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 8階 club桜、21:00~25:00営業、火曜定休、このビル唯一の会員制の店(要・紹介+年会費)。


 しかもキャストのお姉さんがほぼほぼ同伴でしか出勤しない上に、上顧客様ばかり。


 いわゆる太客という方々なので1セットから2セットでお帰りになられても、素敵な金額になっているため、お姉さん達も同じようにすぐ帰って即・閉店状態になる時も多い。


 ちなみにどの店舗も1セット50分。

 


 桜だけに席を置くキャストが常時8~10人、私の働くミモザと兼業しているキャストが14~18人といったところ。


 桜は実力、顔面偏差値共にA’~A◎、Sクラスのみしか働けない、精鋭部隊だ。



 7階ミモザは、水商売未経験の新人は雇わずB◎以上が面接合格ラインとなっている。

 もし間違って未経験者が来てしまったら例えSランクでも6階のclubすみれで雇い、基本からきちんと叩き込む。



 ミモザのキャスト登録数は40~50人だけど、平日の出勤は20人未満、土日でも40人未満って感じ。


 それでもホームページには在籍者60人になっている。



 …実際に何人在籍しているかとか考えたら夢が無いし、全員フル出勤は年末年始ですら夢のまた夢だし、更衣室のロッカーの数が物語ってるよなぁ、と黒服をしている人間なら誰しも一度は思うだろう。


 2階~6階の店舗は各フロアごとに更衣室があるけれど、狭いしロッカー小さいし衣装も軽装になる。

 それでも他の系列外店舗で働いたことのある黒服仲間達に聞けば、まだ全然キレイで使いやすいロッカーだそうだ。


 …彼らの言う"ブタ箱みたいなロッカー"っていうのを怖いもの見たさで見てみたい。



 ちなみに桜は着物がドレスコードなので、9階の更衣室では桐ダンスに貸出し用の着物も用意しているけれど、大体お姉さんたちは自前のもの、もしくはお客様からのプレゼントであるものを着て、ヘアメイクしに店に寄ってから同伴出勤されることが多い。


 で、さっき父が黒猫の帯止めの有無を聞いてきたということは、今夜は某宅配会社重役のお客様がいらっしゃると思われる。


 …確かまだキープボトルが2本あったはずなので、ボトル棚から取り出して、キッチン付近の手に取りやすい棚に移動しておく。


 横に金箔入りシャンパンの空箱も沿えて。

 もちろん中身は冷蔵庫に冷やしておく。



 そんな細々したことをしている間に稲葉くんが9階の更衣室も掃除機掛けてくれたので、私は粘着シートのロング棒コロコロで最終チェックを行い、稲葉くんはその横で鏡やテーブルの拭き上げをしてもらう。



 「そだ、校外学習は第一希望そのままスルッと決まったよー」


 「あ、やっぱり」


 「なんでだろねぇ、一般ウケしないのかな伝統芸能って(笑)」

 

 「それ言ったら若様またスネるぞ~」


 かわいそーとか言いながら笑ってる稲葉くんも稲葉くんだと思うけどな~。



 「まぁそんなワケだから近いうちに7階のVIPルームに由宇兄ちゃん呼ぼうと思ってるんだけど」


 「由宇パパだろ~若様の親父なんだから」


 「パパってイメージ未だに湧かないんだって。まだ30代前半でしょ?てかパパって言ったら由宇兄ちゃんがスネるしそっちのが困る!」



 どれだけ丁寧に掃除機してもコロコロをすると絨毯から何かしらくっついて出てくる不思議。


 最先端のいい掃除機が欲しい。


 

 「でね、学校は昼公演の座席を押さえてあったんだけど、どうせなら舞台裏も見たいじゃない?」


 「まぁねぇ~ってできんの?」


 「そこは交渉次第でしょ?若様だって小さい時からウチの店に連れられて来ては事務所で寝てるんだし」 


 「で、俺も交渉の場につけ、って?」

 

 「ご明察!えいっ」


 パリっと綺麗にコロコロシートを剥がしてアンダースローで投げつける。

 

 稲葉くんは片手でキャッチしてポケットからビニール袋を取り出し、ゴミを入れたら手持ち部分を腰に突っ込む。


 きびだんご入ってるみたい。

 今日は何個になるのかな~。


 あんまり多いと掃除がちゃんと出来ていないってことで、稲葉くんがスネることになるんだけど…



 「てか男の子ってすぐスネない?」



 「ハナシ飛んだな~って女の子のほうがすぐスネるような気がしますが?」



 「わっかりあえないねぇ~」



 きびだんゴミをポイッと。



 「ですね~」



 パシッとナイスキャッチ。



 まぁそういうことを積み重ねて分かり合いたい、分かち合いたいって思うような場所がこのバイト先の面白いところですが。



 「今週末か遅くても来週アタマには呼ぶから都合の悪い日あったら先に言っておいてねー」


 「もう決定事項なんですね綾瀬マネ」

 

 「あったりまえでしょっ…っと!」


 粘着シートをパリっと剥がしてもう1個投げる。



 しっかし…ラメってるな~。


 もしかしてコレは…

 たま~にバラの花に塗られてるラメじゃない?



 そのままで綺麗なのに何で夜の店向けに花にラメ塗っちゃうかなぁ。

 スペシャル感出そうとして単価上げる為とか品がなくて嫌いだわ~~。8階にもそんな花持ってくるお客いたことにびっくりだわ~~。引くわ~~。



 後で誰が来たか調べるか…8階のボトル台帳見てやろ。

 


 

 「じゃあ後は灰皿とメニューをテーブルセットしたら、おしぼりだけ作って終わりね」


 「かしこまりました~」


 

 やっぱり増えちゃったきびだんゴミを見てちょっとスネてる稲葉くん、…可愛い。ヤバいニヤける。

 


 「ね、パスタか炒飯どっちがいい~?」


 「炒飯に餃子付きがいいですー!」


 「仕方ない、玉子スープもつけてやろう!」


 「あざーす!」


 「その代わり由宇兄ちゃんをしっかり説得してよー期待してるよー頼むよー」


 「鋭意、努力致します!」


 「うむ!よろしい!」



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