第19話 どういうこと?
エアライド乗り場に着いたとき、この前養成所で出会ったロロに出くわした。ロロもレヴィナントを見に行くつもりらしく、一緒に向かうことにした。エアライドがまだ残っていたため、俺とロロはすぐに出発することができた。
ロロが先導する形で北に向かって飛んでいたのだが、見たことがある景色が続いたことから、俺は妙な胸騒ぎがし始めた。
一時間ほど北に進むと、そこは三日前に俺が狩りをした場所だった。俺が巨大なワシ型モンスターを倒した場所に多くの人間が集まっていた。
俺は目の前の現実が受け止められず、呆然と突っ立っていた。すると、先に来ていた商人風の男たちの会話が聞こえてきた。
「どうだ。このバカでかい聖痕! 間違いないだろう」
「ああ、この嘴の痕跡、全体の大きさ、そして風で切り裂かれた地面……。間違いないだろう」
「それに、見ろよ向こうの山、やつの攻撃で、馬鹿でかい穴が空いてしまってる」
「ああ、こんなことができるのは厄災モンスターしかいないよな」
男達の前に視線を移すとそこには、あのワシ型モンスターが地面に落ちた跡が鮮明に残っていた。ワシ型に凹んだ砂地の地面。さらに三日前に比べたら薄くなっていたが光の粒もまだ輝いていた。
「でも誰がこんな化け物を倒したんだ? 確か二年前に、王都の国選パーティの連中が徒党を組んで討伐しようとしてもだめだったんだよな?」
「ああ、確か【漆黒の夜叉】と【黄昏の大地】だったな。今でもトップのパーティだ。結構良いところまで追い詰めたらしいが結局逃げられたって聞いたぞ。黄昏の大地の方のメンバーが一人戦闘で亡くなったらしい」
「まじか、それは知らなかった。でも、そんなすげえ奴らが手を組んでもダメだったんだろ? じゃあ誰が倒したんだよ?」
「俺がわかるわけないだろ! もしかしたら他国の冒険者か神級冒険者の「ノア=シュトローム」がやったのかもな」
「いや、他国の冒険者はともかく、ノアはないはずだ! 確か、未開地域の探索に言っているはずだから」
「なるほどな。まあ、今は考えるだけ無駄だよ。いずれ明らかになるだろう。大事なことは、レヴィナントが討伐されたってことだ。毎年の閉じこもりも、絶食も、もうしないで済むぞ!!」
「そうだな!! これはめでてぇな!! これからはレヴィナントに怯える必要はねぇんだ!! 商売もしやすくなるな!」
「ああ! よし、こんなめでてぇ日は飲むに限る! 町に戻って一杯やろうぜ!!」
「良いな! そうしよう!」
二人は引き上げて行った。
俺は黙って二人の会話を聞いていたが、二人が去ると慌ててロロに尋ねた。
「あのさ……ロロ」
「んっ?」
「これぐらいのサイズの鳥型モンスターってレヴィナントの他にはいないのか?」
「いるわけないだろ! こんな巨大なモンスター! 体長だけで三十メートルを超えてるんだぞ! 翼を広げたら百メートルは超えるだろう」
「いやさ、他の鳥型モンスターが突然変異で大きくなっちゃった……とかさ?」
「ありえないよ。A級モンスターに【エンペラーホーク】と言う大きな鳥型モンスターがいるけどさ。五メートルもいかない大きさだから」
「ちなみそのエンペラーホークってやつは何色なんだ?」
「茶色だよ! どうして?」
「茶色か……。いや、別に」
ロロは少し不思議そうな顔をしている。
俺はここにきて俺は完全に理解した。
あいつが……レヴィナントだったんだ……
この場所は俺があいつに襲われた場所だ。
この地面についた跡や光の粒はあいつが消滅した時のやつだ。そして、湖の向こうの山をくり抜いたあの攻撃もあいつが……
とてつもない現実に、体が震えてくる。
(今考えれば確かにあいつは異常な再生能力と攻撃力だった。死を本気で覚悟してしまうほどの威圧感もあった。でも、でもそれなら……)
「この武器は一体なんなんだ??」
俺は思わず小声で呟いてしまう。まずいと思って隣を見たが、ロロは近くにはいなかった。
少し先のレヴィナントの嘴の跡に立ち興味深気に地面を見ている。
それを見て俺は胸を撫で下ろすが、すぐに頭の中は疑問でいっぱいになった。
(さっきの二人が言っていたよな。すごい奴らが力を合わせても倒せなかったって。そんなやばいやつを俺が倒したのか?? そんなことがあり得るのか? まぁ確かにあいつはめちゃくちゃ強かったけどさ……。それでも、こんなおもちゃみたいな武器で倒せた相手だし。やっぱり別のモンスターなんじゃないか? でも、他に似たようなモンスターはいないってロロは言ってたし……)
どんなに考えても頭はすっきりとしなかった。俺は、とりあえず武器屋の主人にでも刀のことを相談してみようと思い、街に帰ることにした。
帰りながらロロと色々会話したはずだが、頭の中はじいちゃんからもらった刀のことでいっぱいで、なにも覚えていなかった。
俺がモルドに到着した頃には、もう日が沈みかけていた。夕日が眩しく街を照らしており、美しい中世の街並みも相まってとても美しかった。
俺はエアライドを返却し西門から街に入ると、すぐに武器屋を探した。それもいかにも寂れていて人気がなさそうな武器屋を。
街を歩いているといつの間にかどこもお祭りムードに変わっていた。至る所に屋台が出ていて、多くの人間が路上で酒を飲んだり食べ物を食べたりしていた。誰もが喜びを爆発させていた。
俺はそうした街の様子は横目に、武器屋を探し回った。何人かの人にも尋ね、やっとある武器屋を見つけることができた。
この店は迷路のように入り組んだ路地の奥にあり、かなりわかりづらい場所だった。なぜこんな場所に店を構えているのか気になったが、今の俺にはありがたかった。




