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「…もういっそ爆破したほうが早いかなと思うんだけど、どお?」
「諦めたらそこで試合終了だよ委員長」
これさぁ…今のこの状態にも立ち会ったほうがいいと思うのよ、見て見ぬフリしてる店長とか。
多分そんなことしても心入れ替えるようなタイプの人間じゃないからこんなことになってるんだろうけど。
「コンロの浸け置きしてる間に冷蔵庫は全面拭いて余ってたプラカゴ勝手に使ったけど…いいよな?」
「好きにしてぇー…」
「好きにしてって…」
稲葉くんなら良きようにしてくれるでしょー…
てかこんなにキッチン掃除が得意になった男子高校生がいていいのかな…。
イケメンが所帯じみていくとか…国宝を汚す行為に近い気がする。
おまわりさん、犯人は私です。
稲葉くんの盛大なため息と共にカパっと開けられた冷蔵庫の中身は、生モノはすべて処分されており、調味料や日持ちしそうな缶詰は賞味期限の日付が見やすいよう油性ペンで記入されて生理整頓されている。
あ、開いてないアイスコーヒーやアイスティのパックにも側面にガムテープ貼って日付書いてあるー。
「それ採用」
冷蔵庫の扉を閉めて扉の真ん中にガムテを貼る。
その上から油性ペンで注意書き。
『使用は賞味期限1日前まで!日付確認しろ!』
ついでに発注したものをどう整理するか考えやすくするために、中の状態も写真を撮っておく。
常識を、統一ルールを、整理整頓を!
共通認識させるために、サルでもわかるように補助しなければならない。
「あ、棚の乾物は全部出してとりあえず事務所に持っていって」
「期限いけるのいっぱいあるけど?」
「メニューの数減らしたいから…何を残すか考えてから、使うものは後でまた戻すよ」
「おっけーおっけー」
よし、とりあえずここまでにしておこう。
そろそろ朝ごはん食べて学校行かなきゃダメだしねぇ…。
「ねーねー、稲葉くんお願いがあるんだけど」
「…何なりとどうぞ、お姫様?」
「今日ね、午前中で体調悪くなる予定だから、放課後の委員会は稲葉くん出てくれないかなぁ?」
ついでに授業の録音をお願いしたいなぁ…とICレコーダーをポケットから出して渡す。
「委員長が授業を犠牲にするとかよっぽどだな…」
うん、どう考えてもふつーにやってたら間に合わない。
何なら今日もう学校行きたくない。
でもここにずっと居るのもストレス溜まりそうだしちょっとは授業も受けないと。
仕方ないなとICレコーダーを受け取ってもらえたので、とりあえず勉強はどこかで巻き返しできそうだ。
今夜のうららは、目標金額達成は当たり前。
ミモザからスタッフもキャストも連れて行くんだから。
上げ膳据え膳のドロッドロの流動食で、噛む必要すらない、飲み込むだけ!の状態にした初日にすることで普段との違いを、働きやすさを実感してもらう。
スパルタなまゆちゃんには甘いって言われそうだけど、何が違うか分かれば成長は早い。
それと、誰がどうダメなのか観察するためには甘い環境にしたほうが分かりやすい。
厳しい環境を与えて、努力してるフリをして誤魔化されるのが店としては一番の損失だ。
それは黒服だけじゃなく、キャストにも言えること。
とことん炙り出してやる…!!!
私は腐ったみかんなら捨てますよ…!!
発酵や熟成と、腐敗は違うのだよ…!!!
ふはははは!!!!
「委員長、顔怖い」




