表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/205

66



 「おいおいマジかよ…『綾瀬マネ、これヤバイどころの話じゃないですよぉ…!』」


 フロアの堀くんからエマージェンシーなインカム無線を受け取る。



 開店から20分経過。

 同伴してきているのはミモザのニナと椿のみ。

 うららキャストはまさかの同伴ゼロ、である。…怖っ!!



 お客様が埋まるまでは店内奥の客席がキャストの待機スペースで、すでに8人座っている。

 しかし堀くんから聞く限り、手にスマホは持っているようだけどお客様を呼んでいるかどうかまでは確認が取れない。



 ちなみに更衣室に3人居るが、まだ出て来ない。

 出勤して着替えてもいないのにすぐタイムカード押そうとしたので止めれば逆ギレされた。


 …働けるようになった時点で賃金が発生するのであって、同伴もしてきていないのにその前段階で何故お金になると思うのか。



 「もう鞭役しちゃってるしなぁ…『岬さん、待機スペで飴役お願いしていいですか』」


 『もちろん。どうにか動かしてみるよ』



 うわぁ…岬さんですらどうにかって…

 ガンコな油汚れ女子ってモテ要素全然ないわ~~

 顧客いるのか不安になるわ~~



 ニナさんは1セットのみの短距離走なので、悔しいけれどもうボトルは開いている。

 効果的なタイミングで出したかったけど、こればっかりは仕方ない。



 椿さんのところはまだ暫く待っていられるのが救いか。

 さっきから撮影会状態になっているようでスマホに写真がポコポコ飛んでくる。

 

 坂本さんテンション上がってるなー…。

 なんかちょっと救われるな。


 きっとフロアの皆も生温かく見守っているだろう。



 ニナさんにこの写真使っていいかメッセージを飛ばせばOKの返事が来たので、パソコン環境があるキャッシャーの千葉さんに送って早速うららのホムペにアップしてもらう。


 顔の写っていない、大胆な背中のものを選んだ。

 もちろん羽がメインだけれども、くびれが艶かしい。

 

 さっき配りにいったチラシには天女と書いたけれど、うららのホームページには「clubうららにclubミモザの天使が降臨!」と書いてもらった。


 

 さて、こちらで他にもやれることと言えば…




***



稲葉くん視点。




 「まっつん…俺来世は岬さんになりたい…」


 「俺は岬さんの彼女になりたいかもしれない…」



 待機場所がものの数分でハーレム化している。

 王子様オーラが全開だ。ここはホストクラブだったっけ?と錯覚するほどに。


 

 堀先輩と松本先輩は理想を見つけたと言わんばかりにうっとりとしているけれど、岬さんを知っている俺は「人間ってこわいな」としか思えない。


 店内2卓しか埋まっていないのでここはミモザの2人に任せて、うららのスタッフに声を掛ける。


 「日野さん、中尾さん、石田さん、折角なので

 岬さんがどういう話でキャストを盛り上げているのか近づいてみるのはいかがでしょうか」



 どうにか動かすと言っていたのだから、お客様を呼ばせるのだろう。

 店からすれば時給だけ持ち逃げされるわけにはいかない。

 キャストの皆さんはご来店されたお客様をもてなすのが仕事だけれど、呼ぶのも仕事だ。


 

 「え?」「「はいっ」」



 …分かれたな。

 まさかこの段階でもう落伍者出るのか。


 え?と眉を顰めたのは大学生の日野。

 やっぱりお前かこのド屑が。



 こいつは努力しなくても平均点取れる世渡り上手なタイプ。

 上手い事やってるという自覚も自信もあるようなやつは、自分の下を作りたがる。


 案の定、年下でよそ者の俺に指図されるのがお気に召さないのだろう。

 ヘルプが建前で再研修だと分かっているのに、何故自分まで巻き込まれているんだと「やらされている感」が表情と態度に漏れ出ている。



 これが岬さんの前でなら真摯に仕事します!という態度になり、委員長の前だと俺は関係ないよね~!ちゃんと仕事してるし~!と甘えた顔になる。


 

 接客業で相手に合わせられるのは大事だけれど、そこに誠実さがなければ害悪でしかない。

 因みに多分あの2人にはバレているので正確には合わせられていない。


 というか馴れ馴れしく「綾瀬ちゃん」と近寄っていくこいつのタマを蹴り潰したいと思っているのは俺だけじゃあないはずだ。

 あの王子様オーラでハーレム作ってるマネージャーなら、ワサビを摩ったおろし金で丁寧に摩り下ろすだろう。


 

 …そう思えばまだ少しは優しく諭せそうだ。

 通じるかは別として。


 うん、俺まだ頑張れる。

 


 一瞬だけ岬さんと目が合って、キャストから見えないように手招きされている。


 

 「…私もあの輪に加わってきますので、どうやって話の流れを作るのか見ていてください」

 

 「「はいっ」」



 堀先輩と松本先輩は埋まっている2卓の近くへ少し移動するようだ。

 ニナさんの方がもう1本開くかもしれない。ニナさんに視線をやってからフロアマネにアイコンタクトする。

 小さくうなずいた藤宮先輩からのインカム無線が流れてくる。



 『真木、ボトルクーラー用意しておいてくれ。今度はLEDじゃなくてそうだな…アクアリウム仕立てでいけるか?』


 『10分あれば、だ大丈夫』


 今度はこちらがそれで間違いないですよという意味を込めてうなずき、ニナさんの卓の近くに立っている松本先輩とアイコンタクトを交わす。

 静かにポジションを変えて近づいている松本先輩をニナさんも視界の端で捉えている。

 


 今から5分以内にニナさんがボトル交渉をする。


 そしてお客様から見えない角度でボトル確定のハンドサインが来る。

 銘柄が決まればニナさんが松本先輩にアイコンタクトを取るので、それがお呼びの合図。


 「すみませーん!」なんて、ファミレスみたいなことはキャストにさせない。

 キャストに品性を求めるなら、こちらもそれ相応の品格が求められる。



 俺の場合は特に、まだ未成年だし飲んで協力できない分、誰よりも神経すり減らした分の対価が金だと思っている。




 「気付いたことはメモするようにお願い致します。では行きましょうか」



 行きたくないけどな!



開店中を書き出すと、稲葉くんをイチャイチャさせてあげられない…(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ