番外編 ゆく年くる年
僕はクリス·モンサーム、このまま行けば次期モンサーム伯爵家の当主さ。
もうじき恒例の新年の集いがはじまる。今年も妖精公爵の一族が勢揃いだ。
きっとこれが僕にとって最後の新年の集いになるだろう。
来年の今頃は、もうここにはいないから。
誰にも言ってないけれど、僕も妖精は見えたり、声が聞こえたりする。もちろん啓示も受けることができる。
はじめて啓示を受けたのは二年前。その時妖精に言われたのは、僕は嫡男だけど、家を出ることになるから家は継がないって。
その時はびっくりしたけれど、今ならそれは本当だと思っている。だって僕はここを出て行くから。
一人っ子だった僕は、子どもの頃から鏡の前で一人芝居するのがお気に入りだった。
自分ではない誰かになりきって、一人何役もやるのはとても楽しかった。
以前街で見た大道芸で、無言劇を初めてみて、衝撃を受けた。
自分もこれをやりたい、これしかないって。
それから役者になりたくて、演劇学校へ行かせて欲しいと父に頼んで見たけど、もちろん許してはもらえなかった。
もう騎士の鍛練も手につかない。僕は貴族なんかに未練は全くない。領主にだってなりたくない。
両親には感謝している。
だけど、これはどうしても、自分でも止められない。
僕は絶対役者になるんだ。
『フレデリクがいるから大丈夫だよ』
妖精達は、自分がもし家を出たら伯爵家はどうなるのかと質問するとそう答えた。
フレッド兄さん······、小さい頃から僕とよく遊んでくれた、あの優しい人が継いでくれるの?
啓示で言われた未来の伴侶と成人するまで会ってはいけないらしくて、それでベシュロムからこの国へ移住してきたということを知って驚いた。
今は王女殿下の護衛に抜擢されて帰国しているけど、啓示の相手にはもう会えたのかな?
妖精公爵の一族って、なかなか大変なものなんだよな。
『フレドが君の両親の面倒も見てくれるさ』
はは、それなら、僕は心配しなくても大丈夫だ。
ごめんねフレッド、何もかも。
そしてよろしく頼むね。
今度の新年の集い終わったら、僕は必ず家を出て行く。
あの日見た大道芸の無言劇のような衝撃を、誰かに与えられるような人に、僕も絶対になるから。
(了)




