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第61話 恩返し

「すげぇ! ルーナさんも帰ってきたぞ!」


「ああ、信じられねぇ! これで全員だ!」


「あいつ本当にやったぞ!!」


 特級ダンジョンへの転移紋章がある部屋に帰ると、そこには溢れかえらんばかりの冒険者たちの姿があった。


 みな私たちの帰還を喜んでくれているようで誰もが興奮しており、大騒ぎだった。拍手をしている者や、叫んでいる人、泣いている人も何人もいた。


「あの! アヤトさんと、エマとソフィアは無事ですか!?」


 私は事態が良く飲み込めないまま、1番近くにいた髭面のおじさんに声をかける。


「嬢ちゃんの仲間なら、今あそこで寝てるだろ? 息があるうちにエリクサーを飲ませたからもう大丈夫だ!! まだ意識は戻らないけど。そのうち目覚めるだろう」


 おじさんの声に、後ろを振り向くとそこには寝ているエマとソフィアの姿があった。毛布がかけられており、身体は見えないが顔色はよく確かに無事な様子だった。


「アヤトさんは?」


 そう言いながら辺りを見回すと、少し前に人だかりが出来ていた。私はその人混みをかき分けていくとアヤトさんが仰向けに倒れていた。


 「アヤトさん!!」 


 私はアヤトさんの元に駆け寄ると頭と上半身を抱き抱え声をかける。でもアヤトさんはぴくりとも動かない。体も驚くほど冷たかった。


「アヤトさん……」


 最悪な結果を想像し、全身から血の気が引いて行く。瞬間、心が張り裂けてしまいそうなほど締め付けられていく。


「そんな……。こんなことって……」


 しかし、次の瞬間、アヤトさんの身体が輝き始め、身体の再生が始まった。腕、耳、足、頭、あらゆる場所が急速に治って行く。


「大丈夫だって! 嬢ちゃん。アヤトにもエリクサーを飲ませたんだ! ほら、再生が始まっただろ!」


 先ほどのおじさんが再び私に声をかけて来てくれる。私はじっと再生されて行くアヤトさんを見ていると、堪えていた涙が出てきてしまう。


「みんな、助かったんだよ! 一人残らず! ほんと、どえらいことをしちまったんだ! アヤトは!」


 おじさんの声を聞くと、私の声で静まり返っていた部屋の中でまた大きな歓声が上がった。


 その声に反応したのか、腕の中のアヤトさんが少しだけ目を開いた。先ほどの鋭く真剣な瞳とは違って、穏やかな笑みを浮かべている。


「ルーナさん」


 少しだけ意識があるのか、アヤトさんが目を開いて私を見てきた。そのどこまでも優しい瞳に、時が止まったのではないかというほど心が震えてしまう。


「アヤトさん……」


 私は涙が溢れていて少しも言葉が出てこなかった。伝えたいことは山ほどあるはずなのに、感謝の思いが大きすぎて言葉にできない。


 私が何も喋れないでいると、アヤトさんは少しだけ笑みを浮かべると口を開いた。


「ル、ルーナさん……。よ、良かった。やっと恩を返すことができました」


 アヤトさんがそう言い残すと再び意識を失ったのか、瞼を閉じ身体からも力が抜ける。


 アヤトさんの言葉を聞いた瞬間、心が熱い思いでいっぱいになってしまった。私はただ、アヤトさんを抱きしめることしかできなかった。心の中に莫大な感謝の気持ち広がって行く。


(あんなにボロボロになってまで助けに来てくれたの……? あのたった一度の恩を返すために……? 特級ダンジョンの最深部まで……。いつだって帰還の翼を使うことだってできたのに……。アヤトさん……)


 駆けつけてくれた時の姿を見ただけで、想像すらできないような莫大な痛みがアヤトさんを襲ったことがわかった。


 アヤトさんの苦しみや痛みを考えると、熱い思いが溢れて止まらない。私は人目も憚らずしばらくの間泣き続けた。





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