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 テレビの音すらない室内に二人きり。



 ううう…!いたたまれない…!

 

 いやこの体勢もなんだけど…!

 うっかりガッツリ腹パンしてるのを見られるのって女子としてどうなんだろう…!


 しっかり決まった手応えもあるし満足感と絶望感がぐっちゃり混ざって心音と吐き気がハンパない!



 腰…というかお腹をぎゅっとされていることへの恥ずかしさもあるけどあんまりお腹ぎゅってしないで欲しい…!


 ここでさらにゲロったら失うものが大きすぎる…!

 


 カランとグラスの中で氷が動く音を聞いていたら耳に冷たい感触とリップノイズが聞こえた。



 「あ、ごめん間違えた」



 はい!それ嘘ーーー!!絶対嘘でしょ!!!絶対ワザとだし!!!!

 ストローと耳どうやったら間違うの!!!

 しかもちゅーって長いし!吸った!?吸ったの!?

 

 

 「あー、落ち着いた。もう麦茶飲みきったよ、ありがと委員長」


 「いいえ!?どういたしまして!?」



 こっちは落ち着きませんけど!?

 何でまだゴロゴロ甘えてくれてるんですかね!ありがとうございます!!


 

 「委員長、スマホ出してスマホ」



 そう言われてスーツの内ポケットからスマホを取り出して渡せばロックの暗証番号はミモザの金庫番号と同じなのでアッサリ開けられる。


 うーん、見られて困るものはないけれど金庫番号教えたことあったっけ?

 あれ?スマホはともかく一般バイトが金庫の番号知ってるのまずくない?



 「あ、やっぱり佐久間さんからメッセージ着信アリだね」



 メッセージアプリに届いている内容はフロント交代したから戻ってきなさいというものだった。


 

 「キッチンと交代ってことは河内店長と交代ってことだね」


 

 おぉぉっ!うららの店長ってフロントできるの!?

 いや、腐っても店長なんだから出来ないと困るんだけど!


 今夜はキッチン担当の真木くんは雪柳出勤だと聞いていたし、しかも桜の店長がヘルプするんだから、うららの店長がスタッフ業しないなんて選択肢ないですよねとは脅したけど…キッチン作業ちゃんとやれてたの!?


 うっわ!気になる~~~!!!



 ちょっと覗きに行きたくなったところで事務所の扉からガタガタと音がする。



 「あ、鍵掛けてたんだった」



 私の肩に顎を乗せていた稲葉くんが、ぼそりと呟いてイヤイヤと言わんばかりに頭をぐりぐりとすり寄せて甘えている。


 いや、事務所だから!こんな姿見られなくて良かったとは思うけども!誰か用事で来てるんだし開けないとね!?



 「稲葉くん!!ここ職場!パブリックスペース!家じゃないんだから!!」


 「…家ならいーんだ?」


 「そっそれも良くはないね!!!!」



 なんだかますますぎゅーっとされている気がしないでもないけれど、耳元とか体温とか気配とか感触とか色々限界である!!!


 それにゴンゴンゴンと扉を叩く音と少し高い声が聞こえる。


 

 「あ、たぶん若様たちだよ!稲葉くん!もうおしまいっ!」


 「んー、また後で?」


 「後で!?後でがあるかはお約束致しかねますよ!!」


 「えー…」



 不服そうに頭ぐりぐりしない!すんすん匂い嗅がない!!ああっ!お腹の肉掴むのヤメてぇ!!



 「もぉぉっ!わかった!わかったから!!!後で!後でね!!!」


 「じゃあ仕方ないなぁ、ハイ」



 何も仕方なくないと思うけど!

 ようやく腕がするっと話されて逃げ出せたので扉の鍵を開ける。



 「あ、やっぱり若様たちだったんだねって…まだ着替えてなかったの?」


 「うん、うららとフリージアでひと差し舞ってた」


 「え、みんな踊れるの?」


 「そんなまさか!一哉くんだけですよ、僕は花持って座ってただけです」


 「俺は雪柳?の店からウクレレ借りて三味線代わりに音出してたけどな」


 「俺はタンバリン」



 ウクレレとタンバリンの演奏で日舞。



 うん、雪柳に行けば何でもあるのはわかった。

 四次元ポケット状態なんだね。



 「あ、でニナさん?が動きやすいよう男衆に着付けし直して貰ってから、うららに1セットだけ戻るって言ってたから今頃うららに居ると思います」


 「ってことで俺らは完璧にやり遂げたんであや姉は褒め称えてくれていいんだぞ!」


 「あ、うん、ありがとうございます」



 すっごい可愛いのにこれ男の子たちか…。


 なんか違う扉開けちゃう大人居なかったんだろうか、大丈夫だったかな…と心が汚れきった私にはキラキラした若様たちの目が眩しい。


 ああもう子供には結構遅い時間になっちゃったから…消化のいいものにしないとなぁ。



 「あ、今から軽く食べられるもの用意するから…稲葉くん上の桜で着替えさせてあげて」


 

 大して効果のない事務所の換気扇だから、高そうなお着物に移り香なんてさせたくなくてポケットから鍵を渡す。


 

 「おっけーおっけー、冷凍庫に挽肉あったからハンバーグがいいと思う」



 それ稲葉くんが今食べたいやつですよね。

 でもまぁ無難かな?


 若様たちもそれでいいみたいだしちゃっちゃと捏ねて焼きますか!



 「あや姉の手ごね…!」


 「一哉キモ」


 「一哉くん残念過ぎる…」



 ぼそぼそと話しながら裏口から美少女たちが裾を持って出てゆく。

 所作はどの子もきれいだから、やっぱり若様に限らずみんな出自が確かな子たちなんだろう。



 「あの、イチの為にもビニール手袋して捏ねてください」



 ひとりそんなことを言いに戻ってきたけれど、衛生面にしっかり気を配ってお腹痛くなるようなものは作らないので安心してね!

 


 ふーーっ、よし!

 気合い入れ直してご飯しっかり作って店に戻ろう!


 担当キャストだって頑張ってくれてるんだし! 

 巻き込んだスタッフだっていっぱいいる!


 反省はその都度する!…けど落ち込んだり凹むのは終わってから!


 とりあえずはそれでいいじゃない。

 そう自分に言い聞かせて食べ盛りの男の子たちのために冷蔵庫を開けた。



女子高生の手捏ねハンバーグ…!売れそう←

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