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2 一度目の人生は

 わたくし、シャーロット・ヨークは公爵家の令嬢として生まれた。


 隣国の王家の第二王女だったお母様の教育もあって、高位貴族として常に誇りを持って生きてきたわ。

 ここグレトラント国でも歴史あるヨーク公爵家の長女としてノブレス・オブリージュであろうと努めて、その使命感でいっぱいだった。



 その身分からも第一王子との婚約は必然だった。

 国王陛下とお父様はいつの間にかわたくしと第一王子の婚姻の話を進めていて、わたくしが12歳の頃に二人の初顔合わせがあった。


 わたくしは一目で彼に恋に落ちた。

 静かな月のように上品に輝く金髪、黄昏のような憂いを持つ黄金の瞳。その端正な顔立ちにわたくしは釘付けになった。

 彼の立ち振る舞いも王族ならではの優雅さと力強さが内包されていて、言葉も知的で美しく、わたくしはすぐに彼に夢中になったわ。

 恋は盲目、という言葉はわたくしのためにあるみたいだった。

 その日から頭の中のほとんどが第一王子のことでいっぱいで、彼に相応しい未来の王妃になるために一生懸命頑張った。

 その甲斐あって、わたくしは国一番の令嬢だと評されたわ。



 でも、それに比例してわたくしの悋気もどんどん膨らんで、行動も過激になっていった。

 第一王子の周りに群がる蝿たちをわたくしは蹴落として、何人たりとも彼に近付けないようにしたわ。彼ははじめは苦笑いしながらわたくしを嗜めていたけど、やがてそれもなくなった。



 契機は王立学園に入学してからだった。

 この国では16歳になると国中の貴族の子女は学園に入学しなければならない。わたくしも第一王子ももれなくその対象だ。


 ……そして、ロージー・モーガン男爵令嬢も。



 第一王子と男爵令嬢は学園で出会い、親密になるのに時間はかからなかった。

 二人は始めこそその関係を隠していたようだけど、だんだん周囲の目を気にせずに懇意にするようになり、第一王子が18歳になって立太子したあとは男爵令嬢こそが王太子の婚約者だと誇示するような振る舞いになっていった。第一王子の取り巻きたちも男爵令嬢をあたかも未来の王妃のように扱った。



 わたくしは激怒した。


 国王陛下が認めている正式な婚約者は自分なのに、ぽっと出の下位貴族の令嬢が王太子の婚約者然としていることが許せなかった。

 身体中を炎で包み込んだようなわたくしの苛烈な悋気は爆発するように周囲に四散していった。

 もともとの公爵令嬢としてのプライドも手伝って、わたくしは周りに厳しく当たった。学友にも使用人にも、全てに向かって。


 気が付くとわたくしは忌み嫌われて完全に孤立していた。


 まるで大きな力が背後で働いているかのように、男爵令嬢の王太子の婚約者としての地位がどんどん固まっていっていた。



 そして止めは学園の卒業パーティー。

 わたくしは衆目の前で王太子に婚約破棄をされ、ヨーク公爵家もろとも冤罪を着せられて、最後は処刑されてしまった。





 一体なにが悪かったのだろう……。



 第一王子と男爵令嬢の大恋愛はさておき、確実に原因となったの一つはわたくしの立ち振る舞いだと改めて思う。

 わたくしは二人の仲の嫉妬心と王太子妃教育の重圧で他になにも見えていなかった。

 その結果、周囲の人間はどんどん離れていって最後は第一王子の策略に嵌められてしまったわ。我ながら愚かね。



 悔しい。



 叶うならば、もう一度やり直したい。

 そして、自身とヨーク公爵家の潔白を勝ち取りたいわ。



 そのためなら、わたくしは――……。

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