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みんな食事をして落ち着いたのか、ようやく顔に色味が差してそれぞれリラックスしている。
こんな朝早くにこの人数が1つの店舗に居るのは珍しい。
「急に呼び出されて何事かと思ったけどまっさか俺らまでシゴかれるとは思わんかったな~」
細身のシャツを着たチャラさ全開私服姿の八木くんは途中参加なので倒れていた中では元気な方であるが、それでもバイトは掛け持ちしてるし、貴重な休日だったのに今日もまた昼から違うバイトだ。
「そんなに大変だったの?」
「んー、俺らの場合うららの営業終了後だったからそれまでの流れ分からねぇしなぁ」
ああ、途中参加あるあるだ。
最初は営業中に見つけた大きいウィークポイントを埋めていくことにして、後から細かな指導が入ったんだろう。
最初っから居た人間なら記憶に強く残っている一番ダメだったところから反省とおさらいをしていくので分かりやすいんだけどね。
呼び出されて来てみたら、どこかの映画のワンシーンだけ撮り直すので、この役してくださいねと台本無しでカメラの前に立たされるようなもんだ。
いきなりでNGなしというわけにも行かず、リテイクになるたび凍りつく現場に不機嫌になっていく監督。
うーん、フォロー役不在だったっけ?
「助監督的な…岬さんは?上手くまとめてくれるはずじゃない?」
「「「「いや岬さんが監督だったし!!!」」」」
「え、そうなの?意外~~」
てっきり佐久間さんが徹底して「もう1回」って言ってる姿しか浮かばなかった。
どこが悪いか指摘せず直るまで延々続く「もう1回」。
「てっきり一晩中もう1回♪の呪いに掛かったのかと思ってた~」
あの指導を食らった人間は某歌手が歌に出てくる「もう1回♪」を聴く度に佐久間さんが浮かぶ。
「いや、まぁ何回もやらされたけどさ、岬さんはストップ掛けらまくられたし」
「そーそー、そこはそうじゃない!って止めて選択肢何個か挙げさせられたな」
「んでその選択肢の分だけ分岐ルートやるっていうな…終わらない旅?」
みんなが遠い目をしている。
「ちょ、稲葉くん、みんなに何かコンビニでデザート買ってきて」
「おっけーおっけー、リクエストあったら一応聞いておきますよ先輩方」
ここで集まって話しているのは堀くんと松本くん、休日…出勤扱いになってるのか謎だけど八木くんに伏見くんと、ミモザメンバーだけなんだけど稲葉くんは他の輪にも欲しいものは無いか聞きに回っている。
「でもミモザだけで研修も最近してなかったからいい機会ではあったよねぇ」
「まぁなぁ」
相槌を打ってくれたのは八木くん。
フロアでキャストもスタッフもまとめていく上で思うところもあったんだろう。
「ね、ね、やっぱり藤宮くん凄かった?」
「綾瀬…お前なぁ…」
ジト目で睨まれてはいるけれど、それこそ覇気はない。
ため息ひとつついてから、ちょっと悔しそうに話してくれた。




