転生先でも梅
暖かい腕の中で私はゆっくりと意識を取り戻した。
————そうか、私は転生したのか。
目を開けると質素な、それでいて落ち着きのある部屋が目に入る。
正直、お世辞にも豪華とは言えない風景である。
(こういう転生って、使用人の人がいる貴族の家とかじゃないのね…。)
そんなことをぼんやりと考えていると、横から私の顔を覗き込む男性の姿。
絶世の美男子、とまではいかないが、なかなか整った顔の男性である。
「あ、シラン。プラムが目を開けたよ。」
嬉しそうな、やけに弾んだ声で男性はにこやかに私を見ている。
(シラン?プラム?……まさか。)
私が考えを固める前に、シランと呼ばれた人物が声を出す。
「え、本当?」
上から覗き込む女性と目が合うと、胸がほっこりと温かくなるのを感じる。
女性も私を見て、花のような笑顔でほほ笑んだ。
「ほんとね。可愛い顔をしているわ。」
「君に似て可愛くなるはずだ。」
「目元がダリアに似てくりくりね。」
私を見て、いちゃいちゃしながら話す男女を見て理解する。
きっとこれは、私の両親であろう……と。
そして二つほど私は気づいたことがある。
まず一つに、先ほど呼ばれた【プラム】という名前が今世の私の名前なのだろう。
そして二つ目。
【プラム】というのは、英語圏では梅のことを指す単語であったはずだ。
私の転生前の名前は、梅である。
————私は異世界に渡っても尚、梅の名前を持つ人間に生まれたらしい。
正直、せっかく転生するのならば、百合とか桜とか、もっと若々しい名前に生まれたかったと思うのは名付けてくれた両親に失礼だろうか。
目の前でほほ笑む両親を見て、私はそっと肩を落としたのだった。