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 「久々あやより小さい子供見たなー」



 事務所机の足に後ろ手で拘束されていた若様がうとうと眠そうにしていた。

 まぁもう9時過ぎてるし、お子様はそろそろ眠いよね。

 まかないは明日の朝ごはんになるようにしておこう。


 あ、でもお手伝いの喜美子さんがきっと何か用意してるだろうしなぁ…どうしようかな。



 「若様、遅くなってごめんね起きられる?」



 んむ~っと眠りを妨げられた抗議の声を聞きつつ机の上にあった鍵で手錠を外す。



 「もうご飯いらない?おうち帰って寝る?タクシー呼ぶよ?」


 「…ダメッ!今日はあや姉のとこ泊まるぞ!」


 「おうちの人…」


 ―――は、良いって言うだろうなぁ。

 何なら由宇兄ちゃんも来そうでやだな。



 「喜美子さんには言ってあるの?」


 「昨日もう泊まるって言ってあるから明日は昼前の出勤になって喜んでたぞ?あや姉にも宜しくって言ってた」



 この親子の世話って…

 喜美子さんにも休息が必要だろうし心の底から喜んでいる顔が目に浮かぶわぁ。



 「じゃあ制服の着替えなんかは持って来てるのね?」


 「もちろん!明日の教科書も持ってきてるから安心しろ!」


 

 仕方ないなぁ。

 お持ち帰りするか。


 一応佐久間さんにメール入れておけばいいかな。

 後で由宇兄ちゃんは桜に行くだろうし。



 「で、この赤ワインでまかない作んの?作らねーの?」


 「そですねー、多めに作って後でスタッフが食べられるようにしとこうかな」



 少しは持って帰って明日パンに挟んで食べよう。



 「若様、明日の朝は洋食でいい?簡単なものになるけど」


 「あや姉が作ってくれるなら何でも大丈夫!」


 「じゃあもう少し待っててね。ジョーさんサクッと作っちゃいましょうか」


 

 すぐ味が染みるよう玉ねぎとニンジンをジョーさんに千切りにしてもらっている間に「手伝う!」と言ってくれた若様に石づきを取ったしめじや舞茸といったきのこ類を少しずつフライパンに入れてもらってオリーブオイルでゆっくり炒める。

 

 そこにどんどん入れられる千切りの野菜たち。

 ヘラがどんどん重くなる。



 「若様、塩コショウも振ってくれると嬉しいなー」


 しょうがないな、といいつつ嬉しそうに何度も「これくらい?これくらい?」と確認してくるのが可愛い。

 しんなりした野菜を鍋に移した後は牛の薄切り肉も固まらないようしっかり広げてからフライパンに入れてもらう。

 


 「教育テレビのお子様料理コーナー見てる気分…」


 「だなー」



 あっ!稲葉くんお疲れ様です!!



 「今日も本当にお世話になりまして…」

 

 「いや、いつものことだし全然いいんだけど…なにこのアットホームな感じ」



 ズルいと言わんばかりの稲葉くんの視線が痛い痛い痛い。

 たぶんジョーさんがいると空気柔らかくなるんだよねぇ。

 ほんと家族想いの良いパパになりそう。


 それでいて色気もあるんだから働く店間違えてませんかそうですかって感じです。



 肉も鍋に入れて煮込み始めたところで後は任せろとジョーさんに更衣室へ行けと促される。

 若様と仲良く弱火でじっくりコトコト煮込んでくれるらしい。



 「じゃあ着替えてくるから3人とも仲良くね?」



 はーい、といった生返事を聞きながら事務所を後にした。


 あれ、そういえば稲葉くんとジョーさんって面識あったっけ?

 若様とジョーさんは今が初対面だったけど違和感なく親子っぽいし…大丈夫かな?



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