バスの車窓に……
朝。昨夜見た天気予報は当たり、息を吸うと、前日よりも冷えた空気が気道と肺に染みた。
通い慣れた道は今日も様々な人々が行き交っている。カバンとスマホを両手に足早に通り過ぎて行くスーツ姿の人や、慣れた様子で自転車で歩道を通行する人(道路交通法違反)に、マフラーに顔を埋めている高校生や、友人と楽しそうに笑いながら歩く中学生。
いつもの見慣れた光景だ。
そんな光景の中を何の気も無しに歩いていると、立ち止まっていたらしい小学生に危うくぶつかりそうになり、慌てて避ける。これはよそ見をしていた私が悪いので、ごめんね、と声を掛けてからその場から離れ、再び職場へと足を進める。ふいに風が吹いて、顔や首に絡むように撫でていき、その冷たさに首を竦めた。途中、近くのコンビニへ寄り、あったかいコーヒーと肉まんを買って、その温かさで暖を取りながら歩き、横断歩道へ向かった。タイミング悪く信号が赤だったので、歩道の内側で縁石から一歩半ほど離れて青に変わるのを待った。すると、手前の車線をバスが通り、視界いっぱいにバスの側面が入ってきて、そのバスの車窓に私の姿が映った。
それを見てーー驚いて息を飲む。
今見たものが何なのか――頭が全力で思考する。
質の違う冷たさが背中から全身に回って身体が動かない――動かせない。
焦る。
なんで。
どうして。
いつから。
そこにいる?
……目の前を通ったバス。
その車窓に映っていたのは私と――私の首に背後から腕を絡めている少女だった。