第38話 高速攻略
初級ダンジョンと初級ミッションを全て達成し、ルーナさんにも会えた次の日、俺は早速次の中級ダンジョンの攻略を始めることにした。
昨晩女将さんに聞いた話によると中級ダンジョンは一フロアが初級ダンジョンよりもかなり広いらしい。そのため、攻略をするためには野営をする必要があると教えてくれた。
俺は朝、宿を出ると、以前、焚き火台などを購入したアイテムショップに向かった。
そこで少し大きめの二人用テントや毛布、枕、抱き枕などを購入した。二人用のテントにしたのは、足を伸ばして大の字で寝たかったからだ。
初級ダンジョンを攻略したおかげでお金に余裕があったため、寝具はどれも最上級の物を購入した。合計50万ギルほどかかってしまったが、睡眠の質には変えられなかった。
また、中級ダンジョンに挑むに当たって回復薬や万能薬などもいくつか仕入れておいた。エリクサーも買いたかったが、売り切れでしばらく入荷はしないとのことだった。
俺はギルドに到着すると、一応今から中級ダンジョンに行くとハルさんに報告しておこうと思って受付に向かった。
今日も受付は空いていたため、五分ほどでカウンターにたどり着いた。そこでハルさんから中級ダンジョンの詳しい説明を聞くことができた。
ハルさんの話で、中級ダンジョンではD級からB級の強さのモンスターが生息していることや、五つあるB級ダンジョンではそれぞれ取れる資源や生息してるモンスターが異なること、中級ダンジョンはどこも地下40階まであることなどが新たにわかった。
「アヤトさん。絶対に無理は禁物ですよ。気をつけて行ってきてくださいね」
説明を終えるとハルさんは、そう声をかけてくれた。ハルさんの言葉からはいつも温かみを感じるため、俺はこの人のことを気に入っていた。
「ありがとうございます! 行ってきます!」
俺はダンジョンへの転移装置がある部屋へ歩き始める。
(ダンジョンによってモンスターが違うのか。まぁ全てのB級ダンジョンを隅から隅まで完全攻略すれば良い話だな)
ハルさんの話を聞いて、俺は片っ端からダンジョンを攻略していくつもりだった。少しでも早くランキングを上げていきたかった。
中級ダンジョンの部屋に入ると、そこには五つの転移紋章が浮かんでいた。
俺はどうせ全てクリアするんだからと、特に考えず1番近くなあった「ザロア」というダンジョンに決めた。俺は装備を整えると紋章を踏んだ。
♢ ♢ ♢ ♢
目の前には見覚えがある通路が現れた。初級ダンジョンの初めと作りがかなり似ていた。俺は探知スキルを発動させてあたりを探ったが、周囲には何もなくただ一本道が続いているだけだった。
「やっぱり、ダンジョンの初めの階は何もないんだな。つまらないから先を急ごう」
俺は走って通路を突き進み、奥にあった階段を駆け降りた。するとそこは砂漠の中にでも沈んでいるかのような砂まみれのフロアが広がっていた。
「こんなダンジョンもあるのか」
俺が驚いていると、突然隣の部屋から、二本足で立つ犬型のモンスターが現れた。手にはこん棒を持っている。大きさは2メートル以上はあるだろう。
「コボルトキング⁉ こんなところにもいるのか」
目の前に現れたモンスターは修行中に食事の材料を取りに行く森で良く出くわしていたモンスターだった。見た目は強く見えるが、実際は大した強さではない。
俺は、コボルトキングに駆け寄ると、前に倒した時と同じように、腹部に思い切り右拳を叩きこんだ。すると、コボルトキングは後ろに吹っ飛び壁に激突してから前のめりに倒烈、すぐに光の粒となって消えていき後には牙のドロップアイテムが残った。
「やっぱり弱いな。中級級ダンジョンと言っても最初はこんなもんか」
俺は、牙を拾い上げるとアイテムボックスに入れた。そして、中級冒険者手帳を開くと中級ミッションが乗っているページを開いた。昨晩はずっと女将さんと話してしまいまだ新しい冒険者手帳は開いてもいなかった。
そこには、150個のミッションがずらっと並んでいた。
「まじか……こんなにあるのかよ」
初級ミッションに比べて依頼の数が異常に増えていた。
(でもまあ、全部の部屋を周り、すべての場所を探知スキルで調べ尽くせば、大丈夫だな。初級ダンジョンと同じように、走りながらコツコツと回って行こう)
150個と聞くと果てしないものに思えたが、よく考えると逆にワクワクする気持ちにも込み上げてきた。
俺はミッション内容を上から見ていくと。
「コボルトキングの牙 3本 達成報酬3万ギル」
と書かれている項目を見つけた。
「よし! 幸先がいいな。どんどん行こう! あれ? っていうか俺、久しぶりにちゃんと戦ったな……」
俺は、初級ダンジョンではずっとじいちゃんの刀を使いっぱなしだったことを思い出した。
師匠により無茶なトレーニングを積まされたせいで(おかげで)俺はレベルが爆増し、それに伴うステータスも上昇していた。また、半端ない強さを持つ師匠との一日4時間の戦闘訓練もあり、B級までの魔物であれば武器を使わなくても倒せるようになっていた。しかし、自分で戦うよりもじいちゃんの刀で戦う方が手っ取り早いため、ずっと頼ってしまっていた。
「たまにはちゃんと自分で戦わなくちゃな。体が鈍りそうだ……」
俺はそう考えながら攻略を始めた。
【探知】スキルを発動し、フロアの端から端、隅から隅まで探索していった。
すると、面白いように魔物が見つかるため、俺は戦うのが面倒くさくなって結局じいちゃんの刀をフル活用してしまった。
釣るのに時間がかかると言われている希少な魚はシヴァの能力で池ごと凍らせ、陸地まで池の水を全て移動させてまるまるゲットした。
1000匹はいるうさぎの中から数匹しかいないルビーの瞳を持つうさぎを捕まえる時も全てをシヴァで冷凍してからゆっくりと捕まえていった。
他にも明らかに生け捕り対象ではない生き物はゼウスの飛ぶ斬撃で一瞬で倒していった。
じいちゃんの剣の中でも特にシヴァはダンジョンとの相性が良すぎた。シヴァを使えば本来コツコツと取り組まなきゃいけない課題を一瞬で解決することができた。
(だめだな俺は……。結局じいちゃんの刀に頼りっぱなしになってしまっている)
頭の中ではだめだと思っていても、どんどん依頼品を集めていけることが楽しすぎで結局俺はじいちゃんの刀をフル活用してしまった。
「あいつは生捕りだから、冷凍」
「こいつはドロップアイテム狙いだから討伐」
「あいつは冷凍」
「あいつは討伐」
「こいつも討伐」
「討伐」
「冷凍」
「冷凍」
「冷凍」
「討伐」
「討伐」
「冷凍」
「討伐」
俺は、無我夢中でダンジョン攻略を進めていった。集められるものは全てアイテムボックスの中に突っ込んでいった。もちろん、他の冒険者が近くにいたときは乱獲を少し自重したが。中級ダンジョンは一つのフロアがかなり広く、他の冒険者と出くわすのは稀だった。




