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青と光るとあのカメラ  作者: くわばらクワバラ
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06. 白衣はなんでも知っている?

「う……う……」


 それからしばらくすると縛られた誰かが唸るような声を出す。

 陽香は声のした方を見る。どうやら声の主は白衣を身に着けた男のようだ。


「静かに」


 陽香はそう言って男の目隠しを外す。男は上下左右と眼球を動かす。


「すぐに慣れる」


 陽香は男の口に張り付けられたガムテープを剥がした。


「……はァ……。ありがとう。鼻づまりが酷いものでね。耐えられなかった」

「あなたは?」


 二十歳から三十歳くらいの男。


「その前に私の眼鏡がどこかにないか」


 陽香は男の周りを見る。


「ないな。それであなたは誰?」


 男はなんとか馬車の壁に寄り掛かる。


「私は平凡な研究員。元はね。今は見ての通りだ」

「どうして?」

「必然的な貧乏くじを引かされてしまっただけだ」

「この馬車はどこに向かっている?」


 白衣の男は眉をひそめジロジロと陽香を見る。


「私は考えた。私がここにいることよりも君がここにいることの方が不自然であると。だから私からも質問をしよう。君は誰だ?」

「俺はここの住人。ここに来る奴らが邪魔だったからこうして潜入している」


 用意されていたかのような回答。男はジロリと陽香の全身を見る。


「勘違いしないでほしい。私は争いたくて聴いているのではない。それを前置きとさせてもらう。君は嘘をついている。その血、傷口だったもの、君は一度死んでいるだろう?」

「言った通り俺はここの住人だ。少しの怪我ならどうにでもなる」

「少しの怪我? それが? 私は研究員だ。ここについてよく知っている。当然すべてを知っているなど神のようなことは言えない。ただ私よりここについての知識を身に着けている人はいないだろう。その私が言う。君のその怪我、生きられる人間は資料にはいない」

「……」

「何か言えない事情があるんだろう? ならば言う必要はない。ただ私が元研究者として気になっただけだ。どの道を辿っても私は死ぬ。ならばどう転がろうと知ったことではない」

「申し訳ない。ただ俺も整理しきれていないんだ。話せるときがきたら話をする」


 男は陽香から視線を外す。


「まだ名前を言っていなかった。私は伊能(いのう)(ひで)(ゆき)だ」

「俺は一露陽香だ。よろしく頼む」

「ああ。それで陽香君、君の質問に戻ろう。この馬車の行く先。それは「光」だ」

「光?」

「私も資料に書いてあることしかわからない。「光」、そう書いてあった。ここにおける核を成す場所。どこにあるのかはわからない。唯一分かるのはそこにアレがあるということ」

「アレ……」

「カメラだよ。すべての元凶。持ち主の感情、意識、欲望、それらを増幅させると言われている。ハクアはそれを奪おうとしている」

「ここはどこなんだ?」


 伊能はつばを飲み込む。


「分からない。分かっているのは人の感情、意識、欲望、目に見えないものが関係しているということ……まずい、奴らが来る!」


 揺れが止まった馬車。二人はうつ伏せで床に伏せる。

“ギィ”と音をたてて開く扉。外は明るい。暖かい風が馬車の中へ吹き込む。


「さて、まだ死んじゃいないな?」


 ハクアは馬車の中を嘗め回すように見回す。


「伊能」


 動かない。


「伊能英行」


 ハクアは馬車の中へ入り白髪交じりの伊能の髪を掴み顔を上げさせる。


「ハクア、元気そうで何よりだ……」

「フッ」


 ハクアはそのまま壁へ投げつける。


「強い薬を入れたんだがな。なぜ意識がある?」


 伊能はなんとか楽な姿勢をとる。


「……簡単だ。相殺させることができる薬を所持していた」

「口の中、歯の裏か?」

「その通りだ。だが私一人の意識が回復したところで問題はないだろう」

「問題が生じるか生じないかじゃない。私が気に食わないということが問題だ」


 ハクアは伊能の髪を掴み腹に拳を叩きつける。


「グゥ……!」


 そして首を掴む。ハクアの体から冷気が溢れ出る。徐々に伊能の首が凍り付いていく。


「隊長! 死んでしまったら困ります」


 声をあげるライ。


「わかっている」


 手を放す。


「これはコミュニケーションだ。ああ、私の元部下としてお前に質問しよう。この先、例の場所にたどり着き複数の人間を殺せば、「光」は現れるな?」

「ハクア。お前の言う通り私は元部下だ。質問に答える義務はない」


 もう一度腹を打撃される。


「さすが私の元部下。それぐらいタフじゃないと困る。ただこの私を裏切ったのはお前だぞ? 部隊の情報を上の連中のところへ持っていき、害を与えた。ただ私はお前を気に入っている。お前は最後までとっておいてやる」

「ハクア……」


 去ろうとしたハクアを伊能が呼び止める。


「なんだ」


 振り返るハクア。


「私の眼鏡はないのか」

「眼鏡? 知らん」


 ハクアはライの方を見る。


「二分後ここを後にする。第二休憩地点では止まらない。そのまま例の場所へ行く。疲労を残すな。万全を期せ」

「わかりました」


 ハクアが扉を閉めようとしたとき一つの銃声が鳴った。


「あ……ァア」


 ガスマスクをした一人の男の頭が吹き飛ばされている。そしてそれに続き次々発砲する音が自然の中に響き渡る。

 ガスマスクの男たちは背中から金属製の折り畳み傘のようなものを取り出し展開する。銃弾は勢いよく弾かれ地面に落ちる。


「鼠が。くだらん」


 ハクアへ向う銃弾は直撃する直前で速度を落とし凍り付く。しかし銃声は止まらない。


「少しだけじっとしといて」


 陽香は伊能を縛るロープを解く。


「なにをするつもりだ?」

「今のうちにここを出る。俺もその「光」へ行く必要があるから。そこまで案内してくれないか?」


 伊能は自由になった手足を動かしながら言う。


「君に協力する義務はないが、面白そうだ。協力しよう」


 陽香は頷きタイミングを見計らう。


「今だ。行こう」


 扉の隙間から二人は道の先へ飛び出す。


「ハクア隊長! 伊能が!」


 ガスマスクをした一人の男が叫ぶ。


「死体……? ライ。部下二人連れて伊能を追え。鼠どもは我々で十分だ。あの死体、生きていたか。面白そうだ。必ず生きたまま捉えろ。お前ならできるな?」

「勿論です。二人を捉え第二休憩所経由で次第合流します」


 ハクアは首を振り合図を出した。



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