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時計を見ればもうすぐ14時。
スタッフへの連絡メール、キャストへの告知、ホームページの更新を終えて、ようやくスタートラインを設定できた。
ライン上に立って、うまくスタートできるかはこれからの準備次第。
キッチンは「何ということでしょう」と言いたくなるレベルで磨かれ輝いているし、真木くんも来てくれたので出す予定のカクテル7種を作ってもらった。
それから見本の写真を撮って、作り方を分かり易くA4に2種類ずつレシピを載せ、水に濡れても大丈夫なようにラミネート加工もした。
いま真木くんに任せているのはトマトを使ったワンコインフードだ。
限定20食でお酒に合うものをお願いしている。
それの試作が出来たら藤宮くんが味見してオッケーなら3日間限定!と煽ったメニューを印刷して、こちらもラミネート加工で各テーブルへセットしていく。
青果店のお兄ちゃんにもいつもより早めに来てもらって色々発注した。
そこまで無茶な注文もしていないけれど、いつもと違った商品の発注もさせてもらったので、手間というか迷惑とストレスをお掛けしていると思う。
いつも通りきちんと夕方までに手配してくれるというのがプロフェッショナル過ぎてキュンキュンする。
今度菓子折り用意しておこう…!
私の担当の5人は3日間のどこかで1日か2日だけ同伴してこようと思っていたみたいだけど、ボトルバックがイカレた設定すぎたようで、今夜は開店直後に行く!とすでに4人から連絡が来ている。
ついでにその4人ですでにクリュッグ3本ドンペリ1本が確定している。
…ありがとうございまーす!!!
あとはうららの出勤状況を知りたいけれど…こればっかりはうららの従業員が出てこない限り分からない。
副店長の千葉さんから分かり次第連絡するとはメッセージが来たものの、分かるのいつくらいなんだろうか。
ギリギリまで出勤者確定しなさそうー。
うららのフロアマネにも「お前は早めに来い!今来い!」と千葉さんに伝言をお願いした。
金銭を取り扱う千葉さん以外のうららスタッフは、今日は営業中見学だけさせるつもりだ。
中途半端に手を出させるつもりはない。
イメージトレーニングっていうのは結構重要で、どれだけベストな動きをイメージ出来るかによって、頭から伝達された情報を的確に動作として出せるか決まってくる。
だからどこを見るべきか、真似るべきか注意は促すけれど、今夜は初心者マークでもつけてもらって立っているだけにさせる。
ただ何もせず立っているだけ、っていうのもなかなかしんどいんだけど。
正しい綺麗な姿勢しか認めないし。
そして何もしない代わりに、きっちり覚えてもらう。
2日目は、他店舗の人間はヘルプに徹してメインで動いてもらうから。
ダメなところも逐一、重箱の隅っこをガツガツつっつくように指導していく。
そして、営業後は反省会、復習を兼ねたロールプレーイングをみっちりしてもらう。
営業後の眠いド深夜、終電という逃げ場もない状態で、合格点に達するまで。
まさか始発になっちゃうことはないよね?ね?と思いつつ、これ完全にフラグだよねと心の中で合掌している。
15時からは藤宮くんと打ち合わせだ。
出来ればこのタイミングでうららのフロアマネ、筑紫さんにも来ていただきたい。
営業前に話し合うこと…着地の数字を目標金額に近づけるためにどうスタッフを配置するのか、同伴キャストが着替えている間に必要なヘルプのキャストは何人押さえておくのか、仲のいいキャスト、悪いキャストの席の配置、飲めるキャストと飲めないキャストのリストアップ、フリー客を掴ませたいキャストの順番づけ…。
共有しておきたい情報を出せるだけ出し合うのが開店前の打ち合わせだ。
同じ店舗ならそれほど時間は掛からないしストレスフリーだけど、私も藤宮くんも完全にアウェーだ。
建前はヘルプなのに、完全に指導者、指揮者として場を制していかなきゃならない。
―――藤宮くんが。
…嫌われ煙たがられるようなところにブッこんでごめんねーー!!!
とりあえず上の階にある雪柳を見上げて拝んでおく。
藤宮くんに幸あれ!!!
スマホが見て見てと自己主張をする。
画面を見れば稲葉くんから。
『順調?何か必要なものがあれば買ってくから言って』
ううう…!私の癒し王子…!!!
白馬に乗ってきてくれてもいいんだよーー!!!
いや、店に馬連れてこられても困るか!!
うーん。
疲れてきてるなー。
いい感じに頭壊れてきた。
『牛乳プリン食べたい』
よし!プリンと王子がやってくるのを楽しみに頑張ろう!




