
ミユリさんは軽い目眩w
「姉様、違うのよ。私とエアリが同時に子供と一緒にいる夢を見ただけ。セックスしたワケではないの」
「でも、エアリは妊娠してるのでしょ?夢で妊娠はしないわ」
「するカモょ。私達自身、スーパーヒロインがどうやって妊娠するのか、そもそもセックスだってどうヤルのか誰も知らないし…わかってるのはスーパーヒロインである私の体内で、何か異変が起きてるってコトだけ」
必死なマリレを見て、エアリが1歩前に出る。
「わかったわ。私がティスに会って真相を確かめて来るから」
「ダメょエアリ。ティスは未だ信用出来ないわ。ナセラと同様、謎が多過ぎるし」
「姉様。でも、この状況から私達を助け出せるのもティスだけょ。よく考えてみて」
お腹をさするマリレを指差すエアリ。ミユリさんは暫し考えをめぐらしてから、大きな溜め息をつく。
「わかったわ。私は万世橋地下の"時空トンネル"に戻るわ。そのタブレットを見る限りでは、私はテリィ様と結ばれないように見える。ティスと話すべきなのは私ょ」
「姉様、さっきティスは信用出来ないって言ったじゃないの!」
「モチロン信じてナイわ」
エアリは小首を傾げる。
「だったらどうして?」
「妊娠がマジかを聞き出すだけょ。マリレ、貴女のカラダが心配なの」
「姉様…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼下がりのマチガイダ。カウンター席で納豆ドッグをパクつくティスに背後から近づくミユリさん。
「姉様が来てくれたのね」
振り向きもしないティス。
「まぁ来るとすれば姉様だとは思ってたけど」
「マリレへの伝言を聞いて会いに来たわ」
「私を信じる気になった?」
やっと振り向いたティスに、スチームパンク風のタブレットを見せるミユリさん。画像は消えている。
「このタブレットに流れた動画の内容を全て教えて欲しいの」
「ホンキなのね?」
「YES。覚悟を決めて来たわ。やっと」
ティスは微笑む。
「場所を変えましょう…テリィたんも呼んで。その方が話が早いわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署。ラギィ警部のオフィスの扉が開き、ファイルを抱えた部下がバタバタと入って来る。
「警部、ありましたょ頼まれてた資料です!」
「何か変わった点は?」
「別に。ナセラ・ハデグ。官邸に出入りしてる民間コンサルタント。離婚して娘が1人」
扉がノックされ刑事が現れる。因みに、刑事達もメイド服だ。ナンと逝ってもココはアキバだからね。
「ラギィ警部?」
「あら。どなた?」
「今日から配属になった新人のフィツ・シャアです。乙女ロード署から配属されて来ました」
ラギィは怪訝な顔だ。増員?
「警部、職員の増員願いを出されましたよね?」
「えぇ確かに出したけど、半年も前に予算がないと断られたばかりょ」
「きっと予算が出たんでしょう。良かったですね」
快活に笑うフィツ。
「フィツ君。あいにくだけど、人手はもう足りてるの。乙女ロードに戻ってくれる?」
「警部。お言葉を返すようですが、正式に辞令が出てますし、なによりアパートの敷金をもう払い込んでしまったのです」
「OK。続きは後で話しましょ」
肩をスボめてウンザリ顔のラギィ。
「私の任務は何ですか?何でもやりますょ!」
「…最近コーヒーメーカーが臭いの。魔法瓶を洗っておいてくれる?」
「…はい。喜んで」
オフィスを出て逝くフィツ。入れ違いに入って来たメイド刑事に声を潜め、小声で指示を出すラギィ。
「乙女ロード署に連絡して、奴の身元を確認して」
「はい、警部。直ちに」
「どんな細かいコトでも構わない。全て報告して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「エアリ。私、なんだか怖いの」
御屋敷のバックヤード。
「とにかく、待つしかナイのょマリレ」
「ティスは、私達の敵なの?味方なの?」
「ミユリ姉様が聞きに行ってる。直ぐにワカルわ。それまで、私達2人でいましょ」
エアリは身重?のマリレを気遣う。
「私達って…エアリと私は姉妹なの?それとも生物的に合致したパートナー?」
「マリレ。あの夢がどうしても忘れられないのね」
「だって、エアリもスゴい幸せそうな笑顔で…あんな笑顔、私は初めて見たし」
扉が開きスピアが入って来るが2人は気づかない。
「えぇ確かに最高に幸せだったわ」
「あの夢の通りになりたいの?」
「うーんソレはどーかな。だって、もしそうなったら、スピアとはどうなるの?」
その言葉に凍りつくスピア。聞き耳を立てる。
「とにかく、今はお腹の子の方が大事ょ。マリレも1人で思い悩むのはヤメて」
「そうね。そうょね」
「お腹の中の子は、私の子でもあるのだし」
見つめ合う2人。ドン底に突き落とされるスピア。
「何もかもが昨日までとは違うのね。心配だわ」
「大丈夫ょ。私達はどこまでも一緒だから」
「マリレ…」
手を重ねる2人。スピアは回れ右でその場を去る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昭和通り。コインパーキングにコインを入れるナセラ。振り向くと…黒いメイド服が物陰に身を隠す。
「アレで尾行のつもり?メイド服が目立ち過ぎょ」
そーゆーナセラもロングのメイド服。追う者も追われる者もメイドだ。何しろココはアキバだからね。
「遊んであげる。最後だものね」
物陰に向かって微笑み歩き出すナセラ。口笛を吹きながら横丁を曲がる。黒メイドは慌てて後を追う。
「消えた?どこに行ったの?」
黒メイドが振り向いた瞬間、目の前にナセラが現れる。驚く間もなく胸の谷間に掌が推しつけられる。
「SATOの牝犬。レイカに伝言ょ」
黒メイドの目が恐怖に見開かれる。次の瞬間ナセラの掌が超高熱を発する。束の間、苦悶に顔を歪めた黒メイドだが、目は光を失い、地面に崩れ落ちる。
彼女を見下ろし冷酷に微笑むナセラ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏アキバに広がる万貫森。僕達は黄色い銀杏の葉を踏んで、森の奥へと歩いて逝く。先頭はティスだ。
「ミユリ姉様にテリィたん(順番が逆だw)、私の正体がわかった時は驚いたでしょ?」
「今までナセラの気配には気づいてたけど…で、ナセラとは何処で一緒になったの?」
「私が"リアルの裂け目"から出た後、ずっと面倒を見てくれてたわ」
ソレはいつ?
「ナセラは君のママなのか?」
「ママ?ソレは違うわ。ってか、そもそもスーパーヒロインの母ってオカシクない?ウルトラじゃナイし?」
「じゃナセラは何者だ?」
ティスは両肩をスボめる。フランス人かょw
「わからないわ。彼女は引っ越しをする度に違う人間に変身スルの」
「なんで?」
「SATOに捕まらズに私達が生き延びるため」
簡潔明瞭な答えだw
「ナセラは、なぜ変身できルンだ?」
「私達と違って、彼女は人間のカラダを持っていないからよ。彼女は…音波。振動みたいなモノ。そして"死の艦隊"の生き残り。ホントの姿を持ってナイので、ホントの姿を隠すために、いくらでも変身出来るの」
「(あら。何を話してるのか一気にワカラナクなったわ)ホントの姿って?今、彼女は音波人間だみたいなコトを…」
いきなり話を終わらせるティス。
「とにかく!ホントの姿は私も見たコトがナイの。私にもスキを見せないンだモノ」
「そう…辛い逃避行だったのね」
「孤独だった。何しろナセラは人間的な部分が皆無だったから」
寂しげな横顔を見せるティス。チャンス。
「あのスチームパンクなタブレットには、僕達4人の画像が流れてたけど、内容的にどういう意味なのかな?」
「見ての通りょ。秋葉原に行けば"覚醒"した仲間に会える。でも、ソレももうどーでも良いの。こうして…フィアンセと会えたから」
「フィアンセですって?!」
怒髪天を突くミユリさん…おや?電光が走らない?
「ミユリ姉様。ココまで話せば少しは察してょ。貴女はもうわかってるハズ」
「ちょっち待って」
「ティス…僕が君に惹かれるのはナゼだ?未だ会ったばかりなのに」
僕とミユリさんはそれぞれ異議を挟む。
「2人同時に喋らないで…私とテリィたんは許婚同士なの。そのコトも、私とみんなが会う前から決まっていたコトなの。テリィたん、貴方はしょっちゅう妄想してるわね」
「余計なお世話だ」
「私との妄想セックスは楽しかった?」
その言葉にミユリさんは顔面蒼白だ。檄ヤバ。
「いいや。そもそも、僕はセックスは嫌いナンだ。ソンなコトよりヒョットして、君達スーパーヒロインは妄想の中で出会ったら、ソレがセックスの代替行為になるのか?」
爆笑するティス。
「何ソレ?妄想したら妊娠しちゃうの?あり得ないわ。セックスは人間と同じ方法よ。妄想は、スーパーヒロインの本能を目覚めさせ、何をすべきかを教えてくれる。でも、ソレだけ。納得した?」
「なんとなく(クリスタル)…あ、ミユリさん!」
「テリィ様。私ったら…」
ミユリさんの氷の視線が僕を貫く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り。ミユリさんはスゴい勢いで歩いてる。泣いてはいないが、涙が風に飛んでる。ソコへ…
「ミユリさん。ついて来い」
「テリィ様?どうしたの?」
「詳しいコトは後で話す。だから、行こう」
強引にミユリさんの手首を掴むのは…僕だ。自分で逝うのもナンだが強引過ぎナイか。僕らしくナイ。
「でも、私は今からシフトです」
「大事なコトなんだ。頼むょメイド長」
「…では、少しだけ。スピアに話して来ます」
ミユリさんは、マンザラでもナイ顔をスル。いや、逆に何かを期待してるかのような表情を浮かべる。
「待てょ。僕達の行動を何もかも報告スル必要は無い。たまには2人きりの秘密を持たないか」
「…え。OK!モチロンですぅ」
「行くぞ」
2人は手をつなぎ路駐してるGAZ67Bに乗り込み発車スル。入れ違いにケッテンクラートが停車スル。
「…OK。少し考えてみるよ、ティス」
「テリィたん、時間をあげるわ。私は答えを待ってるから」
「じゃ」
コッチも僕?ティスはケッテンクラートから降車。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
首都高をトバすGAZ76B。
「ロシア版のフィールドカーですか?テリィ様、この車はどうしたの?」
「ケッテンクラートは修理に出したンだ。コレは代車だょ」
「そう。で、どこへ逝くの?」
「秘密さ」
"僕"の答えに楽しげに微笑むミユリさん。
「…わかったわ。じゃ教えて」
「何を?」
「あら。さっき大事なコトを後で話すって、テリィ様は言ったでしょ?」
明らかに何かを期待して僕を見上げるミユリさん。恋する乙女ビームを僕に照射して微笑んでみせる。
「誰にも僕達2人を邪魔させないよ…誰にもだ」
「逝いたいコトはソレだけdeathか?」
「え。うわっ」
突然、僕の首筋にキスするミユリさん。
「おい!車を運転できないよ」
「じゃ停めれば?」
「おいおい…」
側道に入るや安全ベルトを外して、のしかかるミユリさん。その瞬間、フラッシュバック!唇を離す。
「どーした?」
「別に」
「ミユリさん…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のランチどき。デシャップカウンターのウィンドウからキッチンのマリレに声をかけるスピア。
「ねぇちょっと良いかしら?あるコトを耳に挟んだモンだから、確かめたいんだけど!マリレのやったコトって人間の常識を超えてる。そんなあり得ないコトをしたのはスーパーヒロインだから?アンタって最低」
「な、何。ハッキリ言ってょ」
「赤ちゃんのコトだけど」
瞬時にキッチンに引っ込むマリレ。
「答えられないわ」
「逃げないで。ちゃんと説明してょ」
「違うのょ」
スピアはキッチンに乗り込む。
「違うって何が?貴女、エアリとは姉妹みたいな関係なんでしょ?…アンタ、エアリと寝たの?」
「寝てナイ。一緒に夢を見ただけ」
「夢を見た?じゃ何で赤ちゃんが出来るのょ?」
仁王立ちのスピアは一歩も引かない。
「さぁね」
「さぁねって何ょ!トボけるの?」
「わからないんだから、仕方ナイでしょ?何をどう考えたら良いのか。自分のエアリへの気持ちもわからないのょ!」
スーパーヒロインは心情を吐露。
「エアリへの気持ちって…貴女、マジでエアリにガチ恋してるとでも言うの?」
「わからない。ただ、わかってるのは、私と貴女との"くだらない百合"とは違うってコト。とにかく!今は、エアリのコトで頭がいっぱいなの」
「…わかったわ。もう結構ょ!」
スピアは、涙目になりキッチンを飛び出して逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。御屋敷のバックヤード。
「聞いたょエアリ。妊娠してルンだって?」
「だ、だ、だ、誰に聞いたの?」
「ティスからスチームパンクなタブレットの話を聞いた。エアリの身に何があったとしても、僕は君の力になるからね、いや、力になりたいンだ」
警戒を解かないエアリ。
「相談してもテリィたんにはワカラナイわ」
「で、産むの?」
「テリィたんには関係がナイ事ょ」
食い下がる僕。
「だって、エアリ」
「もうヤメて。コレはテリィたんの童話に出て来るような妖精の妊娠とはワケが違うの。私達は"覚醒"したスーパーヒロインなのょ?」
「ソレぐらいわかってるさ。エアリがセフレになると決めた時から、いつか想像を絶するコトが起きるって覚悟を決めてルンだ」
僕は正面からエアリを見据える。
「前に僕のセフレになりたいと逝ったよね。その気持ちにウソはなかったんだろ?」
「モチロンょガチだった」
「じゃコレだけは覚えておいてくれ。僕は、いつでも力になるよ」
コチラの現場でも女子は涙目だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋。フィツは、夜半のオフィスで書類ロッカーの前にかがみ込み何か漁っている。ソコヘラギィw
「ソコで何してるの?」
ラギィは、ロッカーの引出しを蹴飛ばし、音を立てて引出しは締まる。慌てて手を引っ込めるフィツ。
「ラギィ警部!私は資料の整理を…」
「全て個人情報ょ」
「私は、単に色分けして整理してただけです」
広げた5本指には色とりどりの付箋。ソレを見てラギィは納得したが、念のためロッカーを開け、中のファイルを確認スル。その間もフィツは直立不動。
「貴女は、頑張り屋だと乙女ロード署の元上司も言ってたわ。でもね。ココでは言われたコトだけをやってれば良いの。でしゃばらズに」
「わかりました。私が警部に歓迎されてないコトはわかっていますが、期待に添えるよう頑張ります」
「あら。貴女には何も期待してないわ」
ソッケないラギィ。が、意外な答えが返ってくる。
「ママにもそう言われました」
「それがどうしたの?」
「ママも警部だったんです」
読み始めた書類から顔を上げるラギィ。
「警部?どこで?」
「湾岸ピッグサイト署です」
「ピッグサイトか。あそこは政府の国際カジノが出来たから大変だわ」
話が弾む…が、ますます展開は意外な方向へ。
「そのママも殉職しましたが」
「ソレは…ヲ気の毒に」
「ママは、よく言ってたわ。貴女に期待などしてないわ、って。でも、実は生きる手本を見せてくれてたんです。つまり"信念に生きろ"と」
心が重くなるラギィ。力なくうなずく。
「貴女は、よく働くわね。コーヒーポットはすっかりキレイになってたわ。次は覆面パトカーを洗っておいて」
「大至急取り掛かります」
「頼むわ」
ラギィが投げたキーを受け取り足早にオフィスを出て逝くフィツ。その背中を見送りつぶやくラギィ。
「"貴女に期待などしてないわ"か…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダ・サンドウィッチズ。マリレがボンヤリしていると、エアリがカップ片手に現れ差し出す。
「ねぇカルシウムょ」
「ミルク?やっぱりこんなの変よ」
「…確かに」
唇を噛むマリレ。
「でも、マリレのカラダに良いコトに変わりはナイし。ソレに…あら、テリィたん?」
「2人とも安心しろ。マリレは妊娠してない」
「え。マジ?」
飛び込んで来た僕の爆弾?発言。反応は…サマザマだ。ズカズカ2人の間に割って入って力説スル僕。
「いくらスーパーヒロインだって、夢を見て妊娠ナンてあり得ない。でなきゃミユリさんは年中僕を夢見て妊娠さ」
「ソレ自信を通過して傲慢。でも、通常のセックスがないと私達は妊娠はしないのね?あの"秋の大三角形"は何なの?」
「あの星の配置は、君達スーパーヒロインの"種の保存本能"を目覚めさせるサインだ。そして、夢は君達を世界線へと導く…エアリ、うれしくないのか?」
妖精の反応は微妙だ。
「え。…うれしいわ。モチロン」
「私はホッとしたわ。でも、結局あのタブレットに流れた動画どおり、私達は、この世界線ではそれぞれカップルになるってコト?」
「いいや。"推し"を選ぶフリーハンドは、あくまでヲタクにアル。大事な"推し"を動画にナンか決められてタマるか」
僕はキッパリ宣言。
「(そのドヤ顔何なの?)…とにかく、一見落着ね。私、スピアに知らせてこなくちゃ」
マリレは飛び出して逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷。ホールでお給仕中のスピアに告げるマリレ。
「妊娠は幻覚だったの」
「だから…何なの?」
「あの…私、謝ってルンだけど」
聞く耳を持たないスピア。
「あらそう」
「…あのね。さっきは"くだらない百合"なんて言ってごめん。アレはガチじゃなかったの」
「Miss too late。どうせ私達は"くだらない百合"ナンでしょ?」
痴話喧嘩の真っ最中に飛び込む僕w
「えっと…メイド長は御屋敷をほったらかして何処へ?一応、僕はヲーナーなんだけど」
「え。今朝から会ってナイわ」
「何言ってんの?1時間前にミユリ姉様を連れ出したくせに。朝からシフトだったのょ?」
軽いパニック。
「おいおいおい。僕は御帰宅してナイぞ」
「じゃ誰が姉様を連れ出したの?」
「何眠たいコト言ってんの?テリィたんでしょ?」
僕達は顔を見合わせる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
GAZ67Bで首都高をドライブ中のミユリさん。
「ねぇ一体どこまで逝くつもりなの?」
「君はどこまで行きたいんだ?」
「…そろそろお屋敷に戻らなきゃ」
クールな答えにこんな僕も素敵と思うミユリさん。
「そんなのどうだっていいさ」
「テリィ様。ティスに何かされたの?」
「…ソレもどうでもいいな」
車を路肩に止める"僕"。その時ミユリさんのスマホが鳴動スル。電話番号を知ってるのは僕だけだ。
「テリィ様?」
「ミユリさん!僕だ」
「誰?」
探りを入れてくるミユリさん。
「テリィだ。今、ミユリさんと一緒にいるのは僕じゃないぞ」
バックミラーに写る"僕"がミユリさんを睨みつけてる。その"僕"はトランクから黒メイドの死体を出し地面を引きずって移動中だ。鬼気迫る光景だw
「ミユリさん!返事をしてくれ。今、いったい何処にいるんだ?」
"僕"は、ミユリさんからスマホを取り上げて、通話を切る。彼の足元には、胸の谷間に高熱で焼けた痕のある黒メイドの死体。ニヤリと微笑む"僕"。
「バレたか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中のパーツ通りを逝く4人。
「ナセラがミユリさんを誘拐しただナンて」
「急いで探さなきゃ…でも、どうやって?」
「ラギィに相談しよう」
メイド達(スピア❌エアリ❌マリレ)は大反対だ。
「何て説明スルつもり?実は、テリィたんは双子で、もう1人のテリィたんは悪党だったって?ソンなの誰も信じないわ」
「じゃ何て逝うんだ?とにかく!ミユリさんの命を守るのが最優先だ。そのためには、万世橋に頼るしかない。警察なら緊急配備も指名手配も出来るぞ」
「"覚醒"したスーパーヒロインの秘密を全部知られちゃっても良いの?」
エアリ❌マリレのヒロインコンビはブー垂れる。
「構うモンか」←
「そんなコト、テリィたん1人の判断で決めナイで。ルール違反ょ」
「そーよ。勝手過ぎるわ」
あぁ女って面倒臭いなー。
「じゃ多数決で決める?」
「そーよ、多数決だわ。テリィたんだって勝手にトポラに会いに行ったでしょ?そもそも、誰にも話さないってルールを破ったのは誰なの?」
「ミユリさんの命が危ないんだ。ルールなんか後回しさ。こうなったのも、元はと言えばヒロインのせいだ!」
マズい。だんだん僕も早口になってくる。ココで、今のところ比較的冷静だったスピアが口を挟む。
「待ってょみんな。ラギィ警部には、わざわざナセラの話なんかスル必要はナイんじゃナイ?単に、テリィたんがミユリ姉様を拉致ったって話にすれば?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「何?テリィたんがミユリ姉様を拉致った?」
万世橋。敏腕警部は椅子から飛び上がる。
「まさか…テリィたんが姉様を?あの2人、実はウマくいってナカッタのかしら(少しウキウキ)」
「YES。最初は姉様も喜んでたけど…姉様から電話
があったの。テリィたんの様子が変だって。スゴく怯えていたわ。テリィたんが秋葉原に帰してくれないンだって」
「もうまるで誘拐ょね。姉様の身に何か良くないコトが起こりそうな、嫌な予感がスルわ」
騒ぎ立てるエアリ❌マリレ。考え込むラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あ、南秋葉原条約機構か?レイカ最高司令官と代われ…え。ソンな女はいない?まぁ良いや。首都高380の標識の下に手がかりが落ちてると伝えろ」
一方的に通話を切る"僕"。息を飲むミユリさん。
「私も殺すの?」
「まさか。まだ十分に利用価値がアル」
「… 何でテリィ様に変身したの?」
"僕"は、ミユリさんを見てニヤリと笑う。
「気に入ってルンだ。ヲタクのカラダは最高。アンタみたいな美人にキスしてもらえるし…今まで色んな奴に変身してきたが、テリィたんの役が最も重要だし」
「ナゼ?」
「テリィたんは囮だ。言うならば、レイカを誘き寄せるためのエサ」
慎重に問いを重ねるミユリさん。
「じゃ私は何なの?」
「私の命を守るための人質」
「謎組織のSATOは、私も一緒に殺すわ。腐女子の命ナンか何とも思っちゃいないンだモノ」
クスリと笑うナセラ。
「ソレはどうかな…とにかく!アンタのコトは、奴等は生きたママ調べたいハズだ。コレほど都合の良い人質が他にいるかな」
「私を切り刻んで人体実験スルつもり?」
「さぁな。とにかく、アンタはドライブのお供としては最高だ」
乾いた声でケラケラ笑う。
「さ、ソロソロ次の手がかりを残すとスルか」
首都高の水素ステーションに立ち寄る。完全自動化されて無人だ。降車した"僕"は、無造作にメーターに手を当てる。たちまち熱を帯び煙が噴き出る。
「ヲ楽しみはコレからだ」
「何をスルつもり?」
「it's SHOWTIME, folks!」
溜め息をつくミユリさん。GAZ76Bを発車させるナセラ。アチコチから煙が噴き出し、次の瞬間、ヒルズの谷間を走る首都高で大爆発。キノコ雲が発生。
熱波と爆風がGAZ76Bを追い越して逝く。
第3章 水素ステーション炎上
真夜中のパーツ通り。ティスが歩いていると横からマリレが飛び出して来て腕を組む。ティスは驚愕w
「マリレ?な、何なの?」
「説明して」
「何のコト?」
傍目には、メイド2人が仲良く腕を組んで歩いてるように見えるが事態は切迫している。真夜中だしw
「ナセラがミユリ姉様を拉致したのはナゼ?」
「知らないわ」
「いいえ。貴女は知ってるハズょ。信用しろと言うなら私達に隠しゴトをしないで」
迫るマリレ。だが、ティスは頑強に否定スル。
「知らないモノは話せないし」
「万世橋も動き出した。このママだと全てが明るみに出るわ」
「だ・か・ら。何のコト?」
マリレは腕を組んだティスを路駐中のSASジープの助手席に推し込む。運転はエアリ。後部座席に僕。
「最初から全て話してもらうわ」
「…あのね。私達の"敵"、貴女達が謎組織と呼んでるSATOは、とても強力なの。ソレはわかってるの?」
「そこら辺を貴女の口から聞かせてもらうわ」
うなずくエアリ。溜め息をつくティス。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「わかったわ。また何かあったら教えて」
オフィスでスマホを切るラギィ。新入り刑事のフィツが顔をのぞかせる。彼女はメイド服…(以下略)
「ラギィ警部。首都高の水素ステーションが若い男女が立ち去った直後に大爆発し、メーターの上には銀色の手形が残っていたそうです。まもなく、防犯カメラの画像が届きます。爆発の直前までですが…現場に行きますか?」
「現場は?」
「首都高上野線380の近くです」
フィツはジャンパーを着て駐車場までついてくる。
「私もお供しましょうか」
「いいえ。貴女は署に残ってて」
「…わかりました」
覆面パトカーに乗り込むラギィ。ドアを閉めるフィツ。
「2人の画像が届いたら顔を確認しておいて」
「ROG」
「お願いね」
FPCはサイレンを鳴らしふれあい通りを走り去る。入れ違いに横丁から猛スピードで飛び出したのは…
「ねぇねぇねぇ!どーゆー運転をしてるの?スピード違反ょ。何か急用でもあるの?」
「いいえ、別に…すみませんでした」
「ってか何人乗ってるの?ちょっと懲らしめが必要のようね」
ポシェットから端末を取り出すフィツ。どーやら僕の出番らしい。おもむろに後部座席から顔を出す。
「マジでスミマセン。昨夜"メンフィスベル"を見ていたモノで」
「え。アレは確かに名作だわ…わかった。今回は見逃して、ア・ゲ・ル。でも、次は容赦しないから」
「ありがとう、おまわりさん!ご恩は一生忘れません」
フィツは微笑むが目は笑ってナイ。走り去る僕達を見届けてからオフィスに戻ると画像が届いている。
「ふふふ」
バッチリ"僕"が写ってる。不気味に微笑むフィツ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。"僕"とミユリさんは、裏アキバにある24時間営業の"時空遊園地"にいる。ピエロの笑い声が響き、3つ首の「キングギドラの娘」の見世物(コスプレとしてギリギリ許されてるようだが明らかに差別的だw)が口をきく…
「さぁみなさん!テレキネシスのテストだょ!」
ピエロが3つのカップのどれかに胡桃の実を入れシャッフル。カウンターに頬杖ついて見てる"僕"。
「さぁ当ててみろ…当てルンだ」
ミユリさんに静かに命令スル"僕"。ミユリさんは"僕"をチラ見してから1番右のカップを指差す。ピエロがカップを開けるが胡桃の実は入ってない。
「貴女には見えてナイの?…ふーんTOに浮気された"推し"が"覚醒"した超能力を喪失スルというのはホントだったのね」
「悪かったわね…コレからどーするつもり?」
「レイカが出て来るのを待つわ」
横で売っていたピンク色の綿飴を買う"僕"。
「レイカ(誰?)が来たら私は、もう用済みでしょ?急いで私を解放して。でないと、私のTOがココに来て私の超能力は復活、次の瞬間、貴女は真っ黒焦げだけど」
「なんで貴女のTOがココに来るの?」
「"推し"が心配だからよ。貴女にはヲタクのそーゆー行動原理がワカラナイの?」
"僕"の綿飴を食べる手がピタリと止まる。
「貴女、ヲタクを心配したコトあるの?」
「心配なのはスーパーヒロインだけ。取り巻きのヲタクに興味はナイわ」
「貴女みたいな人はアキバに来ないで」
"僕"は手にした綿飴をジッと見る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜の首都高上野線380付近の路肩。黒メイド達が同じ黒いメイド服を着た死体に白い布をかけている。
「どうしたの?何ゴト?」
非常線の外でサイレンを止めたFPCから降り立つラギィ。その前に、黒メイド達が無言で立ち塞がる。
「貴女の出る幕じゃありませんよ、警部」
黒メイド達のライトで照らし出されるラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。夜の首都高を疾駆スルSASジープ。
「テリィたん。自分自身の世界線から目を背けないで。私とテリィたんの結婚は、最初から設計されているの。いくらテリィたんが嫌でも、世界線に組み込まれた結婚から逃げるコトは出来ナイわ」
「結婚?何だソレ?美味しいのか?とにかく!今はミユリさんの救出が最優先だ」
「あのね。ミユリ姉様は"覚醒"したスーパーヒロインなの。もう貴女の推しじゃない」
おいおいおい。ドルヲタをナメんな。
「ティス。"推し"じゃないのは君の方だ」
「え。…マリレ、貴女もそう思っているの?」
「…」
「エアリ。貴女は?」
「…」
メイド2人は目を背け残された1人は溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまた同時刻。黒メイドの死体遺棄現場では、立ち塞がる黒メイド相手にラギィ警部がスゴんでるw
「ココは万世橋の管轄よ。事情を聞かせて。所轄には知る権利がある」
「警部。残念だが、コレはアキバ特別区の大統領府直轄の重大事件なの。所轄どころか警察が首を突っ込んで良い案件ではないし」
「何を眠たいコトを!」
その真横を僕達を乗せたSASジープが通り過ぎる。
「待て。今のメイド服はミユリさんじゃナイのか?少し黒かったけど」
「ダメ!このママ止まっちゃダメ!あそこにミユリはいないわ。あの黒メイド達はSATOの特殊部隊よ。通り過ぎて!」
「え。メイドの特殊部隊?」
ちょっち萌えかけたけど…通過w
「どうしてわかルンだ?」
「テリィたん。私とナセラは、私が生まれてからずっと黒メイド達から逃げ回って生きてきた。もう匂いでワカルわ」
「マジか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほとんど同時刻。時空遊園地ではミユリさんが"僕"を相手に一歩も引かない。さすが僕の"推し"。
「テリィ様とティスが結婚…そんなのウソょ!」
「ミユリ。悪いけど、この世界線では事実なの。テリィたんとティスは結婚スル設計になってる」
「設計?何ソレ?美味しいの?テリィ様の"運命の推し"は私よ?私もテリィ様に推されて生まれ変わった。テリィ様と私は、ヲタとアイドルと逝う赤い糸で結ばれているの!」
ミユリさんの魂の叫びを鼻で笑う"僕"。その時、インバウンドのヲバさんが素っ頓狂な声を上げる。
「みーんなウソっぱちょ!時空トラベルなんて出来るハズないわ!」
すると、ニヤリと笑う"僕"。
「ふーん。あのヲバさん、少し教育してあげなきゃ…レイカに最後の手がかりを残すとするか」
"僕"は、インバウンドのヲバさんの方を向き、何ゴトかをつぶやく。次の瞬間"光の柱"がヲバさんを包み込み、ヲバさんは目を見開き悲鳴を上げる。
「何なの?きゃー」
天頂目掛け"光の柱"が立ち、ヲバさんの悲鳴は絶叫に変わる。コッソリ後退り逃走するミユリさん。
「あ。あの渦巻きは…」
ミユリさんが見上げる夜空に"光の柱"が立つ。雲に反射して写し出されるマークは…"時空ビーコン"に描かれた象形文字の"渦巻き"だ。
「え。その渦巻きは…」
首都高上野線380から夜空を見上げ絶句するラギィ警部。同じく振り向き夜空を見上げる黒メイド達。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あの渦巻きサインは、ナセラからの合図だわ。ナセラがレイカを誘き出してる」
「ソンなコトより、ミユリさんは?何でレイカ(誰?)を誘き出すンだょ?」
「殺すためよ」
おいおい、物騒だな。コレはジュブナイルだぞ。
「とにかく、ミユリさんは、あの渦巻きサインの下にいる。エアリ、急ごう。裏アキバだ」
「ダメ!私達はレイカに捕まったら殺されるわょ」
「とにかく!レイカ(誰?)よりも先にミユリさんを助け出スンだ」
あくまで制止するティス。
「ねぇソレはナセラに任せておけば?」
「何を眠たいコトを…ナセラなんかに任せておけるものか。僕の"推し"だぞ」
「テリィたん…そんなにミユリさんが好きなの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
メリーゴーランドに逃げ込んだミユリさんは、カボチャの馬車に身を隠して回転していたが、フト気づくと直ぐ後ろの馬に"僕"が跨り追いかけて?来るw
「逃げなきゃ」
一時的に超能力が消えたミユリさんは、ひとまず逃げるしかない。回転木馬から飛び降りゴロゴロ地面に転がり目についたミラーハウスに飛び込む。回転木馬をムダに1周した"僕"が、その後を追う。1足違いで現れたラギィは、一瞬"僕"と目が合う。
「ミユリさん!テリィたん!」
名を呼ぶ順番が逆だけど、とにかく助け舟になりそうな僕の元カノは、腰の拳銃に手をかけミラーハウスに飛び込む。鏡ばかりの空間で方向感覚を失いながら、正面から歩いて来るミユリさんを発見。しかし、ソレは何処かの鏡に写った鏡像なのだ。
「ミユリさん!何処にいるの?テリィたんも」
だから、名を呼ぶ順番が逆だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ようやく僕達のSASジープも時空遊園地に到着。
「光はココから出てた。全員で手分けして、先ずラギィを探そう。ソコにミユリさんもいるハズだ」
「…うわーいミラーハウスだ。入りたーい」
「お化け屋敷、意外と見かけ倒しだったなー」
僕の指示は、ナイト客のザワメキに埋もれて誰も聞いてナイ。徒手空拳でミラーハウスに飛び込む僕。
「やぁテリィ。遅かったな」
いきなり、僕の真横に現れる"僕"。ニヤリと笑うが僕ってこんなにニヒルだったか?とにかく、ソレは鏡像だ。続いて真正面にミユリさんが現れる。僕に手を伸ばすが、その手は明後日の方に伸びてるw
「テリィ。コッチだ」
鏡の迷宮の中で角を曲がると出会い頭にぶつかったのは…またもや"僕"だ。いや、リアルなニセ僕w
「テリィ、邪魔だ。早く逃げろ」
「ヲタクに命令するな。ミユリさんは何処だ?」
「落ち着け。あくまで南秋葉原条約機構のターゲットは私だ」
甘々ナンだょその認識w
「違う。SATOが狙ってるのは、僕達全員だ。とにかく!僕はミユリさんを助けるからな」
「頼むから消えてくれ。アマチュアにウロチョロされると仕事がヤリ辛い」
「テリィ様!」
その時マジ目の前にミユリさんが飛び出して来る。僕はニセ僕に思い切り肩をぶつけ"推し"の名を呼びながら駆け出して…透明なガラス壁に激突スルw
「ミユリさん!」
目の前の透明ガラスが2人を隔ててる。ココはガラス越しにキスするトコロだが、いまいち気がノらない。何しろ目の前にニセ僕がいて気持ちが萎えるw
「せっかくの良いシーンなのに!」
だが、悪いコトばかりは続かない。周囲を見回すとニセ僕の姿は消え、透明ガラスは裏へ回り込める。
「ココから出るんだ」
「1人じゃ嫌です」
「もう君を離さない」
ミユリさんの手に手を重ねる。
「テリィ様、後ろ!」
黒メイドが何人も現れ、ヤタラと銃口がラッパ型に開いてるオカシな拳銃を僕達に向ける。その時…
「万世橋警察ょ!銃を置きなさい!」
今度は反対側から現れたラギィが、コレまた明後日の方向に南部14年式の銃口を向けてる。そして…
「ミユリ姉様にテリィたん、伏せて!」
またまた名を呼ぶ順番が逆だが、伏せるのをロクに確認もせズにラギィは発砲!ミラーハウスに何発も銃声が響いて、鏡が何枚も割れて破片が飛び散る。
「ラギィ警部!私ですよ。ピルツ・フィツ!配属が秋葉原と聞いたので、メイド服に着替えて来ましたが、黒ではなく翠のメイド服です。撃たないで!」
またまた新しいメイド服の登場だ。コレでラギィがメイド服なら全員がメイドで萌え萌えキュンだが。
「ぎやっ!」
ソンなヲタクとしては実に健全な妄想をした僕は左右から黒メイドに腕を掴まれ鏡に押し付けられる。
「ミユリ、コッチだ!」
その現場にリアルにはあり得ない颯爽ぶりっ子で現れる"僕"。ちゃっかりミユリさんと手をつなぐ。
「行こう」
「…テリィ、様?」
「光ょあれ。走れ、ミユリ!」
ミラーハウスの途中に何ヶ所かあるリタイア口から月光が溢れる外界へと飛び出す2人。メリーゴーランドの横を通り抜けスクールバスの中に逃げ込む。
「キス、失礼します!テリィ様」
ヤタラとキスを急ぐミユリさん。その瞬間、彼女の脳内でフラッシュバックが起きて…慌てて唇を離すミユリさん。目を見開き、ジリジリと後退りスル。
「貴方、テリィ様じゃナイわ」
「あぁ違うとも。だが、奴を取り戻さねばな。奴は色々知り過ぎた。SATOでベラベラ喋られちゃ困る」
「殺すつもり?もし、貴方がテリィ様を殺したら、私が貴方を殺すから」
"僕"はソレには答えズ手をかざす。その瞬間、スクールバスは光に包まれ…ピエロメイドが現れる。
「ふふふ」
僕の名を呼びながら、外に飛び出したミユリさんだがピエロを見失う。遊園地に不敵な笑い声が響く…
「姉様!ミユリ姉様、大丈夫?」
ミユリさんを見つけたのはエアリ。とりあえずハグ。
「いったい何があったの?」
「テリィ様が捕まったわ。テリィ様が捕まった」
「まさか…」
大声で泣き崩れるミユリさん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
白い部屋。全面クッションの壁。白色照明。僕は壁のアチコチを叩く。その様子を画像で確認スル女。
「実験はいつから始めますか?」
「明日の朝ね。それまでは眠らせておいて」
「了解です。レイカ司令官」
ハアハアと肩で息しながらペタンと腰を落とすリアル僕。すみっこの壁沿いに膝を抱えてうずくまる。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"敵の手に落ちたヒロイン"をモチーフに描いてみました。時間が経つのも忘れて筆が進み楽しみながら脱稿。やはり紅一点隊員のピンチは永遠の課題だなと思った次第です。
さらに、主人公とヒロインの恋愛の行方に、バイプレイヤー同士の恋愛(百合)を同時並行的に描く手法などの習作ともなっています。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、中国系インバウンドが消えた分をアジアンインバウンドがすっかり補強した秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




