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 パシャパシャと色んな角度で撮影をし、画像を加工する。



 『巨匠、最後の作品です』


 そんなタイトルの画像添付メールを打っていたら岬さんがやってきた。

 ミモザに居なかったから探してくれたらしい。



 「珍しいとこに居るね、あや」


 「岬さん」



 「チャーリーからあやが呼んでるって聞いたから来たんだけど…」


 岬さんが心配そうに腕時計をチラっと見る。


 「そろそろ着替えておいたら?それから話をしようか、お姫様?」


 

 顎クイされても嫌な気分どころかきゅんきゅんさせてくれるイケメンオーラ全開の王子様の岬さん。


 同じ年くらいの美少年に見えるけど、確か24歳だ。


 エスコートする時に腰に手を回されても卑猥さはないし、爽やか。

 女の子が一度はキャーキャー言ってみたいタイプじゃないだろうか。


 私が目指す黒服像は岬さんと言ってもいい。

 岬さんをお手本にしているから、スーツを着た私はそれの簡易版といったところ。



 今は店に着てきた格好のまま開店準備をしてフリージアまで打ち合わせに行っていたので、まだ制服を隠すために大きめのパーカーを羽織っている状態だ。


 確かにスーツに着替えて通常営業にも耐えられる準備は必要な時間になってきている。



 「じゃあ着替えてくるから…岬さんももう少し雪柳で待っててくれます?」



 もちろんと笑みを深め、ソファに腰掛け、優雅に足を組む。



 「あやのこと考えながら待ってる」



 ほっ本物って凄い…

 見つめられて心臓バクバクなんですけど…!


 ありがとうございます!と返事をして逃げ出すように店を後にして階段を駆け上がる。



 私より少しだけ年上に見える岬さんも、この世界では珍しい女性の黒服さんだ。

 本格的にスーツを着てバイトをすると決めた時、その半年前に黒服になった岬さんをお手本にした。


 立ち居振る舞いはまだまだコピーできていないけれど、スーツでの身のこなしや、清潔感だけ残して女を残さないような化粧の仕方は完全に物真似だ。



 プラスチックとダイヤくらいの差がある。


 以前そんなことを言ったら「わたしだって本物じゃないよ」と優雅に笑われたけど、それでも王子様の弟分くらいには変身できるようになりたいと常々思っている。



 少しは近づけてるといいんだけど…と鏡の中に居るのはちょっと照れた14・5歳くらいの少年。


 男装すると幼くなるもんなのかな?なんて思いつつ着替えている間の惨状を、私は一生知ることはない。

 


 

***




 「で?そこの番犬とメガネと糸目、滅多に頼ってこない可愛い妹が何で呼んだか着替えてくるまでにさっさと説明しろよ」


 「態度違くないスか」



 うるせぇな番犬、と胸元から素早く投げられた万年筆がソファに刺さる。

 避けなければ稲葉の胸元に刺さっていたはずだ。


 「うちのソファ…」


 真木黙っとけ、と藤宮が庇いサッとかしずいて書類を手渡す。


 「綾瀬さんが手ずから作った草案の原本と、昨日のうちに僕が洗い出しした問題点などの一覧です」



 「最初っから出せよ馬鹿野郎」

 ついでにおまえの手柄なんて心底どうでもいいと罵る手を緩めない。




 三人は思った。


 綾瀬マネージャー!早く帰ってきてぇ!!と。



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