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第70話 使命

 次の日、俺は午前十一時にに目を覚ました。眠たい目を擦りながら昨晩のことを思い浮かべる。


 昨晩、宿に帰ると俺はすぐにベッドに倒れ込んだ。


 ルーナさんの


「アヤトさんのことが大好きです」


 という言葉を思い出しては頭が覚醒してしまい、なかなか眠れなかった。一見告白とも言える言葉に、俺はしばらくの間、自分でも気持ち悪いくらいニヤニヤしながらベッドの上で悶えてしまった。


 しかし、


(もしかしたらルーナさんと付き合えるのかも知れない)


という思考にたどり着いた時、いつものネガティブな自分が現れた。


(そんなに人生うまく行くわけないだろ)

心の中で呟き、冷静になろうとした。


 俺は、今までの経験から、人生がそんな簡単にうまく行くわけがないことを痛いぐらい知っていた。だから、今回も変に浮かれて後で残念な気持ちになりたくはなかった。


 そのため、ルーナさんが言ってくれた「大好き」には恋愛的な意味は込められていなくて、自分に自信をもてないでいる俺のために言ってくれた励ましの言葉だと考えるようにした。


(普通に考えて、あのルーナさんが俺なんかを異性として好きになるわけないよな。もっとスペックの高い男ははいくらでもいるだろうし……。流石に俺とルーナさんじゃ釣り合わない)


 そのような結論に達することにより、俺は、ざわざわしていた自分の心をなんとか鎮め、早朝五時にやっと眠りについたのだった。


 目が覚めてからも俺は布団から出ず、横向きの体勢でずっとバナナの形をした抱き枕をだきしめている。


 ルーナさんの可愛い声や、抱きしめられた時の温もりが、何度も浮かんできて、ニヤニヤしてしまう。


 別に、恋愛的な意味が込められてなかったとしても、あの時言われた言葉は十分すぎるほど俺を幸せにしてくれる。


 三十分後、ベッドの中でしばらくまどろんだ俺は、やっと布団からでて、ロビーに向かった。すると、いつものように女将さんが食事を料理してくれ、俺は遅めの朝食を食べた。

 

 

 食事を終えた俺は、しばらくの間女将さんと話しながら一休みし、そのあと着替えを済ませてから宿を後にした。


 今日はじいちゃんの刀を受け取りに行く日だった。俺は、はやる気持ちを抑え、街を歩いて行った。


 三十分後、俺はじいちゃんの刀を預けた武器屋にたどり着いた。普通だった十分で到着する距離ではあったが、ここまで来るのにずいぶん時間がかかってしまった。


 時間がかかったのは歩いている最中に街の人から次々に声をかけられたからだった。昨日、数えきれない人から称賛の言葉を受けたが今日も多くの人から褒めてもらった。まるで芸能人のように、握手やサインを求められるのは少し恥ずかしくもあったが、みんなが嬉しそうにしていたため悪い気はしなかった。


 人の目を避けるように生きていた1週間前が嘘のようにも思える変わりようだった。


 俺が武器屋の扉を開け、中に入るといつもと同じで他に客はいなかった。カウンターの奥の椅子に座っていた店の店主であるコルドさんはすぐに俺に気づき口を開いた。


「おおー! おまえさんか! 待ってたぞ!」

「こんにちは」

 俺がそう口にするとコルドさんは興奮した様子で声を発する。


「またとんでもない偉業を達成したようだな! ほんとお前さんにはいつも度肝を抜かされる……」

「運が良かっただけですよ」

「謙遜するな! 運がいいだけで、特級ダンジョンの深層から人を救出できるわけがなかろう。お前さんは、本当にすごい奴だ」

「ありがとうございます」


 コルドさんはすぐに、カウンターの裏に行くと白い布に丁寧に包まれた筒状の物を持ってきて、カウンターの上に置いた。


 そして、包みが外されていくと、じいちゃんの形見である「ゼウス」「シヴァ」「アグニ」の三本の刀が現れた。


「この刀たちはさらにパワーアップして戻ってきたぞ! さっき計測したが、お前さんの刀は確かに以前よりも強化されていたぞ。大体、1・2倍くらいな」


「ありがとうございます」

ただでさえ、強かった刀がさらに強化されたと聞き、俺の心は弾んでしまう。


 ゼウスを掴み持ち上げると、初めてじいちゃんから刀をもらった時のことが思い出され涙が出そうになる。


 つかを握っていると不思議とじいちゃんの優しさや愛情が伝わってくるようで胸が熱くなる。


 俺は心の中でじいちゃんに話しかける。


(じいちゃん! 俺はやるぞ!! 必ず、この世界を救って見せる! たとえどんな敵が現れたって、ルーナさんたちがいるこの世界を滅ぼさせはしない! たくさんの人たちのために頑張るよ!! 今まで頑張ってこれなかった分、必ず!! いつか、地球に戻れたら、墓参りに行くからな!)


 木でできている刀なのに、ゼウスの刀身がわずかに輝いたように見えた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。この話で第一部が完結となります。


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