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こだわりというか、わだかまりというか  作者: 白山月


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くるみ割りガンダム

一条夫妻は、ネット動画でヨーロッパ各国のクリスマスマーケットを眺めていた。 「素敵ね。小さな屋台がキラキラして、食べ物も美味しそう。ツリーに飾る小物の屋台も情緒があるわ」 美奈子が隣の哲也に語りかける。いつもなら、こういう時の哲也は生返事ばかりだ。


しかし、今日は違った。 彼は画面に映り込んだ「くるみ割り人形」をじっと見つめている。 「ヨーロッパの動画には、どこでもくるみ割り人形が出てくるんだね。だいたい同じような兵隊の格好で。面白いもんだ」 おや、珍しく哲也が自ら感想を口にした。


「何か思いつくことでもあったの?」 美奈子は彼の珍しい反応を逃さず、話題を拾い上げた。 「このくるみ割り人形だけど、昔ながらの兵隊じゃなくて、もっと斬新なデザインはないのかな」 美奈子には想像がつかない。不思議そうな顔をしていると、哲也が語り始めた。 「兵隊じゃなくてもいいはずだ。たとえば……ガンダムとか」


「……えっ?」 思わず美奈子の手が止まる。 「くるみ割り人形って、あの兵隊のデザインそのものを指すんじゃないの? ガンダムになった時点で、それは人形じゃなくて『ガンダムの形をしたくるみ割り器』でしょ?」 「口の部分にくるみを入れて割るのがくるみ割り人形なんだから、形がガンダムでも成立するはずだよ」


どちらが正しいのか。そもそも「くるみ割り人形」の定義とは何だろう? 気になった美奈子がスマホで調べてみると、こんな条件が出てきた。


道具: くるみの殻を割るための道具である。


工芸品: ドイツ伝統の木製人形で、魔除けや風刺の意味が込められている。


文化: 童話やバレエを通じて、クリスマスの象徴的な存在となった。


「なるほど、クリスマスに売られるのは童話やバレエの影響なのね……」 美奈子が納得していると、哲也の妄想はさらに加速していった。


◇一条哲也の妄想:くるみ割りガンダム

サイド3のある家で、クリスマスの夜。少女アルテイシアは、不格好な「くるみ割りガンダム」をプレゼントされたのじゃ。アルテイシアはその武骨な人形をとても気に入り、大切に可愛がったそうじゃ。


◇真夜中の戦い 夜中、アルテイシアが時計の鐘の音で目を覚ますと、部屋の様子が一変しておった。 どこからか、7つの頭を持つ「ネズミのモビルアーマー」率いるネズミ型MSモビルスーツの大群が現れたのじゃ。すると、くるみ割りガンダムが動き出し、援護の「ボール」たちを指揮してネズミ軍と戦い始めた。 だが、多勢に無勢。くるみ割りガンダムは次第に追い詰められ、ピンチに陥ってしまう。


そこでアルテイシアは、 「ハイパー・ウルトラ・デラックス・メリークリスマス・アンド・ハッピーニューイヤー!」 という謎の詠唱を唱えながら、自分の靴をネズミのモビルアーマーめがけて投げつけた。 靴はまるでソーラー・レイのような眩い光を放って飛んでいき、ネズミの軍勢を跡形もなく爆散させたのじゃ。その衝撃で、アルテイシアは意識を失ってしまう。


◇王子様への変身とお菓子の国 アルテイシアが目を覚ますと、傷ついていたはずのくるみ割りガンダムは呪いが解け、仮面をつけた美しい王子様の姿になっておった。 王子は命の恩人であるアルテイシアを、自身の故郷「お菓子の国」へ招待した。


チョコレートの精、コーヒーの精、お茶漬けの精たちの踊り。 優雅な花のワルツ。 そして、金平糖コンペイトウの精によるトゲトゲしい歓迎。 アルテイシアは夢のようなひとときを過ごしたのじゃ。


やがて夜が明け、彼女が目を覚ますと、すべてはクリスマスの夜の淡い夢であった。


「……こんな話はどうかな?」


話を聞き終えた美奈子は思った。 よくもまあ、これほど適当な作り話をスラスラと……。


しかし、当の一条哲也は、やり遂げたような満足げな表情を浮かべていた。

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