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 イベント2日目、今夜もなんだかんだで働けるギリギリの時間まで勤務してしまった。


 まぁそうなってしまったのは自分のせいでもあるし仕方ないんだけれども不慣れなホールで時間が過ぎるのが早かった。


 かなり集中力を使ったせいか全身に倦怠感がある。


 これから着替えて帰るのも面倒だなぁと思っていたら、今夜もいらしていた松平さまとご一緒にタクシーに乗車中だ。



 今日は普通の仕立てのいいスーツで安心する。

 良かったよ、昨日君のお父さんは王子様だったなんて思春期まっさかりの息子さんにバレなくて。

 


 「まさか若様のお友達が松平さまとは思いませんでした」


 「ははっ世間は狭いねぇ」



 うーん、にこにこと笑う少年も、この一癖も二癖もありそうな紳士に育っていくのかと思うとなんだかせつない。

 敵にさえならなければ、こうやって佐保さんとの時間も切り上げて、というか佐保さんに促されて帰宅ついでに送ってくれる。


 息子さんを挟んだ奥からは、いつもと少し違うじっとりとした視線を寄越されて少し悪寒がする。



 「今夜はいい夜だったね、綾瀬さんも一緒に舞ってくれたらもっと良かったけどね」



 さすがにブランクがあるかな?と問われれば、松平さまは私が子役もどきをしていた事をご存知なんだろうと気づいた。



 「お恥ずかしいことに人様の前で舞うような技術も度胸も無くしておりますよ」


 「…僕は一哉くんが惚れ惚れするのが分かるくらい、じゅうぶん舞っていたように見えましたけど…」


 

 えー、何このホンモノの天使っ

 いや昨日の椿が偽者とは言わないけれど!


 穢れ知らずの天使の頭をよしよしと撫でる。

 

 そう、一緒にお練りをしていた4人のうち2人は稲葉くんに送られ帰ったのだけれど、この子と若様は松平さまの席で一緒にジュースを飲んで過ごしていたので本当ならミモザに上がって飲み直しに行くはずが、佐保さんは息子と帰れとチェックを切った。



 どんな事情があろうが必ずしも売上優先ではないのが佐保さんの素敵なところだ。

 甘いって言われるかもしれないが、良心という魂を売ってまで店に尽くさなくていい。

 

 それに…この間までランドセル背負ってたような子どもがいていい場所ではないかもしれないけれど、佐保さんを挟んで親子の交流も出来ていたようなのでやっぱり私のキャスト最高だな!と思った。


 あとでお礼と褒めちぎりメッセージを長文で送ろうそうしよう。



 「…っ…あのっ…あや、お姉さん?」


 

 ああ、意識がトんでた。

 横にはタクシーの暗がりでも分かるくらい赤味のある顔をした少年がいた。


 

 「あ、頭撫でられるのは、嬉しいんですけどっ…ちょっ…コレはぁっん」


 どうやら私の手は本体が意識をトばしていてもオートで動く仕様のようで髪を梳いては耳に掛けていたらしい。


 

 「わ、こっちのが…ッイイよ!」

 


 男の子に可愛いっていうのもどうだろうと思って堪えたけれど、少し野暮ったい雰囲気で、良いとこのお坊ちゃん学校のテンプレ少年が!そこらのウケようとするあざといジュニアアイドルよりも可愛くなってしまった!



 なんでここの中学校はセーラー服に短パンじゃないんだ!!!

 


 そんな憤りから思わず両耳を引っ張って「ひゃん!」なんて言わせてしまった私は罪深く、それでも止まらない手が髪も頬も唇も触りまくって少年の怯えて震える肌にぎこちない笑み、潤んだ瞳で浅くなる呼吸、それはちょっとと言いながらダメとは拒否しない小さな紳士の色んな表情を引き出して、家の近くに着くまで悶え死ぬかと思った。



 って松平さま!親なら止めてくださいよ!!

 その心底面白いと思って笑いを堪えている顔、窓ガラスに映ってましたからね!!!



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