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ダイイングメッセージ

作者: 吉川緑

 ある愛煙家が殺された。施錠された部屋の中に倒れていた遺体と血痕の状況から、室内のドア付近で刺されたが、何とか逃亡。施錠まではしたものの、力尽きたと結論づけられた。


 注目すべきは被害者の死に様とその周辺だろう。


 彼は三本の煙草を咥え、いくつかの煙草を強く握りしめていた。周囲に数多くの煙草の箱と二つに折れたスマートフォンが落ちていることを踏まえれば、煙草はわざわざ選んだのだろう。


 それは、愛煙家ゆえの最期の一服か、それとも、何かを伝えたかったのかーー。


 ---

 -


「なるほど『ダイイングメッセージ』と言うわけですか」


 黒髪の人物はクイ、と己の眼鏡の位置を直すと、咥えていた煙草を口元から離して息を吐いた。


「そ、そそそ、そうです。死体のお腹と背中にはナイフが何度も突き立てられ、まるでそれはヒマラヤ山脈とマリアナ海溝のマリアージュ。侵食してくる硬い物と滴る生暖かい体液が渾然一体となって……。あぁ……。押し寄せる回想と薄れる意識はやがてゼロになるーー。そんな感じでしょうか」


 オドオドした態度の娘……まだ、20代だろうか。彼女が首を振るたびに、焦茶のふわふわとした髪が揺れる。


「……気に入らんな」


 鋭い眼光。口角をキリッと結んでどこかむっつりとした表情の中年が呟く。


「犯行が杜撰すぎる。不意の一撃なら首を狙うのが常識だ。よしんば防がれたとて、むざむざ手負いを逃すか? 俺ならもっと確実にやる。……殺しに不慣れな犯人だな」


「先に煙草の扱いをどうにかして欲しいですけれどね。喫煙者としての僕としては……こんな吹き戻しみたいに吸いませんよ。けれど、時間もありません。早速始めましょうか」


 その言葉に、焦茶ふわふわ娘とむっつり中年が各々の仕草で同意を示す。

 この黒髪眼鏡が仕切り役なのだろう。


「では、やりましょう。このミステリーの検討を」


 そしてーー。配信中への打ち合わせを。


 ----

 --


 三人が揃って顔突き合わせるのは、再開発著しい街から少し外れた、地下のバーだった。

 ぼんやりした照明にささやくようなBGM。コンクリ剥き出しの壁には、白黒のバンドステッカーが所狭しと貼られている。


 バーの奥に設けられた隠れ家的スペース。そこのテーブルに置かれた、香盤票やら台本、その団体を押し除けて、狩石(かるいし)は本題へと入った。


「早速コーナー案の細かいところですが、迷言(めいげん)さん、何か補足ありますか?」進行は大体いつもと同じです、と狩石は付け加えた。


 話を仕切るのは長黒髪の切れ長眼鏡。『狩石入歌(かるいしいるか)』だった。彼女は街に住み着くバンドマンみたいな装いで、紙の束を指す。細く伸びる指先には、鏡みたいな黒い爪が光っていた。


「ええと、容疑者のお名前を……あ。これです」


 続いて、焦茶髪の娘。『迷言飾利(めいげんかざり)』はカバンから付箋がびっしりのノートを広げた。中には、おびただしい数の登場人物名や思考の過程が書き込まれている。中でも、人物相関図はやたら複雑で、『偏愛』、『元恋人』、『現浮気相手』だのと、線が万華鏡みたいに交錯していた。


「容疑者は三人か。まぁ、それはいい。ただーー、」

「ただ?」


 言葉の間に、差し出されたホットスコッチに口をつけるのは『名取宗助(なとりそうすけ)』だ。

 彼は意志の強そうな面構えそのままの、仕事熱心な男だ。依頼されれば、メキシコのギャングから池袋のアニメ店に突撃することも厭わない、スティンガーな野郎だ。


「死の間際にわざわざ暗号というのが解せんな。百歩譲って死の確認をしないのはいい。突発的な犯行かもしれんからな。だが、部屋まで帰り着き、施錠までできたなら、被害者はもっと分かりやすい方法で誰にやられたかを伝えると思うが」


「いいえ。よく現場の状況を想像してください。折れたスマートフォンーーこれは被害者が刺されたとき、壊れてしまったんでしょう。だから、動転していた被害者は、自分が愛してやまない煙草に最期の言葉を託したんです。その方が、ロマンチックでしょう?」


 ああ、この流れはまずいーー。狩石は迷言へ視線を向けた。名取はミステリーにリアルさを求めている。かたや、迷言はロマンを求めているのだ。


 だからこそ、この二人は衝突しがちになる。


「……突然襲われ奈落に底にいる被害者は、かろうじて身体を動かしたんですよ」と迷言は微笑み、「失血性ショックの場合、手足はすぐに動かせなくなる。頭と内臓に血が回るからな。わざわざ煙草を探るのは非合理的だ」と名取は腕を組んだ。


「ダイイングメッセージ……ロマンでしょう?」

「いいや、せめて血文字だ。リアリティは譲れない」


 とりあえずーーと、狩石はふたりの間に割って入る。ここは誤魔化そう。本番中ならコメントが盛り上がるかもしれないが、打ち合わせ中では議論が盛り下がる。


「え、ええと……。ほら、コーナー入りのナレ中はそんな感じで感想入れてください。コメント拾ってもいいですし。ここはアバター出す……ってしておきますよ」


 二人の間を取り持ちつつ、配信が盛り上がるようにするーー。狩石は自らにそう役割を課していた。正直、ふたりが歌ったりゲームしたりしておいてくれれば楽なのだが、本業配信者でないのだからそうもいかない。


「まあ……狩石さんに言われてわな」

「怒らせると怖いですし」


 渋々矛をおさめるふたりに安堵しながら、迷言へ湿った視線を浴びせる。僕が怒るのは、締切だけなのだ。


「あ、あははー。そ、そ、そ、そうでした! 最近、コーナー案書くのが楽しくって……。でも、わたしは、そう。頭空っぽで盛り上げる! そう。は、配信中は……筆を置くんです! それで、締切は守る!」


 迷言は台本に何やら書き込みを加えていく。

 物書きは人前に晒すもんじゃないっすよねー、と言いたくなるのを狩石は飲み込んだ。これも、彼女が売れるためだ。


「そうだな。俺の役割はリアルな視点でぶつくさ言う、だったな。そうだ、コメントを拾おう。俺はロボットの役割だ……。だから、それでいて……冷酷な……連絡はすぐ返す……探偵役……」


 名取は考え込みながらグラスを傾ける。


「そうです。おふたりとも、うちの編集でも猛プッシュしてますから。どろ……じゃない。豪華客船の気分でいてください。で、ダイイングメッセージは犯人の名前……なんですよね?」

「そうですね。わたしは銘柄の名前、それを連想ゲームにしようとしていたんですけど……」


 迷言は何やらどぎついピンクのカクテルをストローですすりながら言った。

 やや伏目がちなのは、あまり暗号に自信がないことの表れなのだろう。


「煙草を暗号に使うのは面白いと思いますよ」


 自分の煙草をふたりに見せつつ、なぜなら、と狩石は続ける。


「銘柄名やニコチンとタールの量、それから長さの長短……他にも、略称なんかもあります。例えば、『KOOL』は『Keep Only One Love』の略と言われていますし」


「確かに。カナやアルファベット、数字なども表せる。長短でモールス信号などもできる」

「そ、そ、そ、そうなんです! 仮案はあるんですが、狩石さんがいるので、もっと良いのを考えようかとも思っていて」

「なるほど……。それならーー、」


 こんな暗号はどうだろう? 狩石は自分の煙草を何本かテーブルに並べた。


「こんな風に犯人の名前を記してみましょうかーー」


 ----

 --

 -


 既に、配信が開始され30分が経っていた。だというのに、画面は一面の砂嵐だった。


 時折、ザザッと音が響く。やがて、断続的な音が途切れると、おどろおどろしいフォントで、文字が流れ始める。


『愛煙家という言葉がある。これは単なる喫煙者とは区別され、自ら進んで煙を望む者と言えよう。


 煙草の歴史は古く、元々は『万病に効く薬草』と言われていた。貨幣の代わりとして、その葉を丸めた物を使っていた時代、地域もある。昨今では、一本ごとに『寿命が11分縮む』などと言われ文字通り煙たがられているが、とかく煙草は、古代は儀式に、かつては医療に、現代は嗜好にと変遷してきたのだ』


「へえー」と迷言の声。

「ロビンソンクルーソーにも、煙草の葉で頭痛を抑える描写があるな」などとは、名取だ。


『ともあれ、本題に入ろう。

 ひとりの愛煙家が殺されたのだ』


「またか……」と呆れたような名取の相槌が聞こえた。

「この番組、人亡くなりすぎですよね」迷言の言葉に、『草』『草』、とコメントが流れていくのが目に映る。


 狩石は息をすって、言葉を続けた。


『被害者は施錠されたドアから数歩のところで、やや異様な状況の中に倒れていた。


 被害者の周辺には不自然なほど数々の煙草の箱が散らばり、その右手には、26本の煙草が握られていたのだ。


 異変はそれだけにとどまらない。中でも特に異彩を放っていたのは、被害者が煙草を三本咥えていたことだ。さらに、はっきりと歯形がついた煙草が被害者の眼前に転がっていた。死後、落としてしまったのか……それとも。


 警察は防犯カメラや書き込み、科学捜査から犯人の候補を三人まで絞ることに成功していた。


 最後の決め手はおそらく、被害者が握っているのだろうーー』


 狩石はうやうやしくナレーションをこなした後、安堵の声を漏らしそうになるのを堪える。


『蓋開けます』


 そうして、名取と迷言にカンペを指差した。さすがに三人では忙しい。見切り発車の企画ゆえ余裕がない。さっさと増員したかった。


「はい! 謎の声Xさーん。いつもありがとうございまーす。そんなわけで始まりました。『本日の謎解き』のコーナー!」


 迷言が2Dのアバターを纏い、ばたばたと左右に揺れている。その横には、豆腐を重ねたような出たちのモノアイーー名取のアバターがある。


「む。今日はゲストいないのか?」

「いませーん。なぜならー?」


 迷言の言葉に、『予算がない』『低予算ww』『予算なーい!』などとコメントが流れていく。


「あはは。バレてますねー。Xさーん! 今度、友達誘ってくださーい」


 無理なのは知ってますよね! というのを苦笑いで返すと、ヤジロベーみたいな迷言はそのまま言葉を続けた。


「それじゃあ、謎解きの続きは名取さんにお願いしまーす!」

「では」、と名取は応じると軽く咳払いをして語り始める。


「咥えていた三本の煙草は『ナチュラル アメリカン スピリット』、『ラーク・マイルド ロング』、『ネクスト ロング』だ。それから、被害者の眼前にあった煙草は『ピース ショート』らしい。右手に握られていた煙草には強く握られ折れている物もあったがゆえ、銘柄は調査中だ」


『fmfm』、『言い方ショートピースじゃないのか』などとコメントが流れていく。


「ひとりめの容疑者は『青空 勲』被害者の隣人で、煙に対してたびたびクレームを入れていたらしい。ときには、『出て行かないなら殺してやる』などと、物騒な発言もしていたとか。ふむ……。日本ならいいが、メキシコではやめておいた方がいいぞ」


『草』、『ギャングは怖いからね』、『実体験w』


「つづいて、『山川 月』被害者の元婚約者だ。被害者とは10代からの付き合いだったものの、『煙草と私、どちらが好きなの?!』と、何度かトラブルになって破局していたようだ。アリバイが最も薄く、犯行時の行動が不明だ」


 迷言が表情を潤ませながら口を挟んだ。

「元婚約者? あぁ〜。愛憎の匂い……捗りますなぁ〜」『やめーやw』『いつもの』


 画面上の出来事に微笑ましい気持ちを覚えながら、名取の続きを見守る。


「最後に『野口・マール・七瀬』彼女は不動産屋で、近頃よく被害者の家へ訪れていたとのこと。犯行当日も打ち合わせの予定があったが、直前でキャンセル。……早く契約を決めたかった彼女は、何度か電話をした上で来訪。死体の第一発見者となる」


「はぁ〜。犯人は現場に舞い戻るとはよく言いますけどねえ。皆さんどう思いますか?」


 コメントが流れていく様子を見ながら、狩石は画面上に砂時計を表示させる。その次はアンケート機能で選択肢をポストする予定だった。


『わからん』『26=アルファベットは常識』『落ちてた煙草は関係ない?』『え、情報これだけ?』


「26本の煙草からは手放さない意思を感じますよね」

「確かにな。仮にコメント通りアルファベットだとすると、答えは三文字か? 落ちている一本も気になるが」


 しばらくコメントの流れとふたりの議論を眺めているが、決定的な回答はまだ出てきていないようだ。

『ヒント行きましょう』迷言は合図する。


「難しいという反応が多いようだな」

「そうですねえ。Xさん謹製だから、ヒント欲しいかも?」


 ふたりの振りに合わせて、一枚の画像を画面へ出す。


「ええと、読みますね。『26文字といえば? 煙草にはロング、ショートがある』」

 迷言が言い終わるのを待たずして、コメントが流れていく。


『アルファベットは確定』『長い? 短い?』『わかったわ。*****ね』『*****!!*』


 念のため、犯人名はNGしている。伏せ字で遊んでいるコメントもあるが、既に何人かは正解に辿り着いているのは明らかだった。

 130人もいれば、わかるのもいるかーー。狩石は複雑な気分でボイチェンのスイッチを入れる。


『おまえらに解けるかな。ははははは』

『Xw』『もっと難しいのにしろよ』『解けたわ』などと、狩石の声に反応が流れる。


 投稿したアンケート欄の均衡が破られていく。ここまで来ると、解ける解けないに限らず、正解へ流れるのは明白だ。引っ張りすぎてはいけない。


『解説へ』狩石は演者ふたりへ促した。


「どうですか? 名取さん。みんなは解けてるみたいですけど」迷言は器用に身体を傾ける。

「そうだな……。俺は、気に入らない……。し……殺されるかもしれないときはあった。銃を突きつけられたときもな」『ん?』『あっ』


 だがな、と豆腐ロボの目が赤く光る。


「俺は、どんなときでも犯人を暗号にしようと思わなかった。消えない傷を残すか、決定的な証拠を残すか。返り討ちにするかしか考えなかった。大阪でヤク………」


 想定外……いや、名取の暴走は想定内だがーー、とにかく放送コードに触れる単語を口にする前に、即名取をミュートする。


 前回はこうした昔の"ヤンチャな武勇伝"のせいでチャンネルに警告が来たのだ。次やったら動画削除どころかチャンネル継続の危機だ。


 赤目をビカビカさせながら左右に震える豆腐ロボに向かって、コンプラ研修……受け直しだ!と心で叫びつつ、狩石はもう一度『解説へ』と指し示す。


「あ、えーと。ロボさん音声トラブルでーす。わたしが、解説します。ほら、Xさんが散った煙草に混じって、『折れたスマホ』が落ちてたと言ってました。被害者にはちゃんと犯人を伝える術がなかったんです」


『言ってない』、『初耳』、『なにそれ』とコメントが流れていく。


 あれ? 違和感に狩石は台本を見返すと、頭を壁にぶつけた。

 やっちまったーー。台本の一節『折れて壊れたスマートフォン』を読み飛ばしていたのだ。

 狩石は両手を合わせて、ごめんのサインを迷言へ送る。


「う……な、な、なかったんです! だ、だから、被害者はね。自分の思いを……愛する! 煙草に込めたの!わかりますか?! 死の間際、そう。冷める身体と熱を持つ深い傷の鮮やかなコントラスト。それを堪えて、暗号を!」


『大丈夫か』『ロボミュート?』『大草原』


 全てが崩れるようなミスではない。けれど、これ以上イレギュラーはいらない。僕が音楽を諦めたのは、アドリブに弱かったからだ。普通に、楽譜通りに、予定調和で、いいじゃないか!


 ライブで失敗した記憶ーードラムが勝手にソロパートを追加して、歌詞が飛んだーー。

「歌わないのか?」と振り返って困惑するメンバーのたち視線がフラッシュバックして、大炎上、始末書、クビ……そんな単語が次々に浮かぶ。


「もうダメだぁ。どうせ僕なんかぁ」


 もう、どうにでもなってくれ。涙目の狩石は置物になっていた名取のミュートを解除した。どうせ地獄に落ちるなら、ひとりでも多く炎上させてやる……そう思った。


「そう。暗号だ。ひとつ! 被害者が握っていた26本の煙草はアルファベット! ふたつ! 落ちていた煙草は死後硬直などで被害者からこぼれ落ちたもの! みっつ! 暗号は、煙草の銘柄ーーその頭文字をその特徴に合わせ変化させること!」


 まるで、軍隊の交戦規則朗唱みたいに、豆腐ロボは絶叫する。


「そう! 血と愛と死の三重奏が導き出すのは! ロングイコール後ろにずらす! ショートイコール前にずらす! そんな、インビジブルなメッセージよ!」


 迷言は流れを止めないよう、名取に合わせて叫んだ。

 やがて、二人の絶叫が混ざり合っていく。


「「『P、ピース ショートは前にずらしO』、

『N、ネクスト ロングは後ろへずらしO』、

『L、ラーク・マイルド ロングは後ろへずらしM』、

『N、ナチュラル アメリカン スピリットはそのままN』、

 出てきたのは、O、O、M、N、これを並び替えると、ある単語が浮かび上がる!」」


「「つまり、『MOON』だ!」よ!」


『MOON』それは『月』を意味する単語。

 犯人の中で、『月』が関連する人物といえばーー、『山川 月』被害者の元婚約者だ。


『うおおおおお』、『うおおおおお』、『8888』


『大正解!』と真白い画像を放心状態の狩石はかろうじて貼り付けて、終了BGMを流す。助かった、たぶん。色々あったけど、きっと盛り上がった。


「とまあ、こんな感じだ。次回を待っていてくれ」

「はい! いつも、打ち切りに怯えてまーす。被害者が煙草をメッセージに使ったのは……もしかすると、『犯人より自分は煙草を選んだ』と、見せつけたかったのかもしれませんね! みんな、またねー!」


 こうして、どたばたの配信劇は終わった。


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 その後のことを話そう。

 僕は、翌日の夜、ひとりで残って配信のデータや反応をまとめていた。

 幸いなことに、上司からのお咎めも、視聴者からのクレームもなかった。


「再生数……いつもの倍くらいになってるな」


 アナリティクスに続いて、コメント欄を覗く。


『切り抜きから来ました。推理シーン熱かった』そんなコメントに僕は目を細める。


「これか」


 誰が作ったのかはわからない。けれど、推理シーンを切り抜いて加工したショート動画の再生数が10万を超えている。


「好意的に見られたなら、良かった、かもな……」

 狩石は暗いオフィスでひとり、ありがとうと呟いた。

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