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転生先では気の向くままに。  作者: ろく
2章
13/17

夏野菜のさっぱり冷やしうどん 前

『暑い夏に食べたいもの』と言えば、皆さんは何を思い浮かべるであろうか?



 暑さを吹き飛ばすがっつりスタミナ料理?




 ………がっつりと食べるスタミナ料理ももちろん良いのだが、皆さんは覚えているだろうか。


 私は享年82歳の婆(現在は7歳)である。



 そんな私の『夏に食べたいもの』と言えば、【さっぱりとした涼やかな料理】である。


 とは言っても、もちろん現在は7歳児であるので、がっつりしたものを食べても胃もたれなんて起こさない。

 間違っても、『いいお肉って一切れ二切れで良いのよね。』なんてことはない。



 ただ、元々の私の好みが婆寄り、というだけである。


 確かに、前世でも母親から聞かされた子供時代の思い出話には、『スーパーに行ったらお菓子ではなく梅干しを持ってきた。』『ちりめんじゃこを買ってと叫んだ。』という武勇伝があった。



 ともかく、そんな婆寄りの好みの私が今日のお昼に決めたのは、夏野菜を使った冷やしうどんである。


 そもそもこの世界には、(私が知る限りではあるが)うどん自体が無い。

 食事の文化は前世より遥かに下回っているといってもいい。

 母様が【レモネード】を知らなかったのがいい例である。


 ここが小さな田舎の村だから、ということもあるかもしれないが……。

 この世界に生まれたこの7年間、前世の洋食のような、味の濃い・華やかな料理などは見たことがない。


【マーガレット】と呼ばれている、ここから半日ほどかけて行くことができる王都にはあるのかもしれないが、ここに住む限りそのような食事を食べるどころか見ることも叶わないのである。


 なにせ、王都へ行く事事態が非常に大変なのである。

 馬車や馬を用意して延々と続く山道を進むだけでなく、森に住む獣達や、盗賊なんてものにいつ会うかもしれない恐怖を抱えながらの移動である。

『ちょっとそこまで行ってきます。』なんてレベルで行ける代物ではないし、武術や剣術・魔術の腕の立つ者の同行が必須である。




「最後にさっき擦り下ろしたレモンを乗せて…っと。出来た!」


 丼用の茶碗に盛られたうどんを母様の前に置く。



「母様、どうぞ。」


「ありがとう。」



 自分の分の丼茶碗を机の上に置き、母様の前の席に腰を下ろす。


「「いただきます。」」



 手を合わせて食事に向かって礼をする。

 これがこの世界の食事作法である。


 箸を持って丼の中でうどんを混ぜる。

 具と麺が絡むのを見て、クゥッとお腹が鳴った。



「プラム、これはどうやって作るのかしら?」


 うどんを食べながら母様が尋ねてくる。



「ええ、これはですね……。」


 ウキウキと話し始めたプラムを、シランが優し気な目で見つめる。



 ———暑い夏の昼下がり、親子の家からは楽しそうな笑い声が響いていた。




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