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第42話 疑惑

 朝八時に目を覚ました俺は、軽い軽食をとってから早速ダンジョン攻略を始めた。1時間ほどで地下38階と地下39階の攻略を終えると俺はラスボスが待つ地下40階へと向かった。


 闘技場のようなフロアに出てきたボスモンスターは、全身から紫色の体毛を生やした巨大な猿だった。前に動物園で見たゾウぐらいの大きさがあった。


 しかし、戦い始めると力は強いのだろうが動きが鈍く攻撃をかわすのに少しも苦労しなかった。


 猿が大振りのパンチを放ってきた隙に、懐に潜り込み、ガラ空きになった顎の下の肉に、師匠から食材調達用に借りていた錆かけのナイフを突き刺した。


 ナイフを深く突き刺すと、巨大猿はのたうち回って暴れ、やがて動かなくなった。


 じいちゃんの刀を使わなくてもまだ、中級ダンジョンのボスを倒せるぐらいには俺は強くなっていた。


 俺はドロップアイテムである猿の尻尾を拾うと、転移紋章を踏みモルドに向かった。



♢ ♢ ♢ ♢



「えええええええええええええぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!!中級ダンジョン五つを全部攻略しちゃったんですか!! しかも、依頼品を全て集めてきたんですか……」

「はい」

 モルドに戻りギルドの受付を訪れた俺は全ての中級ダンジョンを攻略したことを伝えた。すると、ハルさんはギルド中に響き渡ったのではないかと思うほどの大きな声を出した。


 俺は、前回と同じように、集めてきた素材や生け捕りにしたモンスター、五つのダンジョンボスの素材を次々に出していった。


 アイテムは千点を超えており、出すだけでも三十分以上の時間がかかった。やがて前回と同じように応援も来て、アイテムを確認していった。


 俺は、数十分間、受付の前の椅子に座ってその光景を眺めていた。



 やがて俺は、ハルさんに呼ばれ再び受付に向かった。

「中級ミッションの依頼品が、全て納品されたのが確認できました」

「そうですか。良かったです」

 いくつか獲得し忘れているものがあるのではないかと心配していたため、俺はハルさんの言葉を聞いて安堵した。


「では、これで中級は卒業ですか?」

「はい」

 ハルさんはなぜか浮かない顔をしていた。中級ミッションを達成したことをもっと喜んでくれると思っていたからだ。どうしたのか気になっていると、突然思わぬことを尋ねてきた。


「あの……アヤトさん。本当に、失礼なことを尋ねてしまうんですけど……。良いですか?」

「あっ、はい……」


「私が思っているんじゃないですよ? 私はアヤトさんのことを信じています。

 ただ、上司がどうしても確認しろって言うんです」

「なんですか?」

 いつも笑顔がトレードマークのハルさんが神妙な顔を浮かべている。だんだん不安になってきた。


「あの、アヤトさん。素材の買い取りとかしていないですよね? 他の冒険者から……」


「えっ?」

 俺は言葉の意味が分からずそう口にしてしまう。俺の戸惑いに気が付いたのか、ハルさんはさらに申し訳なさそうな顔を浮かべ言葉を続ける。


「最近、多いんです。ミッションをクリアするために、冒険者同士で素材を交換したり譲渡したり販売したりすることが。当ギルドでは、パーティ以外の冒険者とは素材の譲渡や交換や受け渡しは禁止しているので……。ごめんなさい! もし違ったらちゃんと否定してくださいね! 何度も言いますが、私はアヤトさんを信じてますので」


(そういうことか……)

 今の話を聞いて、俺はようやく今の状況を理解することができた。


「本当にごめんなさい! ただ、アヤトさんの攻略スピードが未だかつてないぐらい早いんです! 初級者ミッションの攻略記録は1日と6時間でした。なのにアヤトさんはたった5時間程度で攻略してしまいました。今回の中級ミッション攻略も、今までの最高記録は3週間なんです。それなのに、アヤトさんは、10日足らずで達成です。あまりにも……、あまりにも早すぎるんです!」


 それを聞いて俺は内心しまったと思った。もちろん、イカサマなどはしていない。間違いなく全て自分の力で集めたものだ。じいちゃんの刀が凄すぎることや探知スキルが便利だったこと。それに加えダンジョン内をずっと走りながら攻略したのもまずかったのかもしれない。


(まじか! せっかく頑張ってきたのにまさかこんな風に疑われてしまうなんてな……)


 俺は、疑われてしまうほど圧倒的なスピードでダンジョンを攻略してしまったことに気付き、驚愕した。注目をされるのが嫌いな俺にとって、今の状況は俺にとってあまり好ましくはない。


(まずは疑いを晴らさなきゃな……)


 「心配をおかけしてすみません。でも僕は他の冒険者から素材をもらったことも買い取ったこともありません。今日納品したのは、全て自分の力で手に入れたものです」


「間違いありませんか?」

「はい。間違いありません。大体僕は、この町に来たばっかりで、そんなに冒険者の知り合いも多くないんです」


「そう……ですか!! わかりました! 私はアヤトさんを信じます。 アヤトさんは、十年ぶりに特別教官から免許状をもらった人ですもんね。すみませんでした。疑ってしまって。上司には私からしっかりと伝えておきますから!」

「ありがとうございます」


 ハルさんは見るからに申し訳なさそうな顔を浮かべていた。その表情や言葉から、俺のことを信じてくれていることが伝わってきて、俺も安心することができた。


(どうにかわかってもらえたか……。でも気をつけなきゃな。次の上級ダンジョンははゆっくり攻略しよう。早く攻略して、ランキングを上げたかったけど、仕方がないよな……)


 俺はそんなことを考えながら、上級冒険者に上がるための手続きを待った。


 やがて、俺は、上級冒険者手帳を受け取った。これで上級下位までクラスが上がった。冒険者ランキングを見ると、279位のところに名前があった。

 また、ミッションの報奨金と、素材の買い取り金額として俺は、892万ギルを受け取った。

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