第36話 報告
帰還の紋章を踏み、ギルドに戻った俺は、さっそく受付へ向かった。番号札を受け取ってから10分ほどでカウンターに呼ばれた。カウンターの向こうに立っていたのは、朝受付してくれたハルさんだった。
「あれ? アヤトさん、さっきダンジョンに入って行きましたよね? どうかしましたか?」
ハルさんは俺の顔を見てきょとんとした表情を浮かべていた。
「いや、初級ダンジョンのボスを倒したのと、素材も一通り集めてきたので、納品しようと思いまして」
「ええっ!! 初級ダンジョンを攻略したんですか? まさか? だって、今日の午前10時くらいに、アヤトさんは入って行ったじゃないですか? まだ、15時ですよ? 五時間しか経っていないのに」
ハルさんは、ギルド中に響いたのではないかと思うほど大きな声を出した。事実、後ろを向くと、何人かの冒険者がこちらを見ていた。
「で、でも、ちゃんとボスは倒しましたよ。素材も、できる限り集めてきたので、とりあえず見てもらってもいいですか?」
「わ、わかりました」
俺は、次々に、素材や生け捕りにしたモンスターをアイテムボックスから出していった。量が多かったため、出すのに10分ほどかかってしまったが。
俺が採りだした素材を見て、ギルドの人たちが次々に集まってきて、素材やモンスター達を調べていった。俺は、捕まえたモンスター達が檻に入れられたのを確認してシヴァの「氷漬け」を解除していった。
20分後。ハルさんは口を開いた。あわただしく動き回っていたためか、額に汗を浮かべている。
「はぁ、はぁ、間違いありません。初級ダンジョンで達成すべきすべてのミッションがクリアされています。先ほどは失礼しました」
「良かったです。それじゃあ……」
「はい。アヤトさんの階級が初級下位から、中級下位まで上がりました。い、今から、中級冒険者用の手帳とお渡しするお金の準備をしますので少々お待ちください」
「わかりました」
しばらく時間がかかるとのことで、俺は、受付から、一番近くにある配信スクリーンの椅子に座った。そこに映っていたのは、ルーナさんだった。
惚れ惚れするようなルーナの戦闘技術と、モンスターを倒した後に、必ず入るモンスターの倒し方解説に俺はまたしても夢中になった。戦うルーナさんの姿はどこまでも輝いていて神々しくもあった。
「いやー、今回も最高だった!! ルーナさんはやっぱりすごい!!」
やがて映像が終わったため、俺は、席を立った。おそらく20分以上は見ていたと思う。すると、後ろの方から急にざわめきが聞こえてきた。声がする方に顔を向けると、そこには人だかりの中を手を振りながら颯爽と歩くルーナさんがいた。
配信映像でも十分感じていたけど、直接見るルーナさんは超絶美人だった。
「えっ? ル、ルーナさん⁉」
呆然と立ち尽くしている俺の少し前を、人だかりと共にルーナさんは歩いていった。
(どういうことだ? だって今まで配信されていたのに……)
戸惑いながらも俺は、ルーナさんのもとへ急いだ。しかし、さすがにアイドル的な人気があるルーナさんだ。ファンだと思われる冒険者や町の住人が押し掛けてしまってなかなか近づくことができなかった。
ルーナさんは握手を求められても、サインを求められても、いつもにこやかに対応していた。アイドルの鏡だなと見ていて思った。
ギルドを出てからもルーナさんの周りにはいつも誰かが群がっていた。俺は、仕方がなく一定の距離を取りながらついて行った。さすがにお金を渡すところを他の人には見られたくない。
(しかし、これじゃあまるでストーカーみたいだぞ……)
俺は、こそこそしている自分に嫌気がさしたが、何としても今日お金を返したかった。このチャンスを逃したら次いつ会えるかわからない。
しばらくついていくと、路地を曲がったところで、やっとルーナさんは一人になった。俺は慌てて駆け寄った。




