第51話 加護の依頼
「よし!アヤト、鑑定結果がでたぞ。こっちへ来てくれ」
30分ほどして鑑定が終わったようだ。俺は、カウンターの前に向かった。
「いやー、いい武器が多かった! さすがレヴィナントを討伐した男だ」
「それは良かったです」
「これが鑑定結果だ。確認してくれ」
コルドさんに手渡された紙にはこう書かれていた。
ナイフ 七本 合計 九十万
片手剣 三本 合計 二百四十万
大剣 四本 合計 六十万
ハンマー 三本 合計 百八十万
弓 六丁 合計 百二十万
槍 二本 合計 五十万
斧 一本 合計 百万
総買取金額 八百四十万ギル
「え、こんなにいくんですか?」
俺は買い取り金額の高さに驚き尋ねた。
「ああ、いい武器が多かったよ。特に片手剣のこれとハンマーのこれ、斧のこれはかなりの性能じゃった。この三つだけで四百万の価値はある」
コルドさんがそう言いながら持ち上げた武器は、どれも上級ダンジョンで拾った武器だった。やはり、上級ダンジョンで手に入るものはレア度も高いようだ。
「それで、どうだろう。この金額はうちとしてもかなり頑張ったほうなんだ。お前はこの町の英雄だからな。普通は販売価格の70%で買い取るところ。80%でにしてある。他の店に持って行ったとしてもうちが一番高い自信があるぞ」
「いや実は、この武器たちは、買取希望じゃなくて、コルドさんに引きとってもらおうと思って来たんです」
「んっ? 引き取るって、つまりどういうことだ?」
「お金は結構ですので、コルドさんに差し上げようと……。その、秘密も守ってもらってますし、じいちゃんの刀もただで鑑定していただいたので」
俺は最初から買い取ってもらうつもりはなかった。前にお世話になったし、秘密を守ってもらっているためコルドさんには感謝の念を抱いていた。
また、最近ダンジョンを攻略しまくったため、正直、信じられないほどの金はすでに持っていた。八百四十万ギルはかなり高額かもしれないが、今の俺からしたら、この少しだけじいちゃんに似ているコルドさんを喜ばせる方がずっと魅力的だった。
「なんと! これらの素晴らしい武器を譲ってくれると言うのか! そんな冒険者見たことも聞いたこともないぞ!」
コルドさんは目を見開いて驚きを口にしている。
「はい。これからもお世話になると思いますし。秘密も抱えてもらっているので……」
「お前さんは、ホント素直な性格なのじゃな。愚直と言うか、まっすぐと言うか……。うちは小さな店で正直売り上げは芳しくない。しかし、お前さんにそこまでしてもらうわけにもな……」
そう口にするとコルドさんはふと考えるように腕を組み目をつぶってしまった。
「うーーーん、そうじゃなぁ」
などと言いながら考え込んでいる。
すぐに大喜びしてくれると思っていたが、意外な反応で俺は少し戸惑ってしまう。
(あれ、もしかして俺、困らせてしまっているかな。悪くない話だと思ったんだけどな)
そんなことを考えているとコルドさんが
「そうじゃ!!」
と大きな声をあげた。
「お前さん、以前見せてもらったとてつもない武器は待っているか?」
「はい」
「ちょっと出して見せてくれ」
「わかりました」
言われるがまま、「ゼウス」「シヴァ」「アグニ」の三本を取り出すと、コルドさんはその刀を一つ一つ手に取り、じっくりと観察していった。俺は何をしているのかわからなかったがとりあえず様子を見守ることにした。
しばらくしてコルドさんが口を開いた。
「やっぱりな。お前さん、この刀三本。まだ加護を受けていないじゃろう」
「かご? なんですかそれ?」
「なんと、知らないのか。お前さんは面白い男じゃな」
「基礎スキルの一つに【加護】ってやつがあるじゃろ。物質の働きを強くすることができるレアスキルじゃ」
「ああ」
コルドさんに言われて、師匠からもらった本「冒険者心得」のスキル一覧の中に「加護」というスキルがあったことを思い出した。
「冒険者のほとんどが自分のお気に入りの武器は加護師に依頼して武器を強化してもらっているぞ。この世界の常識じゃ」
「そうなんですね」
(まだまだ知らないことが沢山あるな。もっと本を読んだり人に聞いたりしてこの世界のことを勉強しなきゃな)
「そこで提案なのじゃがな。実は、わしの弟がな隣の町の「へイドラ」で加護師をしているんじゃ。わしの弟ながら加護師としては一級品でな。スキルレベル8の凄腕の加護師じゃ。最近は王都や他国からも依頼が舞い込んでいると聞く」
「弟さん、そんなにすごい人なんですね。無知で申し訳ないのですが、加護をしてもらうと、どういう効果があるのでしょう?」
「加護スキルは物の強度を高めることができるが、武器に使用すると武器の性能を高めることができるのじゃ」
「なるほど」
「一般的な加護師で1.05倍の威力増と言われているが、うちの弟なら1.2倍の威力に高めることができる」
「1.2倍ですか! すごいですね!」
「ああ」
1.2倍と言う話を聞いて、俺はようやく加護の重要性について理解することができた。武器の力が冒険者の実力に即直結するこの世界において、少しでも武器の性能を上げることは非常に重要な意味を持つ。これはたしかに加護を頼まない冒険者はいないだろう。
「一般的な加護師は武器一つに付き十万前後の金をとることが多いのだがな。わしの弟はなにせ腕が良い。だから一本百万円で仕事を引き受けておる」
「百万ギルですか」
「ああ、しかし、それでも予約は半年待ちだと聞く」
「なるほど」
「そこでじゃ。お前さんのせっかくの申し出だからこれらの武器はありがたく頂くことにする。しかしその代わりにお前さんの武器の加護を弟にワシから依頼しよう。もちろんその分の金はわしが持つ」
そこまで聞いて俺はようやくコルドさんが言おうとしてることが呑み込めた。願ってもない話だ。
「えっ? いいんですか?」
「ああ、八百四十万もする武器を譲ってもらうのだ。これだけしても正直足らないくらいじゃ。どうだこの話は?」
「ぜひお願いしたいです」
「決まりだな。今日送れば遅くてもあいつは五日ほど仕事を終えるじゃろ。一本ずつ依頼してもいいが。どうする?」
「五日ですか」
五日という言葉を聞いて俺は少し考えたが、結論は割とすぐに出た。
「三本ともで大丈夫です」
「良いのか?」
「はい。実は今、冒険者は少し休業中なんです。体調があまり優れなくて……」
「そうなのか。まあそういう時は無理は禁物だな」
「まだしばらくは休もうと思うので三本ともお願いします」
「よしわかった。じゃあ確かに、預かったぞ。私の弟だから、紛失したりする心配はいらないぞ。隣町までもわしが責任をもって運ぶから安心してくれ」
「ありがとうございます」
「ああ、じゃあ、一週間後に取りに来てくれ、一週間後だったら間違いなくこの店にあるはずだ」
「わかりました」
(めちゃくちゃ強いじいちゃんの剣がさらに強化されるのか。楽しみだな。ちょうどしばらくは冒険するつもりもないしちょうど良かったな……)
俺は、一週間後を楽しみに武器屋を後にした。
コルドさんが喜んでくれたのが嬉しかったが、やはりじいちゃんの刀が強化されることが何より楽しみだった。
外は、いつの間にか日が沈みかけていたため、俺は宿に向かって歩き始めた。




