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青と光るとあのカメラ  作者: くわばらクワバラ
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04.少女を襲う黒い影

 一万二千六百三十三、一万二千六百三十四、一万二千六百三十五、一万二千六百三十六。数字が頭の中で増え続ける。

 一万二千七百。目が開いた。

 顔にかぶせていたタオルを右手でずらして音の立たないように上半身を起こす。周りを見渡し鼻から大きく空気を吸うと口から吐き出す。タオルを地面に落とし、足跡をたてることなく江二の前へと近づく。

 空はまだ暗い。星が輝く夜。

 無防備で眠りについている江二。腕に自分の体重が乗るようにし態勢を整える。

そして喉を掴んだ。

両手で地面に押し付けられ絞められた状態。江二の目は開いたが状況を理解することはできない。


「……いち……ろ……」


 声にならない声を吐きながら陽香の腕を掴み抵抗するがその腕はビクともしない。


「……」


 四十秒ほどで江二は動かなくなった。それから数十秒経って手を離す。江二が身に着けている拳銃、ナイフ、懐中電灯を奪いポケットの中にしまって昨日歩いた道を辿る。

 ゆっくりと緩い風に揺られる自然と同化するように歩く。すぐに昨日夜を過ごした場所に到着する。雨風をしのぐ木の枝の束の奥に彼女は横になっていた。

 ポケットの中のナイフを握る。一歩ずつ丁寧に足を踏み出す。そして刃先を彼女へと向け顔

の横に両膝をつける。そして慎重に喉元まで近づける。肘を引き勢いをつけたその刃先を突き

出す。


「……!」


 陽香の手首が掴まれた。


「一露陽香。なんの用?」


 正面。木鈴まみは陽香の右腕を強く握りながら言う。


「やっぱりそうだったんだ。木鈴さん、君が一番危ないと思ってた」

「江二は?」

「俺がここにいるってことはどういうことだろうね」


 陽香は右手に力を入れる。木鈴は瞬時に忍ばせたナイフを左手に握り陽香の横腹へと突き刺

す。


「クッ!」


 陽香が怯みを見せた瞬間に地面に手をつき立ち上がり顔面に打撃を入れる。そのまま体を捻り右足を軸として左踵を陽香へと振りかざす。


「少しだけ油断しちゃったよ」


 陽香は木鈴の足を手の甲で受け止め、足首を掴み態勢を崩させる。木鈴の抵抗を避け地面に押し倒す。そして首を両手で地面に押し付け強く握る。


「クゥッ……!」


 木鈴は足をばたつかせ陽香の手首を爪で引っ掻くが陽香の力が弱まることはない。


「ごめんね」


 陽香は目の前の人間の苦しむ姿を目に焼き付け笑みを浮かべながらぽつりと言う。木鈴の意識が消えかかったそのときだった。


「ナ……!」


 背後からの襲撃。石が陽香の頭に直撃する。


「……江二!」


 木鈴が咳を吹き飛ばし声に出す。


「まだだ」


 江二はサッカーボールほどの大きさの歪な形の石を振り上げその場に倒れこんだ陽香の頭めがけて振り下ろす。陽香は横に転がり地面は凹む。


「なんで避けられるだよ。当てるとこミスったか?」


 陽香はふらつきながらその場に立ち上がる。


「江二……。なんで生きてるんだ……?」


 江二はわざとらしく笑う。


「外れくじをお前が引いた。それによ、ここで生きてるということはどういうことか分からないのか? もう普通じゃないんだよ」


 陽香はポケットから拳銃を取り出し構える。それと同時に陽香の背中から血が溢れる。


「木鈴……」


 木鈴の手には赤に染まったナイフ。陽香の歯が強く締まった。陽香の手から拳銃がスルリと抜ける。後ろを向き、ポケットからもう一つ、ナイフを取り出して木鈴へと襲い掛かる。

“ドゥン”と鈍い音が鳴る。

 陽香の頭の中を銃弾が駆けた。

 陽香は顔から地面に倒れ動かなくなる。その光景に木鈴は目を逸らす。


「生きた人間を撃つのは気分が悪いな」


 そう言って江二は陽香へ近づく。そしてもう一度銃口を陽香へ向ける。


「まだ撃つの?」

「こいつももう、普通じゃないかもしれない。念のためだ。もう一回ぶち抜く」


 撃とうとしたそのとき遠くの方から声が聞こえた。


「江二! 木鈴! 奴らが来てる! ここから離れるぞ!」


 江二は声の方を見た後目の前の死体に目を移す。


「江二。行こ」


 木鈴を見た後もう一度目を移すが拳銃をしまう。


「行くか」


 二人は走りだした。



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