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砂漠のスターダスト  作者: violet
8/25

オアシスでの誓い

朝の光が射し込んで、ハイデマリーは目を覚ました。

指輪が目に入った。

光にかざしてみる。

小さなオパールの指輪。

ウェディングドレスと共に用意されていた、古い指輪。

母が嫁いで来た時には、父が身に着けたと聞いた。


父に手を取られて大広間の絨毯の上を歩いている時、指に感じた違和感。

熱かった、でもそれを言う余裕はなく、これから結婚式を挙げる、ただその思いだけだった。


その存在を感じたのは、砂漠に入った時。

フェルホルムの王太子の馬が向かう方向に馬を向けた時、指輪が熱くなった。

指輪が熱くなる方向に王太子は常に向かった。


そして、王太子の腰にある剣に石の大きさこそ違うが、同じ石が飾られていると知った。

星屑を散りばめたようなオパール。


お父様。


王の責務とはいかほどなんだろう。

いつも険しい顔をしていた王が、手を引く時に優しい顔を見せた。


殺された。

あんなに血を流して。

父を助けることもせず、私は逃げて来てしまった。



一点を見つめたままハイデマリーは、身動きしない。

ハイデマリーが起きた事に気が付いていたディートフリートは、お茶の入ったカップをそっと置くと、ハイデマリーの視線が動いた。

その頬には涙が流れている。


ドクンドクン・・・

ハイデマリーに見惚れるディートフリートは、自分の心臓の音がうるさくて息さえ苦しくなる。


「見苦しくってごめんなさい。

いつもは、こんなのじゃないのよ」

ハイデマリーは笑おうとするが、涙が止まらない。

涙を拭おうとして、ディートフリートに着せられたディートフリートの上着の袖をまくる。

ハイデマリーには大きい上着を涙で汚してはいけないと思っているようだ。

ディートフリートは、自分の上着を着ているハイデマリーが愛しくてしかたない。


「泣いて当たり前だ。

君は逃げただけでも勇敢だ、よく自分の気持ちを抑えた」

ディートフリートは、カップをハイデマリーに持たせて手を添える。

「飲んだらいいよ。

気持ちが落ち着く」

ディートフリートとハイデマリーの視線が絡まる。



「殿下」

後ろから声がかかり、ディートフリートは振り返りもせずに答える。

砂漠のオアシスにいるのは自分達しかいないからだ。

「なんだ?」

「食事の準備ができております」

食事と言っても、干し肉を固パンに挟んだだけのものだが、追手から逃れている間に用意したには十分すぎる程だ。

オアシスに来れたおかげで水には不自由しない。


ディートフリートはハイデマリーをそっと支えて、立ち上がらせる。

ハイデマリーは、花婿に裏切られ、父親を殺され弱っている。

付け入るなら今だ、ディートフリートは好機に躊躇することはしない。


侍女のカルロッタは心配していたのだろう。

「姫様、ご気分はいかがですか?

少しは食べれますか?」

「ありがとう、カルロッタ。

貴方はちゃんと寝れた?」

「はい、騎士様が交代で番をしてくださり、私は休ませていただきました」

カルロッタのドレスは砂で汚れ、髪も乱れ、眠ったというには疲れがよくわかる。


「カルロッタ、ごめんなさい。

私と一緒に逃げなければ、貴女は実家に戻って暮らせたのに」

ロレンツォが貴族の全てを粛清するはずもない。

マヌエル王国の属国になったとしても、反抗しなければ多くの貴族が国の執政に必要だろう。


反抗した貴族はすでに処罰を受けているかもしれない。

大広間でも、私を逃がすためにたくさんの人が戦っていた。


ガシッ、カルロッタがハイデマリーの手に手を添える。

「姫様。

謝らないでください。

私は自分の意志で来たのです。

馬も乗れませんが、誰よりもお仕えします」

それは貴族の総意のように思えて、ハイデマリーはカルロッタが添えた手に手を乗せる。

「気弱になってました。

ありがとう、カルロッタ。

苦労かけるけど、絶対に取り戻すことを諦めないわ」

二人で泣きながら誓い合っている姿は感動的なのだが、ディートフリートは複雑である。

ハイデマリーを勇気づけて、自分がカルロッタのポジションにいる予定だったからだ。


「王太子殿下」

ハイデマリーが居住まいを正して、ディートフリートに向き合った。

「ここまで助けていただいて、ありがとうございます。

姫でも無くなった私に、お渡しできるものなど何もありません。

国を取り戻した時の約束もはっきりした事は言えません。

それでも、殿下しか頼れる人はいないのです。

今の私に出来る事は何でもいたします。

どうか、お力添えをお願いします」



ディートフリートは、悲壮な覚悟のハイデマリーが自分を頼ってくれたことは嬉しいが、ここで結婚してくれ、と言ったら国目当てか、身体目当てと思われる。

結婚式であんなことになったのだ、今は結婚という言葉はダメだろう。

それでも言わずにおれない。

「いつか俺の花嫁になるということを、考えて欲しい」


ハイデマリーはピクンと身体を震わせた。

「何でもするといいました。

いつかではなく、今すぐにでも。

今の私は王女でもなく、花婿に裏切られた傷物ですから」

まるで愛人になるかのように言うハイデマリーを庇うように、カルロッタが前に出ようとする。


「いつか姫が俺を好きになった時でいいんだ。

俺のはもう貴女が好きだから」

間違ってもロレンツォと同じような男と思われたくない。

「だから、約束する。

俺は、貴女に好きになってもらうように努力する。

それの近道は、貴女に協力することだと思っている」



「結婚式で初めてお会いしましたよね?

あれから今までで、どこに好きになる要素があったかわかりません」

好きだと言われたハイデマリーが、不思議そうに言う。



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