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藤宮くん視点。
営業終了時間の23:30まで客席は埋まり続け、売上は予想通りミモザのキャストがボトルで牽引し、場内指名は雪柳とすみれで分け合い、閉店後はそのまま同伴ということで各店舗へと戻っていった。
そして閉店後、今夜の内訳を即印刷するようにと岬マネージャーからの指示でプリントアウトしたところだ。
「あやんとこに頑張らせ過ぎたなー…、佐保姉なんかに借りつくりたくないんだけどなぁ」
「うふふー、う・ち・の、綾ちゃんが言いだしっぺで巻き込んだんだからぁ、むしろこっちがヨ・ソ・の、岬さんたちにお世話になって悪いなぁと思っているのよぅ?」
室内の温度が下がりに下がっている気がするが、止められる人間もいないので寒さに震えることしかできない。
ホールスタッフとキッチン、見学していたうららスタッフに閉店後の片付けを任せつつ、うららキャッシャーの千葉さん、うららフロアマネ筑紫さん、すみれの岬マネとホールの隅で問題点の洗い出しをするはずが、ミモザのキャストも3人残っていて、ドリンク片手にやってきた。
王子姿の佐保、黒い羽の悪魔さより、金髪堕天使風の椿。
・・・・・。
雪柳と違いミモザは正統派というか王道を行くというイメージがあっただけに邪道もこなす彼女たちには度胆抜かれっぱなしだった。
さりげなく「あれ?あなたまだ待機なの?」と、指名を取れずに待機場に戻ったうららキャストを貶め、「暇なら写真撮って」とシャンパンタワーの撮影をさせて雑用係のように扱い、怒りを向けさせ、SNSに悪辣なコメントとセットでアップするのを見逃せば、彼女たちのファンが潰しに掛かり炎上させた結果、ミモザのキャストの株は右肩上がり、ついでにあと2日イベントがあるらしい、と宣伝役も買ってくれていたようでネットはお祭り騒ぎだった。
対する岬さんはキャストたちにアドバイスをしながら正攻法でお客様を呼ぼうとしていた。
そっちのほうが地力がつくので長期的な視野で見れば確実にお客様にもキャストにも喜ばれる。
ただ、すぐ結果が出るほうに人の心は動きやすいので、岬さんの情や優しさは理解され難いと思う。
キャラ的には佐保さんと岬さん逆っぽいのにな…。
「片付けが終わったらボトルのおねだりのコツ、教えるわよ?」なんて、売れてるキャストに笑顔で甘い言葉を囁かれれば終電逃してでも残ろうかなと、うららのキャストが数人残るのも頷ける。
お前たちにあの黒い羽は見えていないのか。
楽してどうにかしようとか思ってどうするんだ…いや、まだ学ぶ姿勢があるだけいいのか…?
「はー、ストレス溜まる…。キャストの前では飴役を仰せつかったしな…帰った後はお前ら覚悟しろよ?」
鋭い視線が刺すように飛んできたので仕方なく頷いた。
「はい、ご指導宜しくお願い致しますっ…!」
まずはキャストの接客指導、ロールプレイングだ。
ミモザの3人が中心となって見本となってくれるだろう。
全部が真似できるものではないし真似しなくてもいいけれど、ある程度の水準まで学んで身につけば、少しは応用できる。
自分流にアレンジできるところまで1晩でもっていけるかは分からないけれど、思考だけは先を見据えられるような思考に、人格に矯正する。
彼女たちからすれば他店の事だしとことん面倒臭い事ではあるけれど、それだけ綾瀬さんが担当キャストに愛されているということだろう。
「おいメガネ、あと10分で清掃一時中断だ。ロープレするぞ」
…ある意味、ここからが本番か。
3日間、灰になる覚悟を決めた。




