第69話 告白
しばらく歩いて行くと、分かれ道に差し掛かった。ルーナさんの家は右に曲がる方向で、俺がお世話になっている宿は真っ直ぐ行った先だった。
「アヤトさん、もし良かったらこの後、私の家に来ませんか?」
「えっ?」
俺はあまりの言葉に再び頭が混乱してしまう。
(えっ? どういうこと? なんで家に誘ってくれるんだ? わからない!!)
頭の中は「なぜ」でいっぱいだったが、間違いなく魅力的な言葉だった。
「べっ、別に、変な意味じゃありませんよ。実は私、あるボードゲームにはまってて。ぜひそれをアヤトさんともやりたいなと思っただけなんです!」
ルーナさんは俺の動揺を感じ取ったのか、少し照れたように顔を赤らめそう口にする。
「今朝泊まったギルドホテルに比べたら小さな家ですが、ベッドも二つありますし。どうですか?」
「ありがとうございます。でも、女将さんに今日も泊まらせてもらうって言ってあるので……。今日のところは……。ボードゲームは僕も大好きなので、ぜひ今度一緒にやりたいです!」
「そうですか。もう遅いですしね。じゃあ約束ですよ! 今度付き合ってくださいね!」
俺が断るとルーナさんはあからさまに残念そうな表情を浮かべていた。ちょっとむすっとした顔がまた可愛らしくて俺は悶えてしまう。
家に誘われたことは正直死ぬほど嬉しかったが、今日は色々なことがありすぎてもう胸がいっぱいだった。
正直、今もルーナさんと二人きりで歩いているだけで大声で叫んでしまいそうなほどの幸せを感じていた。これ以上一緒にいたら頭がどうにかなってしまいそうだ。
(一回休憩しよう。今日の幸せをしっかり記憶して。たっぷり味わいながら三日ぐらいだらだらして過ごそう)
目覚めたとき、ルーナさんにハグしてもらえただけで既に俺の幸せメーターはとうに振り切ってる。このままじゃ臨界点を迎えてしまう。
そんなようなことを考えていると、ルーナさんはキョロキョロと少し怪しい様子で辺りを見回していた。
(何してるんだろう)
と、ぼーっと眺めていると、突然ルーナさんが抱きついてきた。少しだけ顔が見えたが、頬が赤く染まっておりとても色っぽかった。柑橘系の柔らかい匂いも漂ってきてなおさら胸が爆発しそうだった。
(?……?。…………?)
頭が真っ白になっていると、耳元に温かい吐息がかかった。
「はぁ……。アヤトさんのおかげで今生きていられます。大切な仲間も失わずにすみました。本当にありがとうございました」
ルーナさんは少しだけ抱きしめる力を強めてくる。
「アヤトさんは自分のことをあまり好きではないようですが、私は……」
そこまで口にするとルーナさんは身体を離す。そして真っ直ぐに俺の目を見つめてくる。
「私はアヤトさんのことが大好きですからね! 心の底から……」
ルーナさんの言葉が耳に届いた瞬間、世界が止まったのかと思った。あまりに嬉しくて、ちょっと頭が回らない。
「だから、もっと自分に自信持ってくださいね!」
「あ、ありがとうございます」
俺はそう口にするのが精一杯だった。生まれて初めて女性から言われた言葉に、心臓が破裂しそうだ。
ルーナさんの顔は真っ赤だった。しかし、ルーナさんは俺の顔を見て「にこっ」と笑うと言葉を続けた。
「三日後、エマが帰ってきます。ぜひその日の午後にでも顔合わせしたいのですが、ご都合はどうでしょう?」
「僕はいつでも大丈夫です」
「では三日後の午後二時にアヤトさんが泊っている宿に伺いますね」
「ありがとうございます」
「ではまた! おやすみなさい」
ルーナさんはそう言い残すと歩いていった。去り際に、何度もこちらを振り向いて手を振ってくれた。あまりの可愛さに俺はやられっぱなしだった。
しばらくの間、その場所に立ち尽くしていた。雪が肩に積もり始めてもまだ動けなかった。




