異世界言語習得
肩をがっくりと落とし、床に座り込んだままの私に向かって、神が迷ったような口調で話し始める。
「まあ…。あんたは本来ならここには来なかった筈じゃし、こちらにも落ち度はあるしのぅ。わしから一つ、あんたにギフトを授けよう。」
「…え?」
「チート能力、と言うほどのものでは無いだろうが。あんたのような年寄りが…見知らぬ世界で生きていくための手助けになる様に、な。」
流石にこちらの不手際もあった事じゃしの、と付け加える神を見て一気に気持ちが上昇する。
「あなた、優しいじゃ無い!さすが神様なだけあるわね!!」
「あんた、何て調子の良い…。」
引き気味に神が言葉を発しているが今の私には気にならない。
チート能力では無いとしても、【神からのギフト】もそれに匹敵するほどのものである。
というか、【チート能力】=【神からのギフト】とまで言えるであろう。
「まあ、よい。わしからのギフトを汝に授ける。ギフト…【異世界言語習得】」
神の手から光が放たれ、私の体を包み込む。
「では、達者で頑張るんじゃぞ。」
「え、ちょ、これで終わり!?」
「その通りじゃが?」
何か他にあるのか?と言いたげな神。
いや、あるだろ。ありまくるだろう。
「いや、ごめん。異世界言語習得って、それ普通に付けてくれるべきなんじゃないの?」
「あんた、赤ん坊の頃から日本語が出来たわけじゃなかろう?それは異世界でも同じよ。このギフトのおかげであんたは赤ん坊の頃から異世界言語習得出来るんじゃから、チートみたいなもんじゃ。」
いや、それはそうだが。
…私の感覚がおかしいのだろうか。
何かが違う気がする。
「まあ、わしにできることはここまでじゃわい。転生を始めるから、次の世界でも頑張って生きてくれ。」
次はここに来ない様になぁ、なんて言ってのける神を見ていると、体が光に包まれる。
「え、もうこれで転生するの!?」
「達者でなぁ。」
「いや、待て!!!おい!!爺ーー!!!!」
ひらひらと手を振る神の姿を最後に、私の意識はプッツリと途切れたのであった。