第11話 強襲
俺は、目の前でパチパチという音を立てながら燃えている焚き火を見ていると、ふとあることを思いだした。
「そういえば。この世界の人間にはレベルの概念があるって言ってたな」
神様は俺との契約が終わった後、話をしてくれた。
レベルが上がると身体能力が上乗せされたり、特殊な力を手に入れることができると。
(えっと、確か心の中でステータスと叫べば見れるって言っていたな)
俺は心の中でステータスと唱えた。
すると、目の前の空中に、いきなり文字と数字が表示された。そこには、
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氏名 影山絢斗
年齢 三十歳
レベル 1
スキル なし
基礎ステータス レベル強化ステータス
生命力 23 生命力 23
攻撃力 12 攻撃力 12
防御力 15 防御力 15
素早さ 7 素早さ 7
−−−−−−−–−−–−−−−−−−−−–−−−−
と表示されていた。
「まじか。俺、まだレベル1なのか……」
俺は、自分のレベルが一つも上がってないことに驚いた。正直もう5レベルぐらいは上がっていると思っていた。だって、三十匹以上の数のモンスターを倒したのだから……。
(おかしい……。普通こういう世界では倒したモンスターから経験値をもらえてレベルアップしていくはずなのに……)
俺は意味がわからず困惑してしまう。もしかしたら俺が異世界からきた人間だからこの星の仕組みが機能していないのかとも思ってしまう。町に帰ったらすぐ誰かに聞こう。レベルが上がらないのは死活問題だ。
俺はその後、しばらく美しい景色をぼーっと見ていた。家の中に引きこもっていては味わえない喜びをじっくりと味わった。
陽が傾き初めたため、そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、突然辺りが暗くなり、すぐにまた明るくなった。俺が不思議に思っていると、
「ドザッ」
というどでかい音が後ろから聞こえてきた。
立ち上がり、慌てて振り返ると、そこには眼を疑う光景が広がっていた。
体長三十メートルを優に超える、巨大な鳥が、体長四メートルはある水牛二頭の上に乗り、両足の鋭い爪で押さえつけていた。長さ二メートルほどの鋭い爪が、水牛の胴体に食い込んでいる。
その生物は、地球に生息している鷹やワシと姿が似ていた。黒い体にエメラルド色の模様が体の隅々まで広がっている。模様は発光していて、美しい輝きを放っていた。眼はエメラルド色をしており、鋭い眼光を放っていた。この世の物とは思えない程、美しいフォルムをしていた。
俺は、その神々しいまでに美しい姿を見て、思わず
「すげぇ……」
とつぶやいていた。本来であれば身の危険を感じ、すぐにでも逃げなければならないのだろうけど、俺はその生き物に見とれてしまっていた。
足の下で押さえつけられている水牛たちは
「モオオオォォ――――――――――――」
と激しく泣け叫び、頭を振って暴れているが、巨大ワシは涼しい顔をしている。
やがて爪に力を入れ始めたのか、水牛の身体にどんどん爪が食い込んでいったかと思うと、次の瞬間、水牛の胴体は爪によって握りつぶすように切り裂かれた。水牛は光の粒となり消滅していき、その場には五キロを超す肉が二つ現れた。
巨大ワシは頭を下げると、五キロはありそうな肉の塊二つを、どちらも一口で飲み込んでしまった。
それを見て俺は我に返る。目の前の光景をやっと現実のものと受け止めた。
「なんなんだよ……あのモンスターは……。化け物じゃないか!!」
俺は小声でそう口にすると、頭は猛烈に回転し始める。
(予想していた通りじゃないか! やっぱりこの世界はモンスターの強さも武器の強さもインフレしているんだ!!)
初心者用の狩場から少し進んだだけで、こんな化け物が出てくるんだから。おそらく、こいつはこのエリアのレアモンスター扱いなんだろう。中ボスってところか……。一般的な冒険者はこいつだって余裕で倒しているのだろう。でも……
(今の俺には無理!)
さきほど、自分のレベルが1だったことに気付いたこともあり、俺は自信を喪失していた。しかし、そうでなかったとしても俺にはかなうわけない相手だと、一瞬で判断した。戦ったら、間違いなく死ぬだろう。
(逃げよう……)
今から先の数秒の行動が、俺の生死を左右する……。そう悟ってしまうほど目の前にいるモンスターは圧倒的なオーラを放っていた。
(もしかしたら、このままどこかへ飛んでいってくれるかもしれない。頼む! どこかへ行ってくれ!)
俺は、身体を1ミリも動かさないように意識し、周囲の景色に溶け込もうとする。
食事を終えた巨大ワシは辺りを首だけを動かしきょろきょろと辺りを見まわした。
(頼む……。頼むぞ……)
俺は、かつてないほど必死で祈り続けた。
しかし、巨大ワシは何かに気付いたのかこちらに頭を向け、鋭い視線で睨みつけてきた。
(やばい!)
そう思った瞬間、巨大ワシは、
「ギャオォォォーーーーー」
大地を揺るがすような凄まじい叫び声を発した。
俺はその瞬間、一気に駆け出した。全力で走り、エアライドに飛び乗ると、空中に上がりハンドルを限界まで倒した。
俺が乗ったエアライドは一気にトップスピードまであがり、時速百キロメートル以上の速さで進んでいく。俺は湖の奥へ向かって飛んで行った。湖の向こう側の山の麓に林があり、そこに隠れる作戦だ。
しかし、俺が飛び立ってからわずか数秒後、眩い光が背後に集まっているのがわかった。
飛びながら振り向くと、巨大ワシの嘴にエメラルド色の光が集中して行くのが見えた。
「やばい! 何かくる!」
恐ろしい気配を感じた俺は、急いで右側にハンドルを切った。
次の瞬間、全てを飲み込むかのようなはばゆい光が、放出されるのと同時なものすごい風の塊が、俺の側を通っていくのを感じた。
あまりの風の力に、エアライドごと吹き飛ばされ、俺は湖に落下した。
湖は丁度腰ぐらいまでの深さだったため。落下の衝撃を和らげてくれた。俺はすぐに立ち上がりととんでも無い光景が目に飛び込んできた。
俺が、向かっていた先の林が、地面ごとまるまるくり抜かれていた。直径二十メートルはありそうな穴が空いている。しかも、奥にある山もくり抜かれ、山の向こうの景色が小さくその穴から見えた。
(やばい、殺される)
俺はその光景を見て、自分の確実な死を悟った。巨大ワシの方を振り向くと、ワシはもう一度、今の技を放とうとしてるようだった。嘴に巨大な光のエネルギーが集まっていく。
(待ってくれよ! こんな小さな人間相手に、そこまですることはないだろう! 俺が何をしたっていうんだ! ただ湖のほとりで焼肉を食べていただけじゃないか!! 勘弁してくれよ)
数秒後に訪れる確実な死を前に、恨み節が次々と浮かんできてしまう。




