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青と光るとあのカメラ  作者: くわばらクワバラ
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07.彼女との再開

 汗が延々と湧き出ると勘違いするぐらいの木々の隙間からの日の光。それと乾いた風。


「久しぶりだよ、こんなに走ったのは」


 伊能は木に寄り掛かり息を整える。


「なんとか逃げ切ったか……」


 膝に両ひざに手を置き乱れる呼吸を落ち着かせる陽香。


「そうだな。しばらく奴らは追ってこないだろう」

「奴らは何者なんだ。そのハクアという奴、体から冷気を出していた。本当に人間か?」

「間違いない、人間だよ。ただ普通とは違う。体の六割は人工物できている。それが故、普通ではできないであろうあの体を手に入れた」

「あなたがやったのか」

「いや、私一人ではない。私が奴の部隊に入ったときには既にあの体だった。その後のメンテナンスには大きく関わったが」

「どうにかして奴を殺すことは?」

「不意を突いても難しいだろう。それにハクア、奴は頭も切れる。奴の部隊のモットーは独りで完結できること。奴の部下は戦闘のセンス、技術、把握能力、それに加えて医療、化学、それらに関する知識を完璧に身に着ける。つまり奴だけじゃない。周りの男たちを倒すのも一筋縄ではいかないということだ」


 陽香は整えた息を大きく吐く。


「見つからないようにするのが無難か」

「ああ。それに私が逃げたことで捜索をされるだろう。ハクアは来ないだろうがライかソリドが来る。奴らはハクアと同レベルで危険だ」

「あのガスマスクの女と刀を持ってる男か」

「ソリド。奴は実験により意図的にここの空気に感染している」

「あえて?」

「そうだ。彼は銃弾の軌道を目視できるほど感覚が狂っている。人間が努力で手に入れることができる領域を優に超えている。ソリドにとって人を殺すことは容易いことだ」

「それにもあなたが?」


 伊能は空を見上げる。


「そうだ。当然メリットが大きい分、代償もそれなりにある。定期的なメンテナンス、それに命を削って感覚を研ぎ澄ましている。そう言っていいだろう」

「それじゃあ出鱈目に強い人間が簡単につくれるということ?」

「それは違う。メンテナンスと言っても簡単なことじゃない。長い時は二十四時間かけても終わらない。それに一番の問題はこれまでに彼以外の成功例がないということだ」

「成功例がない? 聞いた話だとここにいればだんだんと体は変化していくと」

「その通り。徐々に徐々に体は蝕まれ、突然変異がいとも簡単に起こり続ける。結果、一時的に名前通りスーパー人間が誕生する。だが突然変異は続く。そうして体がそれについていかなくなり人間ではなくなる。既存の技術でそれを調整したのだがほとんどが失敗。彼は人間であることを維持できる唯一の例だ」

「なるほど……」

「そしてそのウイルスの名前が「光ウイルス」」

「光ウイルス……」


 伊能は陽香を頭からつま先までをジロリと見る。


「だから私は君が気になった。その頭の傷、いくら突然変異といえ治る傷じゃない。それともう一つ気になったことがある」

「……」

「馬車の中で君は誰と話をしていた?」

 陽香は黙り込む。

「もしかして君は見えていたんじゃないのか?」

「何がだ?」

「カメラの……」


 人の気配。


「「動かないで」」


 自然の中に声が響いた。


「一露陽香。なんで生きてるの?」


 そこにいたのは陽香が殺し損ねた女。


「木鈴さん……」


 陽香は声の方に顔を向ける。


「気やすく名前を呼ばないで……。あんたは死んだはず……」

「生きているからここにいるんだろう」


 木鈴は顔を横に振る。


「そんなことを聞いてるんじゃない。頭に銃弾が当たればいくらここの人間でも死ぬはず」

「聞いた限り彼は特別のようだ。自分の持っている常識を陽香君に当てはめるべきではない」


 伊能が話す。


「あんたは?」

「私は奴らに見捨てられた老いぼれだよ。君も「光」へ行こうとしているんだろう? 目的は同じ。ならば協力することはできないか?」

「協力? その男は私たちを殺そうとした。そんな奴と協力なんて無理に決まってる」


 木鈴は陽香を睨む。


「木鈴さん。すまない。けど俺も冷静ではなかったんだ。銃を下ろしてくれないか」


 木鈴は拳銃を強く握る。


「そんな簡単な言葉信じられるわけがない!」


 生暖かい風が木々を揺らす。そして横の方で草木を踏みしめる足音が聞こえた。


「誰?」



 木鈴の視線の向こう、そこには腐敗した人間。ゆっくりと三人の方へと近づいている。


「木鈴さん! 後ろも!」


 いつの間にか囲まれていた。腐敗した人間が数十体、囲まれた三人は敵から逃げるように無言で背中から距離を締める。


「木鈴さん、俺らは何も武器を持っていない。このままじゃ一方的に殺される。銃を渡してくれないか?」


 木鈴はベルトにかけたもう一つの拳銃を守るように触る。


「さっきも言ったはず、あんたは信用できない」

「信用できないってそんなこと言ってる暇じゃないだろう!」 


 腐敗体はもう目の前まで来ている。


「くッ……」


 触れていた拳銃を無言で、顔を見ることなく差し出す。


「変な動きをしたら撃つ」

「ああ」


 二人は近づいてきた腐敗体の頭を確実に狙い次々と倒していく。

 順調に数は減っていき最後の一体の頭部を吹き飛ばし二人は息を整えた。


「木鈴さん、ありがとう。助かったよ」

「……」


 木鈴は表情を変えない。


「すぐにハクアの部下が銃声を聞きつけてここへ来る。早くここを……!」


 言葉を発した伊能。大きな銃声と共に伊能の左の太ももから下が吹き飛ぶ。


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