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 19時から始まったお練り…いや、おいらん道中もどきは恐ろしいくらいに盛り上がった。


 映画やドラマで見るような胸元が開いた着崩れた着物の着方を全くしていないのに、ニナさんのもつグラマラスな体型が匂い立つような曲線は、しぐさや歩き方で伝わってくる。



 そしてそのニナさんを囲むように歩く4人の美少女。

 いや、少年なんだけどこんなに艶っぽい中学1年生が居ていいものなのか。

 上目遣いや流し目が完璧で、ちょっともう女として自信を無くすレベルだ。


 あ、いや一人真っ赤になって目を伏せたままの少年が居るが、それはそれで垂涎モノである。



 そしてこのお練りの参加者は全員狐のお面を被っている。


 お面は顔全体を隠すものではなく、ニナさんは目元だけ隠したものを、中学生たちは口元だけを隠したもので、それがまた淫猥な雰囲気を醸しつつも人ならざる者のような現実感のなさを纏い、まるで夜を制したかのように、街を歩く人たちを圧倒している。



 歩いている時は遠巻きに、少し立ち止まれば近寄ってきたフラッシュの嵐の中、鞄やポケットにねじ込まれるビラ。


 大丈夫ですか、通行人ABCの皆さま。私たちその気になったら財布全部スれますよ。



 そんなビラを配る私と稲葉くんを含め、付き従うスタッフはいつものスーツに顔全体を隠す狐面だ。

 私たちにチラ見せの色気とか求められてないから完全に黒子。これぞ黒服道!引き立て役だ。


 傘持ち…ボディーガードは営業前のまゆちゃんが買って出てくれており、スーツに狐面が意外とハマっている。

 そうか、意地の悪い顔が出ないといい男っぽくなるんだね!って言ったら今週のノルマ金額上げられた。ちっ。


 お練りの途中、ニナさんと目が合いちょいちょいと指で小さく呼ばれて寄っていけば袖で口元を隠し耳打ちされる。



 「私としては1時間客引きしててもいいんだけど…もうダメよねぇ?」



 まゆちゃんだけじゃなく営業開始まで時間のあるミモザのスタッフがほぼ借り出されて、提灯持ちつつビラ配ったりしていれば、あっという間に19:30を回ってうららが開店している。



 開店時間に食い込む無謀な思いつき企画をした父親に苛立ちが募るものの、それも狙いだったのかと分かれば悔しさでいっぱいになった。



 まさかこんなに人が集まるなんて。


 

 店舗があるビルの1階に辿り着き、キラキラとしたフラッシュを浴びながらエレベーターに太夫と新造や禿が吸い込まれていく。



 その前に立ちふさがるスタッフの中から、まゆちゃんが1歩前に出て口上を述べる。 

 ビルの前には軽く100人は超えるだろう黒山の人だかり。



 まだまだ宵の口だというのに…この熱気と、浮かされた顔の数はなんなんだ。

 皆同じ顔で、同じ動作。――同じ面をつけているわけでもないのに!



 まゆちゃんに向けられるスマホの数と放たれるフラッシュに少し気持ち悪くなった時、手を引かれこっそりと裏へと回る。


 表の喧騒が嘘のように静かで、ダクトの音と、ほんの少しゴミの臭いがする。

 非常階段に座るよう促され、面を外された。



 「委員長、大丈夫?ちょっと顔色悪いよ」


 「うん、……大丈夫、大丈夫。」


 「それ大丈夫じゃないやつ」



 ちょっと待っててと稲葉くんは近くの自販機で温かい缶コーヒーを買って戻ってきた。

 こういう時こそ、つけ込んでもいいのに、絶対しないよね。




 「はーーー…、ごめん、落ち着いた。」


 「そ?ならいいけど、どうせならもうちょっとゆっくりしていこ?今日は見学だけだったんだしさぁ」


 

 休みなのにビラ配りさせられたんだし1時間分バイト代ぶん取ってやろうと笑っている。

 「そだね」と適当に相槌をしながら缶コーヒーを握って暖を取っていると「手ぇちょっとはぬくくなった?」としゃがんで階段下から顔を覗き込まれ、「あったかくなったよ」と缶を置いて手をグッパーと閉じて開いて見せれば、手を取られニギニギと両手で揉まれる。


 

 「ねー、委員長、指相撲しよっか」


 「…ハイもイイエも言う前から手がそう組まれて戦闘態勢に入ってるように見えるんだけど」


 「いやほら、やるからには勝ちたいっし!?」



 ゴングがいつ鳴るのかわからないので先に仕掛けて押さえつけたのに逃げられた。



 「花を持たせてくれてもいいとおもうッんだけどなー!1234ごっ…!」


 「俺も一応男としてのプライドがッ」

 

 「くっ!」


 「あるんでねっ!123456789…10だ」



 カウント10になり抵抗を辞めれば、両手で包まれる、――手汗のかいた私の手!!!ひぃっ!

 しかも柔らかい唇の感触がするんですけど!!!



 「じゃあ、勝ったから俺のお願い事聞いてね?」

 

 「――そんなお約束致しましたでしょうか?」


 「聞いてくれるよね?」



 階段下から見上げられ、両手で手を包んだまま、微笑まれる。

 有無を言わさない笑顔ってコレですか…!大変勉強になりました!!


 あんっ!!唇!唇そんなに押し当てないで!!!

 フニフニって柔らかっ…!?なっ!舐めた!?

 いま何か感触違ったよ!?



 「もぉ何でも聞くから離してぇ~~!!」



 

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