表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/70

第12話 死闘

 「くそ! インフレするにもほどがあるぞ! この世界のゲームバランスをちょっとは考えろよ! 始まりの街の近くは普通、低レベルモンスターだけだろ! ルールを守れ!!」


 俺は、あまりのピンチに混乱し、自分でも何を言っているのかわからない。やがて、嘴に集まるエネルギーの塊が巨大になり、今にも放たれそうになった時、俺は子供の頃に考えていた技を思い出した。一撃必殺の奥義を……。


 俺は、一瞬で腰からゼウスを引き抜くと、

 全力で刀を振り抜いた。

 次の瞬間、ゼウスからは夥しい数の斬撃が放出され、やがてそれは飛ぶごとに大きくなっていく。

 

 縦千本、横千本の斬撃が空中で重なり合い、碁盤の目のような形となって巨大ワシに猛スピードで迫っていく。

 技の名前は「滅界」

 ゼウスの最強の技だ。


 斬撃は真っ直ぐに飛んでいくと、巨大ワシを四角の形に切断した。細かく切断された肉片はその場にボトボトと落ちていき、肉片の山ができた。


 「やったのか……」


 俺は、ゆっくりと湖から上がると、肉片の山に向かって近づいていく。


「うぉぉおおーーー!! 倒したぞ!! レアモンスター!! やったー!!」

 三十メートルほどの距離まできたとき、俺は勝利を確信し、雄叫びをあげた! 肉片は一つが三センチぐらいの大きさに切られていた。ところてんのように細長い形をしている。


 俺は後ろを振り返り、先ほどの技でくり抜かれた、林と山を見た。改めてとんでもない敵だったことを実感する。


「でも強かった分、きっと戦利品も良い物なんだろうな……、あれ?」


 そこまで口にして俺はあることに気が付いた。


(この世界のモンスターって死ぬと、光の粒になって消滅するんだよな……。あいつ、光の粒になったっけ?)


 俺は、恐る恐る振り向いた。


 そこには、元通りの姿になったあいつがいた。いや、右の翼だけが回復で来ていないのか、翼の先だけがまだ欠けていた。


 あれだけ細切れにしたのに、傷一つついていない。


「まさか……、再生能力か!」


 その事実に気が付いたとき、頭で考えるより早く俺は、ゼウスで滅界を放った。

 

 ゼウスの縦千本、横千本の細かい斬撃を受け、再び巨大ワシは細切れになる。しかし、すぐに肉片がうにょうにょと集まり始め、元の身体に戻ろうとし始める。


「嘘だろ! 化け物級の強さに加え、再生能力もあるなんて……。勘弁してくれよ」


 まさか、町からそう遠くない場所でこんなモンスターが出現するとは思っていなかった。あまりの敵のインフレ具合に嫌になってくる。そりゃ、おもちゃの刀でも、これだけの威力がでるはずだと。おれは刀の威力のわけが理解できた。


「くそっ! こうなったら徹底的にやるしかない!」


 俺は、どんどん回復し、元通りになっていく敵を見て覚悟を決めた。

 今度は腰から短刀「アグニ」を引き抜くと、幼き頃開発した技を思い出し、敵に向かって一閃する。アグニの剣先から飛び出したのは二十メートルは超える大きさの炎を象った鳥「不死鳥」が五体。


 五体の不死鳥たちは恐ろしいまでの熱を放出しながら巨大ワシに突っ込んでいくと、当たった瞬間巨大な爆炎が周囲に発生した。あまりの威力に俺まで燃えてしまいそうだった。これはアグニの最大奥義「塵芥」だ。

 

 巨大ワシはしばらく黒い煙をあげながら燃えていたが、やがてやがて、横風によって、煙がなくなると、目の前に黒焦げになり灰になった塊が現れた。


「今度こそやったか?」


 しかし、黒い塊からはやがて、焦げた部分が消えていき、エメラルド色の光を取り戻していくものすごい速さで、鳥の形を象っていく。


 俺は、今度はシヴァを腰から引き抜くと、切先を真下に向けるように柄を握り、そのまま手を放した。シヴァはまっすぐ落下すると、地面に突き刺さり、そこを起点にして地面が凍り付き始める。

 

 その凍てつきは、ものすごい速さで広がっていき、目の前で復活しかけている巨大ワシも凍らせた。しかし、それでも氷の勢いは止まらず、結局、目に見える範囲は全て凍ってしまった。子供の頃に考えたシヴァの最大の奥義「ワールドエンド」だ。


 目の前のワシは、真っ白に凍り付き、動かないでいる。俺は、さらにシヴァによる攻撃を何度も何度も放ち、凍り付いたワシをさらに氷の塊で覆っていった。わずかな時間で目の前には巨大な氷の塊が現れた。


「はぁはぁ。頼む! もう動かないでくれ!

 刀を振り続けたため、息が絶え絶えになりながら俺は祈る。


 しかし、やがて巨大な氷の塊の中央に亀裂が入ったかと思うと、ほとんど元通りに戻っている巨大ワシが姿を現わした。


「うわぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ」


 その姿を見て俺は発狂しそうになった。無尽蔵の再生能力にさすがに心が折れそうになる。俺は、狂ったように奥義を放ちまくった。

 

滅界で細切れにし、塵芥で焼き尽くし、ワールドエンドで凍らせた。

 しかし、なんどそれを繰り返しても敵の再生は止まらなかった。


「頼む! 死んでくれよ! 頼む! 頼む!」


 俺はいつのまにか涙を流していた。あまりの恐怖にメンタルはもう限界まで追い詰められていた。


 しかし、しばらくしてついに限界がきた。


 俺の刀の方に。


 ゼウスから放っていた。滅界の威力が急激に弱くなった。明らかに斬撃の数が少なった。カウンターを見てみると0と表示されていた。


「嘘だろ! 勘弁してくれよおおおおお」

 俺はそう口にしながらアグニを見ると、カウンターはすでに三百を切っており、シヴァも四百を下回っていた。どうやら奥義は一回で千以上の数字を消費するようだ。


 しかし、俺は、攻撃の手を緩めるわけにもいかず、威力落ちた「塵芥」を放った。だがすぐに再生を始めたため、最後の奥義、「ワールドエンド」を祈るような気持ちで放った。しかし、氷は次第に解け始め、巨大ワシの身体は再び再生を続けた。


「もう許してくれ! 初心者ゾーンを出た俺が悪かったから! もうこんな場所には二度とこないから! お前の狩りの邪魔しないから! 頼む。許してくれ!」


 俺はついに心が折れてしまい、巨大ワシに対して必死で謝った。しかし、再生は止まってくれない。


 しかし、そこで俺は、うねうねと再生していく体の中にエメラルド色に発光する細胞を見つけた。なんとなく俺はその細胞が弱点のような気がした。


 刀を投げ出し、巨大ワシに駆け寄ると、地面に落ちていた石をつかみうねうねを登って行き、露出したエメラルド色に輝く細胞の前にたどり着いた。


「ウオォーーーーーーーーーーーー」

 そして俺は大声を出しながら、その細胞を石で殴りつけた。何度も何度も数え切れないぐらい。死に物狂いに。


 しかし、無常にも再生は止まらず、どんどん肉体は戻っていき、ついには露出していた細胞も見えなくなってしまった。


 俺は、ほどんど再生しつつある体の動きで吹き飛ばされ、三メートルはある高さから、地面に落下した。下は湖のほとりで砂地になっているため、死ぬのは免れたが、それでもめちゃくちゃ痛かった。


 なんとか起き上がると、ちょうどモンスターの再生が終わるところだった。復活した巨大ワシは、俺を一瞥すると、

「ギャオオオーーーーーーーーーー」

 というものすごい雄たけびを上げた。


 俺はあまりの恐怖に一歩も動くことができなかった。しかし、モンスターは翼を勢いよくはためかせ、上空へ上がっていった。


 俺はわけもわからず、呆然と眺めていると、ものすごい叫び声をあげながら、上空を旋回し始めた。その声から、激怒してることは伝わってくる。


 やがて、巨大ワシは空中に留まると、嘴にエメラルド色のエネルギーを集め始めた。それは、だんだんと大きななっていき、先ほどの十倍はありそうな光の塊になった。


「うそだろ……?」


 どうやらさっきの山を抉った攻撃はまだ本気じゃなかったようだ。集めた馬鹿でかいエネルギーを俺に放つみたいだ。


「終わった……」

 何百メートル先のその姿を見て俺は心から絶望した。もうなにもできることはない。走って逃げようとしてもおそらく次の攻撃は半径百メートルを超える範囲で来るだろう。逃げ場はどこにもなかった。


「あの人に恩返しできなかったな……」

 死の間際、思い浮かんだのはあの時の少女、ルーナさんだった。天使のような明るい笑顔が脳裏に焼きついて離れない。その瞬間、激しい感情が心の奥底から溢れてきた。


「いやだ! 死にたくない! まだ死ねない! なにか、なにかないか! できることは……」


 俺は必死であたりを見まわした。すると少し離れた所にゼウスが落ちていることに気づいた。離れていても、光っているカウンターが見えた。数字は1と表示されていた。


「ウオォーーー」

 俺は急いでゼウスをに駆け寄り、拾い上げると、今にも攻撃してきそうなモンスターに向かって思い切り振り抜いた。


「ザンッ」

 という音と共に放出された斬撃はモンスターの頭を切り落とした。モンスターは真下に落下していき、地面に落ちると


「ドォーーン」


 という音をがなった。あたりに砂埃が舞う中、今までに見たことがないほど眩い光を放って、消滅し始めた。


 俺は、急いでモンスターに駆け寄っていくと、モンスターの姿はもうそこにはなく。何かの戦利品の周りをまばゆい光が漂っていた。


「はぁ……、はぁ……。やったぞ。倒したんだ……」

 俺にはもう叫んで喜ぶ力がなかった。


 すると突然、俺の体が発光し始め、頭の中で音が鳴った。俺は何かを悟りステータスと叫ぶと

 そこにはこう表示されていた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 氏名  影山絢斗 

 年齢  三十歳 

 レベル  2

 スキル なし

 基礎ステータス レベル強化ステータス


 生命力 23 生命力 25

 攻撃力 12 攻撃力 13

 防御力 15 防御力 16

 素早さ 9 素早さ 10


 −−−−−−−–−−–−−−−−−−−−–−−−−


「いやこれだけやって1レベルだけかよ!」


 俺は思わず叫んでしまった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ