09.仲間の仲間は他人?
ハクアは通話をきる。
「今、ライを殺したって」
ソリドはハクアに問う。
「ああ。死んだ。ライを殺した奴も目的地は同じだろう。「光」が楽しみだ。なあ、鼠」
木に縛られた男、小崎奈良。手と足は凍り付いており身動きが取れない。
「言ったはずだ……。俺はなにも話さねーよ。俺たちはここで出会った。それまでの人生なんて知らない。ただ互いに信頼し合っている。仲間だと思っている。俺がここで仲間のことを口にしちゃあいつらに恨まれちまう」
「恨まれる? いいか、恨まれるのは貴様の言葉じゃない。我々に捕まった貴様自身だ。貴様の実力が行動に伴っていなかった、そのせいで貴様の仲間の情報が漏洩する。今、貴様の体の自由は私のものだ。貴様が捕まった時点で役割は終わった。貴様は一度死んだのだ」
小崎は鼻で笑う。
「馬鹿を言うな。どんなことがあっても俺が仲間について話すことはない。話す理由にもならない。お前が思ってるほど人間関係っていうのは甘くないんだよ」
ハクアは拳を強く握る。
「貴様が仲間をどう思おうと仲間が貴様をどう思っているかなど分からない。だから役割を終えた時点ですべて吐けばいい。今の貴様は死人だ」
拳が小崎の体の中心を打撃する。
「ガァ……」
血が地面に飛び散る。そしてハクアの大きな手が小崎の首を掴むがすぐに離れる。
「私に二言はない。ゲームオーバーだ」
小崎自身なにが起きているのかわかっていないだろう。小崎の周りに冷気が漂い始めたかと思えば首から一瞬にして全身が凍りつく。
「もう少し粘れば吐いた可能性があったのでは?」
「二度聞いてはかないものははかない。はく奴はすぐにはく。ここに連れてくるまで時間はあったのだ。それ以上は時間の無駄だ」
ソリドは凍り付いたその死体を見て言葉を漏らす。
「まるで魔法ですね」
「表に出されている技術は本来の一割にも満たない。倫理観や信憑性、己の価値観に囚われた人間は疑うこともできないというわけだ」
「そうですね……。それでハクア隊長、予定通り「光」へ入った後はどうするのですか?」
「入った後? 入るまでの過程がまだ残されている。先のことを考えすぎるな、今目の前をみろ。そうしなければ気づかぬうちに死ぬぞ」
「すみません」
ハクアは横を見る。
「「光」に行くにつれ腐敗体が多くなっている。お前らもだ。先を考えるな。誰かに助けてもらうことができると思うな。目の前の敵に集中しろ、いいな?」
「はい」
歩き出そうとしたハクアは一度足を止める。
「お前たちは先へ行け。私は死体を回収してから合流する」
「ハクア隊長、護衛をつけた方がいいのでは?」
ソリドは言う。
「いらない。資料を少しとってくるだけだ」