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こだわりというか、わだかまりというか  作者: 白山月


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セントウル・ターフィーの矛盾

一条哲也は、デスクで熱心にネット検索をしていた。 検索ワードは「セントウル」。 ギリシャ神話に登場する、上半身が人間で下半身が馬の半人半獣「ケンタウロス」を英語読みしたものだ。


「山崎くん、セントウルって知ってる?」 隣の席で仕事をしていた山崎陽介は、手を止めてこちらを見た。 「セントウルってケンタウロスのことですよね。……えっ、なんで今さらそんなことを? ま、まさか『馬車馬のように働け』っていう暗示ですか?」


「いや、そういうわけじゃないんだ。ターフィーって知ってるだろ? 競馬のマスコットの」 「JRAのキャラクターっすよね。もちろん知ってますよ」 「あのマスコット、実は全国の競馬場ごとにご当地版があるんだ。たとえば、エビフライののぼりを持った武将姿とか、イカの鉢巻に新選組の羽織を着た『イカ新選組』とか、米農家風のやつとかね。……で、阪神競馬場には『セントウルに扮したターフィー』がいるんだよ」


「セントウル? 上半身が人間で、下半身がターフィーってことですか?」 そのとき、背後から女の笑い声が響いた。 「ちょっと山崎くん、下半身がターフィーって……顔がないキャラなんてありえないでしょ」 通りかかった高瀬晶が、会話に首を突っ込んできた。 「キャラなんだから、どう考えても『上半身がターフィーで、下半身が馬』に決まってるじゃない」


山崎は、自分のボケを高瀬が拾ってくれたことに安堵して息を吐いた。 「その通り。これが『セントウルターフィー』だ。上半身がのマスコット、下半身が馬」 一条はそう言いながら、検索画面の画像を見せてくれた。


確かに、四本脚の馬の胴体から、さらに馬のキャラクターであるターフィーの半身が生えている。


「これ……上半身が馬で下半身も馬なのに、『馬』にはならないんですね」 「そうなんだよ。馬を扱う施設のマスコットが、果たしてこれでいいんだろうか? おじさんとしては、アイデンティティが心配になるよ……」 「本当だわ、これは看過できない問題ね」 山崎は思った。(高瀬さん、面白半分に煽ってるな……)


「やはり、JRAに知らせてあげたほうがいいのだろうか……?」 一条は至って真面目な声で悩んでいる。


山崎は心の中でツッコミを入れた。 (一条さん、セントウルの定義にこだわりすぎですよ。単に人間部分をターフィーに置き換えただけなんですから……)


まあ、一条さんが楽しそうに問答しているから、これでいいか。山崎は再びキーボードを叩き始めた。

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