椿という女の子
人気が出るか、続きが思い浮かんだら書いていきます!
今から約100年前、ある場所に空から1本の刀が降ってきた。それがこの物語の全てのはじまりだと…歴史は語る。
その刀は空から地面に突き刺さると、波動を起こし、世界中の刀に命を宿した。そして命を宿した刀は人の姿と化し、今も我々の日常に潜み続けている…
「という訳だ。ここ、テストに出るから覚えておくように」
教卓の資料を見ながら、歴史の授業をする大山先生、通称「山ゴリラ」略して「ヤマゴリ」
そしてその話しを聞く耳持たずに机に突っ伏して寝こけるオレは、「八九師 神威」
年齢は16歳、若干前髪が目にかかる長さで、身体付きは自分で言うのもなんだが悪くは無いと思う。細身だがそれなりに筋肉も付いており、身長は170cmのごくごくありふれた健全男子高校生である。
ポスッという音と共にオレの頭に何かが当てられた。
何かと思い顔を上げると、そこには万遍の笑みだがどこか怒った様子のヤマゴリがオレを見下ろしていた。
「随分と気持ちよさそうだなぁ八九師、そんなにオレの授業が心地いいか?」
「……zzz」
答えるのすら面倒になったオレは、ヤマゴリの質問を華麗にかわしてもう一度机に突っ伏して寝ようとするが、ヤマゴリはまだオレに話しかけてくる。
「先生に気づかれてもまだ寝ようとする根性だけは認めてやるが、せめて寝言で返事しようとするなよ」
「ゼーーーット…」
「伸ばしゃいいとは言ってねぇよ!!!」
パコーン!!!
ものすごい音がオレの頭の上で鳴った。ヤマゴリが丸めた教科書でオレの頭を叩いて来たのだ。この令和の時代に暴力なんてなんて奴だ!ここは一言ガツンと言ってやろうとオレはもう一度身体を起こした。
「生徒の頭を殴るなんて!!せんせ…ヤマゴリはTPOが怖くないんですか!!!」
「それを言うならPTAだバカ!!!あと、わざわざ先生からヤマゴリに言い直すんじゃねぇ!!!」
ヤマゴリは頭に手を当て、呆れた表情をオレに見せる。
「そもそもお前、TPOが何か知ってんのか?」
「最後までチョコたっぷり?」
「そりゃト〇ポだバカ」
「どっちもそんなに変わらないじゃないっすか」
「大間違いだよコノヤロウ、お前は明日出す課題倍量な」
「ヤマゴリちゃん!!!?」
「ヤマゴリ言うな」
ヤマゴリは呆れながら教卓へと戻って行き、授業を進めだした。当然オレは、また机に突っ伏すことになったが
それから昼休み、やっとオレが待ちに待った昼食タイムがやってきた。
購買で買った菓子パンをモサモサと食べていると、2人の男が弁当と菓子パンを持ってこちらにやってくる。佐竹と上原だ。
「よぉ八九師、災難だったなぁお前、ブフッ」
「あのヤマゴリに真っ向から逆らうのなんてお前くらいだもんなぁ、ブハッ」
「笑いを堪えきれてねぇんだよオメーらは、で?何か用か?」
「なぁんだよ、友達と飯食いに来ただけじゃねぇか、そう邪険にするなよ」
「そうそう、友達と飯食うくらい、高校生なら普通だろ?」
2人はオレの前に椅子を持ってくるとそれに腰掛けて今日のヤマゴリの授業の話しをする。
「そーいやよぉ、今日ヤマゴリの授業で100年前に刀がどうとか言ってたじゃん?」
「あー、空から刀が降ってきて他の刀に命を宿したとかいう、うさんくせぇ都市伝説の話しだろ?」
2人がそんな話しをする中、オレは窓の外の校庭をジッと眺めていた。まぁ特に何も無いダダっ広い校庭なのだが、
「それがよォ、満更都市伝説とも言いきれないみてぇなんだよ」
「「は?」」
佐竹の言葉に、ついオレと上原の声が重なってしまった。
「なんでそう言いきれんだよ。あんなもん確信めいた事ひとっつもねぇじゃん」
「これこれ、コレ見てみろって」
佐竹は、スマホからネットニュースを開いてオレ達に見せてくる。
それは『速報!刀物語の伝説は本当だった!?』という記事が大きく書いてあった。
「フェイクニュースじゃねぇの?」
オレもそー思う、今どきニュースでさえ嘘をつく時代だ。こんな話、検索すればいくらでも出てくるだろう。
「それがガチみてぇなんだって、これに動画があったんだけどな」
その動画は、刀が突如光りだし神々しくなったかと思えば光りが消え、1人の男性がそこに居りそのままどこかへ消えていくという、シンプルで短い動画だった。
「「…嘘クセぇ」」
「何でだよ!!」
そりゃそうだろ、こんなの動画編集でいくらでも誤魔化せる。
「いいか佐竹、まずこの動画は何で刀を撮っていた?」
「それにこんな剥き出しの刀なんてどこにでもある訳じゃねぇし、しかもこうも都合よく人の姿になるのはおかしいだろ」
「お前ら、夢がねぇなぁ」
「夢ならさっきの授業で散々見たぞ、飛行石を使って空に浮かぶ島に行った」
「ラ〇ュタじゃん」
「ラピ〇タはそこにあったんだ!」
「夢の時点でねぇのと同類なんだよ!!!」
なんてバカな話しをしながら残りの授業も受け、放課後になり帰る支度をしていたオレに、佐竹と上原は声をかけてくる。
「八九師ぃ、一緒に帰ろうぜぇ」
「ゲーセンよろうぜゲーセン」
「わりぃ、今日はひとりで帰りてぇ気分だ。オメーらだけで行ってきてくれ」
そう言ってオレは、そそくさと帰る準備をして教室から出る。
「相変わらずの気分屋だなぁ」
「ま、いつもの事だけど」
「んじゃあオレ達だけでゲーセン行きますか」
「だなぁ」
オレはそんな事を言っている2人を背に、いつも通りの帰り道を歩く。
「アイツらも物好きだねぇ、こんなオレに付き合うなんて」
ガキィン!!!
「!!?なんだ!!!」
帰り道を歩くオレは、とある建物の陰から何かの金属音のような音を聞き、急いでその場所に向かう。
「確かここら辺から聞こえた気が…」
「いい加減オレの刀になれよ、かわい子ちゃん」
「!」
誰かの声が聞こえ、オレは物陰からゆっくりとそこを覗いた。
「人?…しかも2人」
1人は目つきの悪いいかにも悪人みたいな男と、もう1人は黒く艶やかな髪を腰まで伸ばし赤いリボンで髪を縛ったポニーテール姿で和服姿のtha大和なでしことでも呼べるような綺麗な女の子だった。歳はオレと同じくらいか?だが、男に追い詰められてボロボロだ。しかもあの男、刀持ってるじゃん!!?怖っ!
「はぁはぁ…ゲスが、妾が貴様のような下劣な者に従うわけなかろう、妾の主は妾が決める」
「強情な女だ、まぁそーゆーやつの従え方もオレは熟知してる。こーゆー時は力で分からせるのが1番だってなぁ!!!」
「くっ!」
男は刀を振り上げて高く飛び上がり、女の子に向けて刀を振り下ろす。
女の子は間一髪で横に飛び、男の刀をかわすが、もはや切られるのも時間の問題だ。早く警察に連絡を
「もらったぁ!!!」
オレがスマホを取りだし緊急連絡で警察に連絡しようとすると、男は刀を振り女の子に迫って来ていた。
今から警察に連絡しても間に合わない!!そう思ったオレは、咄嗟に身体が動いてしまっていた。
気づけばオレは全速力で走り出し、女の子を抱き抱え男の刀を回避していた。
ガバッ!!!
「何!!?」
「誰じゃ!!?」
「うおおおぉ!!あっぶねぇ!!!」
男は視点を女の子からオレに変えて、睨みつけてきた。
「あ”?誰だテメェ」
「通りすがりの仮面ライダーだ…とか通用しない?」
「するわけねぇだろ!!!」
男は刀を大振りでオレの胴体目掛けて振り払う。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」
紙一重で、オレに体当して女の子が攻撃から助けてくれた。
「愚か者!!!何故こんな危険な場所に出てきたのじゃ!!!お主まで巻き込まれては世話がないぞ!!!」
おっしゃる通りです。でも、
「悪いけど、危ない目に合ってる女の子残して見てるだけなんて出来ねぇよ!!!」
「え?///」
え?って何、えって…
「スキありぃ!!!」
オレ達の事などお構い無しに、男は刀を振り下ろしてくる。
「おぉぉぉぉ!!!?」
ガバッ!
「キャッ!!」
女の子に飛びつきながら刀を必死にかわすと、女の子は小さく悲鳴を上げ大人しくなる。
飛びついたのは悪かったけど、悲鳴あげることなくね?オレだって傷つくんだよ?
「あの反応…まさか、契る気か!!?」
千切る!?千切るってなに!?引き千切られるの!?怖っ!!!
「はぁ、はぁ、お主…じっとしておれ」
「え?は!?」
女の子が頬を赤らめてこちらを見つつ、顔を近づけてくる。
いや、この状況で何しようとしてんのこの子!!
「ちょっちょちょっ!!何を!!?」
「チィッ、契らせてたまるか!!!」
男がそう言って刀を構えてこちらに迫ってくるけど、女の子はそれどころじゃなさそうだ。
「ンムグッ!!?」
女の子の唇の感触が、オレの唇に伝わる。は?キスされたの?オレ
「くそっ!間に合わなかった!!」
キィィィンという音と共に、女の子が光り輝く、って何これ!?なんてRPG?
光りが収まると、オレの手にはさっきまでなかった1本の刀があった。
ホント、どこの漫画の世界に迷い込んだのかな?オレって
「何これ?」
『妾じゃ』
刀からさっきの女の子の声が聞こえてきたんだけど!!!
『今、妾とお主は契りをかわした。つまり妾はお主の物となったのじゃ』
…展開早すぎません?ついて行くのがやっとなんですけど
『妾に合わせよ。しからばお主に力を与えよう』
知らねぇ内に話しが進んでるし…しょうがないのでオレはさっきの女の子の声が聞こえる刀を構えた。
「チィッ、契りをかわした刀が他の持ち主に宿ることは無い…失敗したか、なら」
男は刀をもう一度構え、オレ達を見据えた。
「今ここでたたっ斬ってやる」
怖っ!なんでそんなに物騒なの!?
『案ずるな、妾も一緒じゃ、あんな小物になど負けはせぬ』
いや、さっきまで逃げ回ってただけなんですけどオレ達
「オラァァァ!!!」
『来るぞ!!』
「来るぞって言われても…うわぁ!!」
オレは、男のなぎ払い攻撃をしゃがんでかわした。
『なんじゃそのへっぴり腰は!!妾を庇った時の勇敢さはどこに行った!!!』
「無茶言うな!!あんな物騒な物振り回す奴に戦いなんか挑めねぇって!!!」
『お主も刀を持っているであろう!!条件は同じ…いや、やつの刀からは魂を感じぬ、つまり契りを交わさず魂の抜けてしまった言わば死刀じゃ、その分妾達の方が上じゃ』
いきなり専門用語みたいなのをズラズラと並べないでくれる?オレ頭パンクしちゃうよ?
「次は当てるぜ」
「ってか、刀なら卍解とかないの!?」
『ない』
「じゃあ三十六煩〇砲!」
『撃てぬ』
「かめはめ『無理』…」
もはや最後まで聞いてすらくれねぇし…
『よいか、妾を信じよ。さすればお主は妾の技を使えるはずじゃ』
「技って…」
「何ぶつくさほざいてんだ!!!とっとと死ねぇ!!!」
『妾を信じよ、そして妾に合わせよ』
「あーもう!分かった!今は信じる!これでいいな!?」
『うむ!』
女の子を信じた途端、身体が勝手に動き出し、大きく刀を振り上げた。
え?オレ何もしてないけど
『妾の掛け声に合わせよ、桜華流』
「お、おお桜華流!」
ズダン!!!
相手が刀を振り切るよりも早く、オレは相手の頭に刀を振り下ろしていた。
しかも、ものすごく強烈そうな一撃として
「『枝垂桜』」
「がっ…」
男は、オレ達の技を受けて倒れ込んでしまった。
え?殺しちゃった?
『案ずるな、殺してはおらぬ、刀身を見てみよ』
そう言われてオレが刀身を見てみると、刀の刃が上を向いていた。しっかりと峰打ちで攻撃したということだ。
「よ…良かった、オレはてっきり警察の世話になるのかと」
オレが安堵で膝を着くと、刀から人の姿に戻った女の子が歩み寄ってきた。
「このようなやつを斬ってしまうと、桜華流の恥じゃからな、ちゃんと峰打ちですませたわ」
「さっきから言ってる桜華流って」
「妾の流派じゃ、かっこいいじゃろ?」
女の子は伸びをすると、こちらに振り返ってニッコリと笑う。
「そういえば、まだ名乗ってなかったのぉ妾は椿という。お主の名は何じゃ?」
「や…八九師 神威」
「かむい…神威か…神の威厳とはかっこいい名じゃな!」
そんな大それた意味じゃないと思うけど、この際どうでもいい。
「今後はよろしく頼むぞ神威、いや、ご主人様」
「は?」
ものすんごい笑顔で、意味のわからないことを言う椿ちゃん…いや、この際椿でいいや、今後って何?ご主人様って何?意味がわからんのだが
「妾と契りをかわしたという事は、妾はご主人様の物になったという事、つまり妾は身も心も神威の物になったというわけじゃ」
椿は嬉しそうにオレに抱きつく、苦しい苦しい…死ぬ…
「おっとすまん、つい嬉しくなってやってしもうた」
そして、椿はオレに指を指してこう言った。
「これからは妾はご主人様の家で世話になることにしたから、よろしく頼むぞ」
「……はい?」
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