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第13話 帰還

モンスターが消えた後には三つの戦利品が落ちていた。


 一つは、真っ赤な色をした美しい宝石だった。大きさは手のひらぐらいあり、吸い込まれそうになるほど美しい輝きを放っていた。


 二つ目は、エメラルド色をした金属のような塊だった。五十センチ四方の正方形の形をしていた。ものすごく重く、持ち上げるのが大変だった。


 三つ目は緑色をした輪っかだった。直径10cmくらいだ。正直用途がよくわからない。


 おそらくどれも良いアイテムなのだろうが、今は喜ぶほどの元気がなかった。


 俺は戦利品をアイテムボックスにしまおうとすると、アイテムボックスがすでにいっぱいだったことに気づいた。仕方がなく、最初の頃に手に入れたカピバラの前歯を取り出し、それを服のポケットにいれ、空いた分を巨大ワシの戦利品で使った。


戦利品をしまうと、俺は地面に仰向けに倒れ込んだ。もう身体はへとへとだった。


 すると左腕のあたりが急に痛くなってきた。見てみると、左腕の肉が抉れていた。一センチメートルぐらいの大きさで、血がすごい勢いで流れ出していた。極限状態だったからか痛みに気づかなかったようだ。


 俺は慌てて起き上がると、先程バーベキューをしていた場所まで戻り、アイテムボックスからポーションを取り出して飲んだ。


「おおっ」


 飲んだ瞬間から効果は現れた。みるみるうちに腕の傷が塞がっていき、痛みも消えた。俺はこの世界の回復薬の凄さに驚いた。


 今の傷はエアライドに乗ってる時に攻撃された時のものだろう。あの時、風の攻撃は当たってないと思っていたがほんのわずかだけ掠っていたようだ。


 俺は、その事実に気がつくと、急にまた恐怖が込み上げてきてしまう。また、あんなモンスターに襲われたらたまったもんじゃない。俺は荷物をまとめると湖に落ちていたエアライドをなんとか陸に運んだ。


 ちゃんと起動するか心配だったが、ボタンを踏むとすぐに動き始め安心した。ハンドルを前回まで倒し、俺は猛スピードでモルドに向かった。


(もう街から出るのはやめよう。命がいくつあっても足りない。初心者向けモンスターを倒せたからって調子に乗ったのが間違いだった。あんなモンスターがうろついてるなんて、怖すぎだろこの世界……)


 俺は逃げるようにモルドへ帰って行った。


♢ ♢ ♢ ♢ ♢


 町に帰ると俺はエアライドを返却してからアイテム買取所に向かった。アイテムショップの親父さんによると、買取所は町にいくつかあるが買取相場はあまり変わらないらしい。


 俺は親父さんに教えてもらった、町の西にある買取所に行くことにした。場所はあのアイテムショップからあまり遠くないらしい。


 街をしばらく歩くと俺は店を見つけた。中に入ると奥にカウンターが並んでいた。そのカウンターはパーテーションで八個に分けられていた。その光景を見て、俺は近所の携帯ショップに作りが似ていると感じた。


 カウンターのうち、六箇所は冒険者と思われる男が立っていたが二箇所空いていたため、俺はすぐに店員に招かれ右端のカウンターに向かった。


「いらっしゃいませ。買取でよろしいでしょうか?」

「あっ、はい」


 前に立つ定員さんはかなり若い女性だった。高校生だと言われても違和感がないように見える髪は金髪でショートヘアにしている。右な耳にだけど数え切れないほどのピアスをつけていた。


 元々女性と話すのが苦手なのにこんなにイケイケ風の女子はさらに苦手だった。緊張して冷や汗が浮かんできてしまうが、なんとか気づかれないようにした。


「では冒険者ライセンスの提示をお願いします」


「あっ、すみません。まだ冒険者にはなれていないんですが、それだと買取はしてもらえないんですか?」

「失礼いたしました。私どもの店に訪れる方のほとんどが、冒険者の方ですので勘違いしてしまいました。申し訳ありません。冒険者の方でなくても買取はできますよ」

「そうですか。良かった」


 その言葉を聞き、俺は安心した。目の前の定員さんも、見た目は苦手なタイプだったが、言葉遣いが丁寧でとても印象が良かった。俺は、少し緊張が治っていくのを感じた。


「ではお名前だけ教えていただいてもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい。カゲヤマアヤトと言います」

「アヤトさんですね。本日はご来店ありがとうございます。では早速、買取希望の品を見せていただいても宜しいでしょうか?」

「はい」


 俺はアイテムポーチから次々に戦利品を出していった。しかし、半分ほど出した所でカウンターの上が戦利品で埋め尽くされいっぱいになってしまったため、とりあえず半分くらいを査定してもらうことにした。


 ちなみにさっきゲットしたレアモンスターと思われる巨大ワシの戦利品はまだ出さないでいた。もし、買取金額が低かったらこれも買い取ってもらうつもりだ。


「すごい! こんなにたくさん持ってきて頂いたんですね! ありがとうございます! しかもかなり良い素材もありそうですね! えーと……。ちょっと私一人では時間がかかってしまうので裏から応援を連れてきますね」


 俺が出した戦利品を見たとたん、さっきまでクールな印象だった女性が嬉しそうな笑顔になるのがわかった。定員さんはカウンターの奥の部屋に行くと男性の従業員を連れて戻ってきた。二人は早速査定を始めた。


 すると、「おお、これは!」とか、「これすごい!」などの声を二人は口にしていた。二人は次々に用紙に何かを書き込んでいく。


 その様子を見ていて、俺は内心ワクワクしてしまう。できれば十五万ギルは超えて欲しかった。そうすれば、冒険者養成所に入るための試験代と入学金を別にしても一週間は宿に泊まることができる。


 それに、今の俺はとにかく街の外に出たくなかった。軽い気持ちで狩りに行ったら死にかけたのだ。もう狩りは懲り懲りだった。しばらくは町から出るつもりはない。


十分程の時間が経ち二人はようやく手を止めた。どうやら、査定が終わったようだ。


「ふう。お待たせしました。査定が終わりました。うちの店ではこの金額を提示いたします」

俺は女性から1枚の紙を手渡された。そこには次のように書かれていた。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

        買取


切り裂きカピバラの前歯 10000×4 40000

三又角鹿の赤身肉2キロ 8000×3 24000

三又角鹿の霜降り肉2キロ 40000×2 80000

三又角鹿のレバー2キロ 20000×1 20000

鉄壁ワニの赤身肉3キロ 5000×10 50000

鉄壁ワニの皮     30000×8 240000

鉄壁ワニの歯     5000×5 25000

紫紺水牛の赤身肉5キロ 70000×5 350000 

紫紺水牛の霜降り肉2キロ 100000×1 100000

紫紺水牛のタン3キロ 30000×2 60000

紫紺水牛のレバー2キロ 40000×2 80000

華蜜蟻の蜜 500グラム 50000×2 100000


            合計 1169000ギル


−−−−−−−–−−–−−−−−−−−−–−−−−


「ええ!?」

 俺は紙を見て思わず叫んでしまった。思っていた金額よりもかなり高額だった。肉の金額やワニの皮が高いのはよくわかる。しかし、カピバラの牙や蟻の蜜にまでこんな金額がつくとは思わなかった。


「これ、何か間違ってないですよね!? こんな高く買い取ってくれるんですか?」

思わず俺は聞いてしまう。


「どれも素晴らしい品でしたよ。肉も品質が高いですし、ワニの皮も今需要が高まっているので助かります」

「蟻の蜜やカピバラの歯ってこんなに高いんですか?」

「えっ? ご存知ないんですか? 華蜜蟻の蜜と言ったら高級食材じゃないですか! とっても甘くてコクがあって私も大好きですよ! 身体にも良いですし、調理にも使えるので今は全国的に大人気ですよ」

「そうなんですね……」


 あまりの女性の勢いに俺は少し引いてしまう。

「カピバラね前歯は加工すると、高級砥石になるそうです。私は使ったことないですが……」

「そうだったんですね」


 お姉さんの話を聞いて改めて自分がこの世界のことを知らないってことを実感した。もっとこの世界のことを知らなきゃなという思いが込み上げてくる。


なんにせよ高い査定金額がでたことは嬉しかった。


「もし、この金額で宜しければぜひ買い取らせてください」

「この金額で大丈夫です。よろしくお願いします」

「わかりました」


 そう口にすると女性は一度裏に下がり、紙製の包みを持って戻ってきた。中身を確認すると、確かに116万9千ギル入っていた。


 お金を確認したし、店を出ようかと思っていると女性の店員さんが話しかけてきた。


「アヤトさんって本当にまだ冒険者じゃないんですか?」

「はい。これから養成所に入学しようと想ってるんです」

「すごいですね! 今日持ってきていただいた品はどれも本当に良い物でしたよ! きっとすごい冒険者になれると思います!」

「ありがとうございます」

「また、是非よろしくお願いします!」


 俺は店を後にした。店員さんの言葉がすごく嬉しかったため、にやにやしてしまう。今日はかなりしんどかったけど頑張って良かった。


 いつのまにか日が沈みかけているため、俺は昨晩もお世話になった宿「ロベルタ」に向かった。短い期間に何回も泊まるのは申し訳ないと思いながらも、他の宿には行きたくなかった。


 タダで止めてくれと頼み込む……。今考えればかなりやばい行動をしてしまった。あの時に尋ねた宿にはもう行けない。たとえ今回は金を持っていたとしても。


 そのことを無しにしても俺は元々、初対面の人と話すのが苦手だ。二年前の上司からのパワハラによってかなりそれが激しくなってしまった。できればすでに顔見知りの宿がいい。


別れ際に女将さんが言っていた。

「いつでもおいで」

という言葉に甘えることにした。


 しかし、今回は自分で稼いだ金もあるため、足取りは軽かった。歩き続けて十五分ほどでロベルタの前に到着した。







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