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第18話 緊急事態 

俺は窓の外の騒がしい声で目を覚ました。時計を見るとまだ六時だった。

 

 昨晩やられた体の傷はポーションで完全に癒えていたが、メンタルへのダメージは最悪だった。夜中に何度も目を覚ましては怒りと悔しさでいっぱいになった。また、夢の中でも昔のトラウマが繰り返され、朝起きた時は最悪の気分だった。


「もう、訓練所に行くのやめようかな」

 昨日殴ってきた奴に会うのが嫌すぎて、俺はそんなことを呟いてしまう。


 ベッドに横たわりながら、憂鬱な気分で朝の時間を過ごしていると、階段を勢いよく上がってくる足音が聞こえてきた。


 何事かと思っていると、部屋を外から強くノックされると共に女将さんの


「アヤト! 起きてるかい?」


 という声が聞こえてきた。言葉からなにか焦っているような様子を感じ取った俺は、慌ててベッドからおり扉を開けた。


 そこにはまだ、寝巻き姿の女将さんが立っていた。


「大変だよ!! レヴィナントがやって来る!!」

 女将さんは必死の形相をしている。いつもの明るく逞しい雰囲気は今少しも感じられない。

 余程の緊急事態だと言うことが伝わってくる。


「レヴィナント?」

「あんた知らないのかい!」

「すみません」

「詳しい話はまた後でするが、レヴィナントっていうのは最悪の化け物だよ!! 一体で一国を滅ぼしてしまう力を持っているんだ!!」


「えっ?」

 俺は思わず聞き返してしまう。

(一体で国を滅ぼす? そんなことあり得るのか?)


「本当さ! 現に奴が出現した五百年前から今までに、百以上の街がやつによって壊滅してるんだ! 国もいくつか滅ぼされたと聞く!!

とにかく、とんでもない化け物なんだ!!」


 女将さんの表情からはかなり緊迫している様子が伝わってくる。何よりこんなに興奮している女将さんは初めて見た。


「わ、わかりました!」

何か深刻な事態が起こっていることは理解できた。


「それでだ、ここからが重要だ! よく聞きな!! 先ほど領主様が緊急事態警報を鳴らされた。レヴィナントが近くまで来ている証拠だ! 実はレヴィナントは年に一回の間隔で必ずこの街、モルドにやってくるんだ!」


「毎年? な、何しに来るんですか?」

「毎年時期は違うが必ず一回は来るのさ。私たちの食料を奪うために」

「えっ? 食料をですか!?」

「ああ、だからレヴィナントが近づいているのがわかると、あらかじめ領主様が保管しておいた食料を街の外に置いておくのさ。百トン以上の食料をな」

「えっ? 百トン以上ですか」

あまりにスケールがぶっ飛んでいるためつい何度も聞き返してしまう。


「そうさ、街にとっては痛すぎる出費さ、それがなければもっと良い生活ができるのに」


「あの、倒すことはできないんですか? そのレヴィナントっていう怪物は」

「過去に何度もやろうとしてきたさ、しかしその度に失敗し、痛い目を見てきてる。もうこの世界の常識さ。7つの厄災はどうしようもできないってな」


「7つの厄災?」

「ああ、この世界を苦しめている元凶さ! レヴィナントだけじゃないのさ。化け物は!!」

「とにかくそう言う理由だから警報が解除されるまで部屋からでず大人しくしといてくれ。すまんが、この期間中は料理を出すこともできない! やつは匂いに非常に敏感でな! うまそうな匂いを感じるとやってくるのさ! 三年前に他国の街が一つ潰された。我慢できず、家の中でシチューを食べていたバカのせいでね」

「わ、わかりました!」


(どんな嗅覚してんだよその化け物は!)


 話を聞いているうちにだんだんと怖くなってきてしまう。


「それと、アイテムボックスの中にある食材も絶対に外に出さないようにな!」

「はい」

「あとで水は届ける。辛いとおもうが食事は我慢してくれ!」

 そう言うと女将さんは部屋を出ていった。


「国が滅ぼさる? やばすぎるだろ!!こわ!」


 ビビリの俺は話を聞いてたまらなく恐ろしくなってきてしまった。俺は、足音も立てないように歩くなど細心の注意を払いはじめた。


 いつ終わるともわからない生活が始まった。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


「カーン! カーン! カーン!」

 

 水しか飲めない閉じこもり生活は、翌日の午後二時過ぎに甲高い鐘の音を持って突然終わりを迎えた。長い時間何も食べれないのは辛かったが、思ったよりも早く解除されたようで良かった。


 俺がリビングに降りていくと、早速女将さんが料理を作ってくれた。1日ぶりに食べたハンバーグと串焼きは言葉では言い表せないほど美味かった。俺の横で女将さんも嬉しそうに頬張っていた。


「緊急事態警報が解除されたってことは、レヴィナントはもう食料を食べ終わって去って行ったってことなんですか?」

「多分ね。まだ。私も詳しい連絡は受けていないからよくわからないけど……」


 食後、俺と女将さんがそんなようなことを話していると、突然宿の入口が開き、外から見知らぬおじさんが入ってきて口を開いた!!


「女将さん!! 聞いたかい? レヴィナントが討伐された痕跡が見つかったって!!」

「ええ! ほんとかいその話?」

「俺も今、近所のやつから聞いたんだ! 町中、その話で持ちきりだぜ!! なんでも町の北に六十キロほど行った場所らしい!! 今、若い奴らが何人か見にいってるよ!」


「でも信じられないね! レヴィナントは厄災モンスターだよ? 何百年間誰も倒せなかったんだし!」

「とにかくこうしちゃいられないよ! 向こうに見てきたやつがいるらしいから話を聞きに行こうよ!」

「そうだね! じゃあいこうかな! アヤトも一緒にくるかい?」

「俺、見てきても良いですか? エアライドの乗り方も覚えましたし」

「ああ! 構わないよ! 戻ってきたら話を聞かせてくれ」


 そう言うと二人は宿を出ていった。俺も急いで西門のそばのエアライド乗り場に向かった。


 


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