プロローグ
「私は協力しないから、あんたの計画なんて!
あんた一人でやれば?!」
「でもレシータ。君の力が必要なんだよ。
君も望んでいるんだろ?より良い国を作ろう!」
そう言った少年は、満面の笑みで手を差し伸べた。
*
コタン王国リジー地方 王国歴200年4月2日
私の名前はレシータ。8歳。
リジー地方出身。この場所には王都が位置し、その城下町や海に面している港町には毎日たくさんの人たちが行き来していた。
特に今年は建国200年目という記念すべき年だ。だからそれはそれはたくさんの人達が街を溢れんばかりと埋めつくしていた。
私はこの港町でパン屋を営む両親と8年間楽しく暮らしていた…。
暮らしてたのに!
…
「えっ?引っ越すってどういうこと?」
私は思わず聞き返した。
「レシータ。よく聞いて頂戴ね。
コタン王国には大きく2つの地方があるわよね?」
「うん!私たちが住んでるリジー地方と、貧乏な人たちがたくさんいるフーゴ地方でしょ?」
「そう。来月、私たちはそのフーゴ地方に引っ越そうと思っているの」
「嘘でしょ?!あんなところ行きたくない!」
「じゃあ、レシータ一人で残る?」
「うう…」
貧乏な人たちとなんか暮らしたくない!
でもお母さんとお父さんと離れるのもイヤだし…
「一緒に行く。」
迷った末、私は渋々行くことを決めた。
*
コタン王国フーゴ地方 王国歴200年5月10日
フーゴ地方に引っ越して1週間程が過ぎていた。
私は相変わらず気怠げにフーゴの街を歩いていた。
フーゴの街は昔住んでいた港町とは違い、人通りも少なく町ゆく人々の顔には生気がまるでなかった。
(どうして、お母さんたちはここに引っ越そうと思ったんだろう?
あれから何度も引っ越しの理由を聞いてみるも、
「世界を救うの!」
と一向に本当のことを教えてくれないようだった。
私たちが行ったところで世界なんて救えるはずなんてないのに…)
暗い街中を進んでいくと、世界の片隅に光を見つけた。
この世界とは程遠い、透き通った光。
それは小走りに路地を曲がり、路地裏に入った。
好奇心に負け後を追って路地裏に入ると、そこには白銀の髪の少年が立っていた。
服は汚れ、見るからに貧相な少年だったが、その目に宿す青色の意思の強さが、貧しさを感じさせなかった。
私はただその姿を瞳に焼き付けていたかった。
見た目からしておそらく同い年位だろう…
「なんだ、お前、馬鹿なのか?」
「…!」
唐突に現実に引き戻された。
いつの間にか私と少年の周りを少年と同じような服装の子供たちが囲んでいた。
「き…気づいてたの?」
「…気付かない方が馬鹿だろ。お前馬鹿か?」
「何よ、あんた、えらっそーに!?バカバカうるさいな!」
「俺はシオウ。お前、俺の子分になれよ!」
それが私とシオウの最悪な出会いだった。
しかし、その時私は考えもしなかった。
まさかこの少年が王国を覆す大惨事を起こすなんて...
Tu be continued...